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玉座に座っちゃってる軍務卿。
そいつの部下っぽい奴らが雁首揃えていたらしい。
護衛の兵士っぽいのが数人いるけれど、まあここ迄にいた兵士と大差ない力量っぽいな。
相手にならない。
ってか、逃げ出しそうになってるな……。
「カティノ様!?」
「亡くなられたはずでは!?」
部下っぽい人たちにも、カティノ様が生きていた事を知らないメンバーも居るらしい。
幽霊でも見ているような顔になってるのがいるな。
この場にいるにも関わらず知らされていないってことは、彼奴等は、軍務卿から信用されていないメンバーってことかな?
「今更何をしに来た!自ら王族の責務を投げ出したお前が!」
「『お前』とは……随分な物言いですね?何様のつもりなのかしら?大体、私を幽閉したのは貴方達でしょうに」
謁見の間のボルテージが上がっていく。
このままだと、インド映画であればダンスが始まってしまう。
さっさと本題に入って終わらせてほしいな。
「しかも、迷い人……いや、地上から汚らわしい者たちを連れて来るとは、それでも王族か!?」
「彼らは、勝手にここまで来たのよ。貴方達が無能で、無謀なことをしたせいでね。今だって、そのツケを払うために、こんな所で話し合っていたんじゃないのかしら?それで解決する事態かはともかくとして」
軍務卿は、これ多分相当疲れてるな……。
寝不足と披露とストレスでかなりまいってたんじゃないかって感じだ。
アメリカにドラマを3連休でシーズン3まで見てきた休み明けの神也並の理不尽な波動を感じる。
正常な判断できているか?
大丈夫?首はねる?
「そうそう、何をしに来たか……だったわね?ただ姉上に命じられて、女王になりに来ただけよ」
「何を言っている!?」
「陛下は戦士した筈では!?」
「ハッタリだ!」
「姉上は、地上で生きているわ。捕虜としてだけれど、悪い扱いは受けていないようよ?でも、女王でいる事はできないと判断したらしくてね。代わりを頼まれたのよ」
口々に罵ったり、疑問を叫ぶおっさん?たち。
見た目皆トカゲ頭だからわからないんだよなぁ年齢……。
それにしても、悪い扱いじゃない……か……。
どうなんだろう?
国賓級の扱いされているはずだから、すごく良い扱いなんじゃないかな?
ウェディングドレス着せられることになるけれど。
(ボス、どうするにゃ?いい加減面倒になってきたにゃ)
(話し合ったってどうせどうにもならないだろうし、アタシは殲滅しちゃったほうが良いと思うわ)
(ふむふむ、肉体言語というやつですね?)
(狩って良い?シオリも狩って良い!?)
((いえいえ、まずは愛と平和を囁くことから始めないとダメでしょう?そのうえで相手が自らの行いを顧みないのであれば、その時初めて暴力に訴えるべきなのです))
(なんでも良いから早く地上に戻りたいんじゃが……)
果たして、あそこでぎゃーぎゃー喚いている恐竜人間たちは、ここで捕食者たちが物騒な事をコソコソ話し合っていることに気がついているのだろうか?
お前たち、今死ぬかどうかの瀬戸際なんだぞ?
カティノ様来襲のインパクトがでかすぎたせいで、なんで今しがたここで慌てて会議していたのかも忘れたのか?
わけわからん馬鹿みたいに強い奴らが正面から突っ込んできたからじゃないのか?
死んじゃうぞ?
「さぁ、玉座を譲ってもらうわよ。そもそも、貴方にそこに座る資格なんて無いのだし。今大人しく引き下がるのであれば、命だけは保証してあげるわ」
よーしいった!
いったぞ!
本題だ!
こんだけ脅しているんだし、できれば穏便に……。
「ほざけ!女王がいなくなり、王族も残るは、頭のおかしくなったお前と、その後ろの薄汚い忌子だけなのだ!ならば!現在最も戦力を有していて、地位も高いワシが王になるのが筋だろうが!」
はーい終わりました!
穏便で楽な結末なくなりました!
あとは、穏便じゃない楽な結末か、穏便じゃない上に楽でもない結末しかありません!
「はぁ……まあ、貴方ならそう言うかもしれないとは思っていたのよね。一応忠告しておくけれど、貴方達じゃ彼らには勝てないわよ?」
「はっ!ナメるな!その程度の人数でこの城全てを敵に回して勝てるわけがないだろうに!」
この城の正面から入ってここまで狩ってきました!
「そう……。仕方ないわね。じゃあ最果様、あとはよろしくお願いしますね?できれば、あの軍務卿だけは……」
「生かしておいたほうが良いですか?」
「いいえ、ユリアナを悪く言い続けてきた愚物なので、消し炭にしてくださいな」
あ……ハイ。
そして1分後。
「ば……馬鹿な……!?」
たった1人生き残っている軍務卿が、恐れおののいている。
弱かったなぁ……。
兵士じゃなくて、指揮官たちだったのかな?
だとしても、多少は戦うことも練習しておくべきだろうに。
頭脳労働と肉体労働を完全に分けていたんだろうか?
「さぁ、お別れの時間かしら?」
カティノ様が煽にかかる。
「……ははは……ああああはっっはっは!」
しかし、軍務卿が壊れたように笑い出した。
すごく悪役っぽい。
「こうなっては仕方ない!まだワシにも完全にはコントロールできんが、ここで終わるくらいならいっそ使ってやろうではないか!」
すごい!悪役さマシマシ!しかもすぐ死ぬやつ!
「往生際の悪い……」
「ぬかせぇ!出てこい!古代文明の遺産よ!」
そう軍務卿が叫び、なんでそんなところにあるのかわからない床のスイッチを押すと、床下から何かがせり上がってきた。
「……何かしら?」
カティノ様にはこれがなにかわからないらしい。
俺にもわからない。
ゴミ箱か何かみたいな、黒い円筒形の物。
大きさは、人よりは小さいかな程度。
「あ!」
だけど、若干一名これがなにかわかったものがいた。
シオリである。
右手には、おにぎり持っている。
「シオリ、何かわかったか?」
「うん!あれ、おそーじくん!」
「……おそーじ?」
「シオリの家にもいた!全部死んだけど!カーサンの家来!」
研究所由来のものか?
だとしたら、本当に古代文明の遺産ってことになるけど、おそーじくん……?
「あの世で後悔しろ!戦慄け!黒い悪魔よ!」
軍務卿が、おそーじくんに触れる。
すると、うぃーんという音とともに、目玉みたいな明かりが2つついた。
ロボットっぽいな……。
「……オハヨウゴザイマス。指示ヲ」
「ロボじゃん」
「うっわ、ボスが嬉しそうな顔してるニャ」
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