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「では、作戦を説明しますね」
「サーイエッサー!」
「ちぃ姉様が作戦を考えるのですか!?」
「俺達じゃ力押しになるからな。それでも俺達はまあいいけど、そっちとしては穏便に行きたいだろ?」
「そうですが……」
「良いのですユリアナ。女王となるのであれば、何かソレらしいエピソードくらい無ければ箔が付きませんし、これはちょうどいい機会と言えるでしょう」
「流石ちぃ姉様!」
「うっひゅうぃ!?」
ユリアナに称賛されるたびに心臓に異常を来すカティノ様を中心として作戦会議中だ。
「とりあえずまっすぐ突っ込むか」「ちょっとお待ちなさい!」と俺達の作戦を一瞬で止められてしまったので、彼女を総大将にして参謀に据えてしまった。
さぁて……その智謀存分に発揮してもらおうじゃないかぁ……。
「まず大前提として、可能な限り戦闘は控えていただきたいですね」
「おやおや、それは何故ですか?」
「力による王位の簒奪と見られたく無いからです。正当な流れで女王と成らなければ、痛くもない腹を擦られる事にもなりかねませんし。そもそも、姉上からの指示で女王になるのであれば、堂々としていれば良いだけのはずですので、下手に事を大きくすることもないでしょう。軍務卿がどう動くかにもよりますが……」
カティノ様が色々と俺達に指示を出す。
この国の仕組みとか全然わからないから、その辺りの知識をもった人間が考えてくれるのはありがたい。
ただ、そろそろそのハチマキ外したほうが良くない?
「しかし、懸念事項が無いわけでは無いのです……」
しばらく淀み無く喋っていたカティノ様が、不意に表情を曇らせる。
大丈夫?
妹触る?
「ユリアナ、最近何か変わったことはありませんでしたか?」
「腹を刺し貫かれ地上人に捕獲されました!」
「……ソレ以外で」
カティノ様、めっちゃプルプルしている。
さっきあげた予備のスマホでユリアナを動画撮影しながら。
たまにメンバー増えるからそいつ用の連絡手段を最近は常備するようになってしまったんだよなぁ……。
ここ、電波届かないから通信できないけど。
「そうですね……。そういえば、姉上がいきなり攻撃的と言いますか、精神が不安定になることがありました。戦争を仕掛けるって騒ぎになったのも丁度そういう時で……」
「成程、やはり貴方から見てもそう感じましたか。そうなると、やはり私の推測が正しいのかもしれません」
「推測?」
「はい。恐らくですが軍務卿は、我々の種族の精神に働きかける何らかの手段を持っているようなのです」
「な!?」
驚くユリアナを堪能しながら、カティノ様が何かが書かれた表を出してきた。
「これはなんですか?」
「良い質問ですね大試さん。これは、私がユリアナ愛を溢れさせた日付を日記を参考にまとめた物です」
「すげぇもん作ってんなアンタ……」
「いえ、これは本当に必要があって後から作ったものですのでそのように褒められることでは……」
良いから先に進めと目で促す。
通じない。
「極秘裏に隠居させられたとはいえ、私の手のものがいなくなったわけではありません。常に情報収集は行っておりました。其の者たちによると、私が情緒不安定にユリアナ愛を叫んでしまった日時と、兵たちの起こす暴力事件などのイザコザ。そして、姉上が出陣を決めるタイミングが重なっていたのです」
「すげぇ方面から推理始めたな……」
「私自身の感覚としましては、今まで秘していたはずのユリアナラブを、もうどうしようもなく解き放ちたい気持ちになったと言いますか……あれは、本能を無理やり開放されたように感じました。私の場合はソレで済みましたが、通常ですと攻撃的な面での性質を刺激される場合が多いのではないかと思います。ですから、兵士や姉上も逸ってしまった……というより、軍務卿に上手く煽られてしまったのではないかと」
カティノ様の話を聞いて、皆が驚いている。
この人ちゃんとまともな事も考えるんだ……?
「具体的に、原因って何かわかりますか?」
「それが全く……。ただ、推理することならできます」
「流石ちぃ姉様!」
「ぐっ!……最初は、毒を疑いました。なので、食料を私の手のものが用意したもののみにしてみたり、まったく接種しない日も用意して実験したのですが、それでもどうしようもなくユリアナへの愛を叫んでしまった日がありまして……。それが、ユリアナが出奔し、姉上が出陣したあの日です。そででもここで幽閉されている私にも効果が出たということは、恐らく『音』によるものではないかと」
「音?」
「はい、我々の種族は、とても耳が良いのです。形質の異なるユリアナには異常が認められなかったので、音である可能性が高いのではないかと。それを利用して、精神を高揚させたのかもしれません。もっとも、本当に推理の域を出ないのですが……」
「いや、今の時点では何か情報が有るだけで十分有益ですから。その謎の装置?か何かが使われる前に解決できればラッキーですけど、追い詰められたら使われるでしょうし、事前になにかあるとわかっている方が対処もしやすいですから」
まあ、間違ってても後は力押しになるだけだ。
「それでは、軍務卿に会いに行きましょう。この時間であれば、城にいるはずです。できるだけ騒ぎは起こさないようにお願いします」
「騒ぎになったらどうします?」
「全力戦闘になる可能性が高いかと」
よし!慎重に行こう!
俺達は、早速とばかりに離宮を出た。
見張りに立たせていた亀2人の下へ戻ると、山ができていた。
「「見てください。兵士がいっぱい来たので倒しておきましたよ。褒めてください」」
「全力戦闘開始!!」
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