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「……そう、私に王になれと言うのね?姉上もそれに賛成していると……」
「はい!」
「いいでしょう。正直、女王とか絶対嫌でしたが、姉上が降りるというのなら仕方がありません」
「本当ですか!?」
「もちろんです」
姉妹の感動的な再会……のはずだ。
少なくとも額から下に関しては。
たださぁ……。
「……ちぃ姉様、その……そのハチマキは……」
「ハチマキ?……………………………………………………あ!…………え、えーと、これは今街で大流行している最新ファッションアイテムよ?」
「そうなのですか!?」
「ええ、ユリアナは可愛いのだから、もうすこしオシャレに気を配りなさいな」
『ユリアナ推し』ハチマキが街で流行ってて堪るか。
ってか、恐らく本人的には、ユリアナマニア的な側面を隠していたつもりなのだろう。
それが、突然の訪問でバレそうになっているので、結構慌てているらしい。
だって、手に持ってるティーカップの中の紅茶が踊っているもん。
「姉様!お茶が!」「これが美味しい飲み方なのよ!」「そうなのですか!?」「あっこんな事を信じる妹推せる……」なんてやり取りもしているので、かなりギリギリらしい。
触れないでやろう。
「カティノ様、俺達は今のところ軍務卿とかいう奴を抑えて、カティノ様をトップに据えて、地上へ侵攻するようなことのない国家体制を作ること以外ノープランなんですけど、何かアイディアとかあります?」
「すごいわね貴方達、どれだけ行き当たりばったりに行動しているのよ?」
呆れられてしまった。
そんな事言われたって、情報も大してないし現状もわかんなかったし……。
前世の世界であれば、地上に存在する国であれば、人工衛星とかで調査もできたんだろうけれど、流石に地下じゃなぁ……。
「ところでちぃ姉様、姉上から聞いたのですが、私のマニアというのはどういう物なのでしょうか?」
「はうあ!?」
油断していたらユリアナがカティノ様に特大の爆弾を投げつけた。
ティーカップの中身が白波を立てる。
「どどどどどどどどうしてそんな事を聞くのかしら?」
「いえ、あまり聞き慣れない言葉でしたので。それに!尊敬するちぃ姉様のことですから是非知っておきたく!」
「うぐぅ!!!!」
どうしよう。
ちょっとカティノ様と友だちになりたくなってきた。
面白いなこの人。
「……いいですかユリアナ、よくお聞きなさい」
「はい!」
「貴方は、私達とは容姿が全く違います。それはわかりますね?」
「……はい、迷い人のような忌むべきものと言われてきました」
「言ってきた者の名前と所属を教えなさい処刑しますから」
「いえそこまでは!?」
カティノ様の表情に野生が宿った。
ラプトルっぽい。
「コホン……それで、貴方のその顔は、私たちの顔と比べると豊かな表情が浮かべられるのです」
「そうなのですか?」
「そうなのよ。そんな顔で、小さい貴方に『ちぃねえしゃま〜』と満面の笑顔で走り寄られたらどうなると思います?」
「どうなるのですか?」
「心臓が止まります」
「そうなのですか!?」
「ええ。私の人生で、初めて感情が振り切れた瞬間だったわアレは」
「大丈夫なのですか!?」
「大丈夫じゃなかったわね……」
どうしようもなく手遅れらしい。
家族仲が良くて何よりだ。
俺はそう思うけれど、隣の美少女が俺の耳に口を近づけてヒソヒソと話す。
(ちょっと、この人を女王にしても大丈夫なの?)
(大丈夫だ、問題ない)
(なんでそう言い切れるの?)
(だってユリアナが地上に攻めて行かないでくださいと頼めば、絶対そうしてくれそうだろ?)
(……え?それだけ?)
(もちろんだ。俺達からしたら、国家運営の手腕とかどうでもいいからな)
(無責任ねぇ……)
(無いもん責任)
(それもそうね)
我が方の首脳陣による高度な会議の結果、カティノ様を女王に推すことが決まった。
現女王もそれを認めているので、問題ないはず。
未だによくわからんが、あの人恐らく義姉になるんだよなぁ……。
まあいいかそれは。
「結局これからどうするにゃ?」
「ふむふむ……軍務卿始め元トップたちを全員暗殺でもしますか?」
「いや、普通に女王をカティノ様に譲るって今の女王が言ってる事を伝えればいいんじゃね?」
「……無理じゃろ……軍備拡張と領土拡張をしたい者が今現在国内最高の地位におるんじゃぞ……?手放さんじゃろう……どんな屁理屈を捏ねてもな……」
「じゃあ殺すかぁ……」
「それなら話は早いニャ」
「狩る?シオリもやる!」
部下たちとの作戦立案も完了した。
さて、いっちょやりますか!
まずは、まともな作戦を立てられるメンバーを探すことから始めたいな。
「……ねぇ、ユリアナ。地上って、蛮族しかいないの?」
「いえそういう事は……ないと思うのですが……」
「コイツを基準に考えたらダメよ。コイツが蛮族なだけだから」
俺は、ロイヤルな方々からの散々な評価を受けながら、今後について考えていた。
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