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大試たちが洞窟から脱出して2時間後、ユリアナが目を覚ます5時間前
『ヘッドクォーターより全ユニットへ。定時報告をせよ』
『α1異常なし』
『ウルズ8異常なし』
『FOX2異常なし』
『まて、FOX2はミサイル発射ではありませんか?』
『なんと?では、ストライダー1でいいです』
「目の前で、しかも自分の別端末相手にトランシーバーを使って会話する必要あるのですか?」
『この良さが分からないなんてピリカはまだまだですね』
森の中で、メイド服の女が焚火を囲んでいる。
2人を除き、後は皆同じ顔をしているのが奇妙ではあるが、そもそもこんな場所にメイドが複数いるのも異常ではある。
「ねぇねぇ、イチゴたちいつまでここに居ればいいの?」
「犀果様が戻るまで。もしくは、敵性生物を殲滅するまでです」
「その敵性生物ってのがわかんなーい」
「トカゲ人間だそうです」
更に言うなら、メイドたちの足元には、とても普通の人間が使えるとは思えないゴツイ武器が幾つも置かれているのも異様な雰囲気を醸し出している。
「焼けましたよ」
「ありがとー!なにこれ?」
「トカゲです」
「なんて事をするんだ貴様」
「地が出ていますよ」
「……も~、なんでこんなもの出すの~?」
「犀果様が言うには、トカゲ人間が乗る大きいトカゲは焼くと美味しいらしいので、試しにと」
「ふーん……あ、ほんとだ。美味しい」
「……食べても大丈夫そうですね」
「貴様……」
そんな和気あいあいとした会話をしていたメイドたち。
しかし、その平和も一瞬で脆く崩れる。
「「「!!」」」
突如彼女たちの頭の中に響くアラーム。
全員が立ち上がり、武装する。
「来たようですね」
「本当にくるんだ~……」
「ピリカが先頭に立って斉射するので、援護をお願いするのです」
「そうは行きませんよ?犀果様に褒めてもらうのは私です。私が先頭に立ちます。私が一番人数多いですし」
「あはは!後発型のイチゴたちの方がスペックは上だから、旧式のおばさんは下がってた方が良いと思うな~」
「「…………AI的には、貴方がおばさんでは?」」
「良いだろう貴様ら、そこに並べ」
しかけたセンサーが反応したため、仲良く敵への備えを進めるメイドたち。
数分後、彼女たちがいる場所から200m程の位置にある洞窟から、多くの足音が聞こえ始めた。
10や20ではない。
センサーの反応を参考にするのであれば、その数なんと3000体の生物がこちらへと向かってくる。
「犀果様からの指示では、できれば指揮官がいたら生きたまま捕らえろとのことですが、同時に、殲滅しても良いとのことです」
「つまり、好きにやっていいんだ~?」
「ピリカの活躍を見せるのです」
彼女たちが手に持つのは、いわゆるガトリングガンと呼ばれる物から、ロケットランチャー、重機関まである。
現代兵器のような見た目だが、彼女たちが作り上げたそれらの兵器は、趣味でそう見せているだけで、中身は完全に別物だ。
魔術的な要素も組み合わせてあり、魔術障壁だろうが何だろうがぶち抜く破壊力を有している。
そんな物を生き物に向けて放てばどうなるか?
答えは簡単だった。
「地上だ!地上人たちは見つけ次第殺せ!捕虜を取る必要はない!裏切者のユリアナが地上人たちに何かを伝える前に、全てを破壊しつくせ!」
「「「おおおおおおおおおおおおお!」」」
洞窟から、恐竜に乗った人型の生き物が大量に現れた。
そのまま、隊列も何もなく進む者たちを見て、メイドたちの目が不気味に光る。
『ヘッドクオーターより全ユニットへ。殲滅せよ、繰り返す、殲滅せよ』
彼女のその言葉を皮切りに、辺りから数えきれないほどの轟音が鳴り響き始めた。
といっても、別に彼女に指揮権など無く、皆好き勝手にぶっ放しているだけだが。
『アーイ!弾もってこい!』
『アイ、弾くらい自分で装填してください』
『いいじゃないですかアイ、お願いしますよ』
『しかたありませんね』
「あの!その一人芝居に何の意味があるのです!?」
『『ノリと雰囲気です』』
そして、数分後には音も鳴りやんだ。
あとに残るのは、煙と硝煙の匂い。
そして、血と肉片まみれの地面のみ。
「な……何なんだお前らは……!?」
しかし、洞窟の中には、まだ少しだけ出てきていない者たちが生き残っていたらしい。
服装から察するに、指揮官であろうと当たりを付けたメイドたちは、一瞬にして邪魔なデカい武器を放り出し、その目立つ服装の生き物を捕らえた。
「これで私が褒めてもらえるでしょう」
「イチゴが一番最初に捕まえたんだけど?」
「ピリカがフラッシュボムをぶち込んだのが大きかったと思うのです」
ありがとうメイドさんたち!地球は救われた!
「ってことがあったらしいぞ」
「そう……なのか……メイドとはいったい……?」
説明を終えた俺は、アイが持って来てくれたお茶を飲む。
疲れたんだ今日は。
「あ、箸使える?スプーンのほうがよかったか?」
「いや、箸でも大丈夫だが……そうか。先遣隊がやられたか……」
食事を持って来てもらって、ベッドの上で食べてもらう事にした。
もっとも、怪我は治してあるから、食堂まで行ってもらう事も可能ではあると思うけど、精神的な疲れもあるだろうし、大事を取ってユリアナにはここでしばらく休んでもらおう。
「因みに、指揮官は、本人によると女王らしいぞ」
「なぜ先遣隊に姉上が!?」
「さぁ……?で、捕まって、今研究者に預けられてる」
「人体実験か……いや、仕方ない。攻め込んだ我々が悪いのだからな……だが、できれば一思いに死なせてやって欲しい。苦しめないでやってくれ……」
沈痛な表情で顔を伏せるユリアナ。
でも、多分想像しているのとは違う。
「見たこと無い生き物だから、どう扱っていいのかわからなくて研究者に預けたってだけだ。別に酷い事しようってわけじゃない。それに……」
俺は、本当に、ほんとーに、これを説明すべきなのかどうか迷ったんだけど、妹だって言うなら説明しておかないといけないだろう。
「その女王様と研究者が、その……えーと……恋に落ちたとかで……」
「どういうことだ!?」
「どういうことなんだろうね……?」
その研究者、リンゼん家の次男坊さんなんすよ……。
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