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「ここ!ゴミ捨て場!」
「ダイナソー過ぎる……」
シオリが恐竜を食っていたらしいことが判明したので、残った物をどこに捨てているのか聞いてみた所、研究所の裏手に連れてこられた。
そこには、大量の恐竜の骨らしきものが積み上げられていた。
「これ、1人で全部倒したんだよな?」
「うん!」
ニッコニコで自分の狩り成果を報告するワイルドなエルフの娘(魔石装備)。
すごいなぁ……。
このゴミ捨て場だけで、古生物学者が1000人ほど心臓麻痺起こすくらいの大発見が幾つも眠ってそう。
……あれ?
そう言えば、この世界の恐竜ってどういう扱いなんだ?
古生物なんだろうか?
あの生肉状態のティラノは、多分さっきまで生きてたんだと思うんだけど……。
血が滴ってるし……。
「おやおや、恐竜だらけですねぇ」
「元ティラノっぽい見た目のドラゴン的には、この光景はどう感じるんだ?」
「はて?私も味見してみたい……でしょうか?」
「そっか」
まあわからんが、とりあえず写真に撮っておくか。
いや待て待て!
この恐竜の骨の山はどういう経緯でここに存在しているのか聞かれたらまずいか!?
「魔石をつけられたエルフの少女が食べてたやつっす!」
とか言うわけにも行かないし……。
「……んー?」
「おいしいか?」
「うん!」
ソフィアさんが出した小倉トーストのお代わりを食べているシオリを見る。
コイツの存在を正直に話したら、確実に研究対象だしなぁ……。
見た目俺より年下だけど、年齢的には、下手したらこの地球上の人類で最年長の可能性も……。
「ほんと、何時からこの施設はあるんだろうな」
「使用されている技術から考えるに、古代人の時代までさかのぼると思われますが、何故か情報端末が存在していませんでしたねぇ」
「そうなんだよなぁ……アイたちみたいなのがいてくれたら聞けたんだけど……」
AIがいてくれたら、そいつらに聞いて色々把握できたんだろうけど、その手の物が見つからなかったんだよな。
機械の操作は、かなりアナログな感じだった。
ドローンみたいなのも殆ど壊れていたとはいえ残ってたけど、それも会話が成立するような造りでも無かったし……。
見た目で言えば、ゴミ箱が動いてるような感じの……。
「ふむふむ……もしかすると、例のイチゴさんが大暴れした直後の時代に建てられたのかもしれませんね」
「どういうことだ?」
「AIの大暴走で、情報技術への信用が損なわれていたのかもと」
「あー……」
それはあるかもしれない。
そこまで怖がられるイチゴはやっぱ怖いな……。
しっかり見張っておかないと……。
「焼く!」
小倉トーストを食べ終わったシオリは、間髪入れずにティラノサウルスを食べることにしたようだ。
こんなもんどう食ってるんだろうと思って興味深く観察する。
「えいっ!」
可愛く発したえいっの一言で、ゴツイ肉塊がスパッと断たれた。
軽く腕を振っただけに見えたんだけど、これは魔術なんだろうか……?
「ふむふむ、魔力を凝縮させ放ったのですね?素晴らしい技術です」
「「まあ、私の甲羅は斬れないでしょうけどね!」」
亀的に対抗意識を燃やすくらいの物らしい。
「すごいなシオリ!」
「シオリすごい?」
「すごいすごい!」
「シオリすごい!」
ホントすごいわ。
……最初からこの娘を解放してたら、あの科学者たちも生き残れたのかも……。
「でも、シオリもこんな大きい奴倒せるようになったの最近!」
っという訳でも無いらしい。
「そうなのか?じゃあ最初何食べてたんだ?」
「ちっちゃいの!ワナ作ってとってた!」
「ワナ……」
産まれてすぐ罠を作って狩猟ができる知能があったのか。
流石というかなんというか……。
ちっちゃいのって、ネズミか何かか?
「……あ!ちっちゃいの来る!」
「え?どれどれ?」
「あっちからくる!」
そのちっちゃいのがこっちに来るらしい。
俺にはよくわからないけれど、彼女には確信を持って言える程しっかりと把握できているようだ。
指さされた方を見るも、ジャングルしか見えない……。
いや、足音が聞こえて来たか?
タタッタタッって感じの軽快な走りを感じさせる音だけど……結構大きい生き物っぽくない?
しかも、音が幾つも聞こえるから、10頭くらいいない?
ザザッ!
そんな音を立て、ジャングルから何かが飛び出してくる。
恐竜のラプトルみたいな感じの生き物と……えーと……背中に人間乗ってない?
ジャングルの奥地で、幻の民族を見た!!!
……いや、あれ人間なのか?
腕と足があって、体型は人型で指も5本あるように見えるけれど、顔は完全に恐竜だし……
その謎の生物たちは、こちらに気が付くと近づいてくる。
とりあえず剣もっとこっと。
「おい!何故地上人が悪魔とここにいる?!迷い人か!?」
先頭にいた奴が、流暢な日本語を話す。
よかった、言葉は通じるようだ。
迷い人は別として、悪魔って言葉が気になるけれど……。
「これ!下の奴おいしい!」
「ワナでこんなの捕ってたのか……」
「うん!」
シオリの言葉に、人トカゲの顔がゆがむ。
うん、やっぱり悪魔って言うのはシオリの事っぽいな。
「「確かにこの小さいのは美味しかったです」」
俺の後ろにも元悪魔らしき存在がいるけれど、見た目がだいぶ変わっている筈だから、亀の事を言っているわけではないだろう。
「あー……俺達怪しい者じゃ……」
「全員!こいつらを囲め!油断するな!一息に殺せ!」
人トカゲたちが問答無用で俺達を包囲する。
会話が通じると思ったのは間違いだったらしい……。
「めんどくせートカゲだにゃ……」
「誇り高き我らをトカゲだと!?貴様ァ!」
「落ち着け!油断するな!全員で息を合わせて攻撃するんだ!」
ファムの煽りに1人がキレかけるのをさっきのリーダーっぽい奴が止める。
一見理知的な事言っているようで、そもそも最初から喧嘩的なんだよなぁコイツ。
「おやおや……殺りますか?」
「「私もできますよ?」」
「コイツ、蒸すのがおいしい!」
「なんならもう全員で地上まで飛んでもいいニャ」
「帰りたいんじゃがぁ……」
ヤル気満々の仲間たち。
でもさ、いきなりの異文化交流だよ?
平和的に行こうぜ?
「ちょっと待ってな」
俺は、逸る味方を抑えて、少し回転しながらジャンプする。
そして、右手に持ったカラドボルグの刃を伸ばした。
「よいしょっと」
一回転してからカラドボルグを消して着地する。
直後、ラプトルっぽい騎乗動物と、それに乗ってた恐竜人間たちの首が全て落ちた。
「よし、平和になった」
「大試、すごい!」
シオリが目をキラキラさせながら褒めてくれる。
よせいやい……それ程でもないぞ……?
「あのさぁボス、文明社会って知ってるニャ?」
知ってる。
焼いて食べると旨い。
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