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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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320/614

320:

「タイシ〜」


 アレだけワイルドに威嚇していたオリジンちゃんだけど、餌付けしたらめっちゃ懐いた。

 傷を舐めて消毒してくれた後は、犬と機嫌の良い時の猫を足して2で割らないくらいのなつき方だ。


「おとうさん〜」

「それは違う」

「違う?おとうさんじゃない?」

「違うな。俺は大試、た、い、し」

「たいし?タイシ〜」


 というやりとりがあり、なんとか父親になるのは防げたみたいだけど。


「思ったより人懐っこいな」

「今までずっと一人だったんじゃろ……?そりゃ敵じゃない人に会ったら酷く嫌うかデロデロに懐くじゃろ……」

「「確かに」」


 長命種たちにしかわからない心の機微が有るらしい。


「でも、どうしよう?ここまで懐かれたのに置いていくのも……」

「連れていけばいいにゃ」

「うーん……でもここで生活できてるんだろ?」

「行く場所が他にないからここにいるだけにゃ。誘えば一発ニャ」


 そうなのかなぁ……?


「なぁ、一緒に行くか?」

「いっしょ?」

「そう、俺達と一緒に行くか?」

「いっしょ……行く!」


 即落ちだった。


「かあさんととうさんも一緒にいく!」

「母さんと父さん……」


 オリジンちゃんが指差す先。

 あの日記の内容から察するに、部屋の隅に座らされているのが男の研究者で、真ん中の方で倒れているのが女性研究者だろう。

 当時何が有ったのかよくわからないけれど、外に救援を求めることが出来ず餓死したらしい2人。

 流石にここにこのまま置いていくのも可哀想か……。


「ここに墓を作ってやるのもいいかと思ったけど、多分ここ結構ガッチリ調査入るよな?」

「ふむふむ、我々が報告すれば確かに入りますね。形の残っている人骨など、研究者にとっては垂涎の研究対象でしょう」

「この娘にそれを伝える程の冷血さは俺にはないなぁ……」


 よし、じゃあ遺骨を持っていって家の近くに墓を作るか。

 2人の名前もわからんが……。


「あ」

「どうしたにゃ?」

「ん〜?」


 俺が声を漏らすと、皆がこっちを見る。

 その中で、俺の腕にがっしり抱きついているオリジンちゃんの方を向く。


「キミって、名前なんて言うんだ?」

「なまえ?」

「俺の大試ってのみたいな名前。オリジンはコードネームだろうし、何か名前つけてもらってない?」

「なまえ……ない!」

「無いのか」


 オリジンって呼ぶのもなぁ……。

 もう少し女の子っぽい名前のほうが良いだろう。

 オリジン……オリ……ㇱ……。


「よし!じゃあシオリでどうだ?」

「シオリ?」

「そう、シオリ。気に入らなかったら他の考えるけど」

「シオリ……」


 オリジンちゃんが少し考える。

 けど、数秒ですごい笑顔になった。


「シオリ!」

「安直な名前だけど気に入ったみたいだニャ」

「名前をつけられるのは嬉しいですからねぇ」

「「わかります」」


 俺だってじっくり考えられるならそうするけどさ!

 もうここ1年でものすごい名付けを繰り返してるんだよ!

 ネタも尽きるわ!


「まあでも、気に入ってくれたならよかった」

「うん!」

「じゃあシオリ、お父さんとお母さんもつれて行くから手伝ってくれるか?」

「わかった!」


 シオリは、骸骨2人をすぐに運んでくる。

 すごい思い切りが良いな。


「でも、今更だけど、本当についてきて良いのか?この家……住処をほっておいてもさ」

「いい!かあさんも、もし誰かが助けにきてくれて、いい人っぽかったら、ついていきなさいって言ってた!」

「お母さんちょっと娘さん無警戒すぎじゃないですか?」


 知らない人にはついていかないって教えないとダメじゃない?


「ワタシ、多分最強だから悪い男にダマされても大丈夫だって!」

「あーそういう……」


 そうか、ヤベーやつだもんな。


 2人分の遺骨を予備の収納カバンに入れる。

 後は……。


「他になにか持って行くものあるか?」

「ない!」

「無いのか……」


 手荷物、骸骨のみ。

 服とか……あるわけないな。


「さてと、じゃあさっさと出ますか」

「どこいくの?」

「地上」

「ちじょー?」

「ここは、地面の下なんだよ」

「……へー」


 これ、わかってないな。


「良いのかにゃ?調査の途中だよにゃ?」

「いや、恐竜もいるみたいだし、謎の研究施設も見つけたし、もういいんじゃないか?何より、女の子保護するほうが重要事項だろ。恐竜は見たいけどな……」

「きょうりゅー?」

「でかいトカゲ」

「とかげ……ある!」


 そう言ってシオリが立ち上がり、外に走っていく。


「……あるってなに?」


 急いでついていく俺達。

 そして、出口から出ると……。


「これ、きょうりゅー!」


 ティラノサウルスが倒れていた。


「おいしい!」

「おいしい……」


 彼女がいつからここに1人でいたのかわからないけれど、何を食べていたのかはわかった。






感想、評価よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
恐竜喰われてた。オリジンの名前、リンかなと思ったらちょっと捻ってましたね。
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