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「うーん……」
洞窟の出口から、東南アジアとかアマゾンに広がるジャングルそのものな熱帯雨林を見て考える。
これ……どうやって維持されているんだろう?
そもそも、何でここは明るいんだ?
さっきの亀の背中に生えていた植物もそうだけど、光合成できる程度には光量が無ければ、こうまで自生していられるわけがない。
前世でだって、LEDですら、植物の光合成を行わせられる物が発売されたのって割と最近だった気がする。
それだって、太陽光と比べればとてもショボかったわけで。
それがどうだ?
この鬱蒼としたジャングルは?
水と光の暴力でにょきにょきと元気に萌える植物は?
「わっけわかんねーなー!」
「だから何でそんなに訳わからないのに楽しそうなのニャ……」
「訳わからないからに決まってるだろ」
「だろうにゃ……」
面倒くさくて帰りたくなっているネコミミが1名。
地下が嫌だからずっと帰りたがっているエルフが1名。
好奇心を刺激されて進む気しかない者が4名。
うん、俺たちの勝ち。
「おやおや、この空間は、大気自体が光を放っているようですねぇ」
「「それは普通ではないのですか?私はずっとこのような場所で生活していたので、外部の事はわからないのですが」」
「太陽という燃え盛り光を放つ物体が、この星からとても遠い所に存在しています。地上では、その光に照らされる事で植物は光合成を行い、そして海も大気も太陽光が当たることで温められ、生物は生存していけるのです」
「「ここでは、特にそのような熱源のようなものはみたことがありません。常に気温は一定で明るいのです」」
少し前に進化したソラウと、進化したばかりのタケコとクロコ。
彼女たちは、お互いの知識を貪るように吸収しあい、更にこの場所の情報すら丸裸にしようと、臭いを嗅いだり、手で触ったり、たまに味を確かめながらウキウキしている。
もしかして、こういう奴らじゃないと進化には適さないんだろうか?
ある程度知能ないといけないって言ってたけど、知能が上がると好奇心も上がるのかもしれない。
やれやれ……どいつもこいつも子供だなぁ……。
「よし、ジャングルに突入するぞ!」
「「「了解しました」」」
「うっわ……やる気ある奴多いニャ……」
「うぅ……もう帰りたいのう……」
実の所、『地下には巨大な空間があって、訳の分からない生き物がいっぱいいましたし、ジャングルもありました!』ってだけでも、今回の調査の仕事としては十分なんじゃないかって気もするけれど、それでは俺が満足できない。
見てぇよなぁ恐竜!
プレシオサウルスみたいなUMAが実際に外にいたんだから、さっきの謎のトカゲみたいな新種生物がまだまだいてもおかしくない!
それが恐竜の生き残りである確率は十分あるはずだ!
ジャングルって言うのは、恐竜に限らず、様々な生物が生息しやすい環境だ。
まあ、それだけに生存競争自体は激しいんだけれど、それ故に進化が誘発され、数多の生物種が産まれる事になったわけだけどさ。
なんたって、地上に存在する生物の種類の内、8割はジャングルにいるんじゃね?って言われているくらいだし。
もっとも、現代人の多くが恐竜の生息地=ジャングルっぽい場所って思っているのは、例のあの超有名な恐竜映画が、コスタリカって言うジャングル真っ只中みたいなとこで撮影されたってのも大きいんだろうけどさ。
地球の歴史だと、北極圏とか南極圏に森があった時代もあるし、デスバレーに氷河があった時代もあるから、ジャングルっぽい場所が地球上にあった可能性は高いんだろうし、そこが恐竜の生息地だった可能性はあるだろうけども。
日本だって意外と恐竜一杯生息してたらしいしな。
転生前の日本だと、もうどこだかの駅の前に居るくらいしか知らんが。
「うっわ……」
ジャングルに踏み込んで5秒。
早速考えなしに入ったことを後悔してしまった。
この地面……ぐちょぐちょだ……。
「長靴履いて来たらよかったな……」
「そう言う問題ニャ?これ、足踏み入れちゃダメな場所じゃないにゃ?湿地帯ってやつだよニャ」
「おやおや、これは私にとってとても生活しやすい環境ですねぇ」
「「私にとってもです」」
人とネコミミは、どうやら爬虫類と一緒に生活するのに適した存在ではないようだ。
しかし、だからこそ秘境感が増す!
ここで、クソでかいヒルとか、実はそこまで狂暴じゃないタランチュラを傭兵がナイフで刺して退治してくれたりすると更に雰囲気が出るんだが……。
「ファム、お前もか」
「ウッサイにゃ!もうこんな所歩いてられないニャ!大人しく運ぶニャ!」
俺にしがみつく奴が増えた。
これは、どう見ても冒険とかそういうもんじゃない。
美女2人を運ぶゲームとか、多分お正月のクソつまらないテレビでもないと見られなさそうだけど。
ってかさ、ファムも胸大きいしなんかいい匂いするからくっついてくるのやめてほしいんだよな。
俺の理性が崩壊したら胎を斬るから、介錯頼むぞ?
「おやおや?こちらにちゃんとした通路がありますよ?」
「「水生生物以外は、踏み固められた場所を移動しているのでしょうかね?」」
うん、やっぱり周辺を見回ってから踏み入るべきだったな。
不必要に靴の中をぐちょぐちょにしてしまった事を反省しつつ、そこから10m程横の硬い土の道が続く場所へ移動する。
土とは言いつつも、どうもかなりキッチリ作られた道に見えるのは気のせいだろうか?
獣道とかそう言うのではなく、人為的に作られたような……。
「もしかしたら、こういう風に道を作れる程度に知能が高い生物がいるのかもしれない。全員注意してくれ。特にこういう雰囲気の場所では、毒付きの矢が飛んでくるものと相場が決まっている」
「どこに存在する相場にゃ……」
「おやおや、どんな危険生物が矢を売ってくるのでしょうかねぇ」
「「そろそろ日光浴しませんか?お腹がすきました」」
否が応にも緊張感が高まる隊員たち。
警戒を怠ることなく進むこと20分ほど。
俺達は、完全に予想外の物を見つけて唖然としていた。
「……なあ、これ、何に見える?」
「建物ニャ」
「病院でしょうか?何かの研究所という気もします」
「「こういう大きな石を舐めると、しょっぱかったり甲羅が頑丈になったりするんですよ」」
俺達の目の前には、かなり劣化しつつも、5階建ての鉄筋コンクリート製と思われる建物が聳えていた。
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