表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

300/619

300:

(ぐおおお!?なんぞ可愛がられている感触がするが、目が開けられぬから見えん!)

「あだぁ……ウエエエエエン!」

「あ、やっと泣いた。赤ちゃんは泣くものだって言うのに全然泣かないから心配だった」

「よしよし、私が母さんでちゅよ-」

「俺が父さ……パパだ!」


 母さんが抱いている紅羽を優しい視線で聖羅が見守り、母さんがでちゅね言葉に目覚め、父さんが欧米的な呼称を叫ぶ。

 実に騒がしくも微笑ましい光景だ。

 可愛がられている本人が嫌がっているのを除けば。


(こ、小僧!魔力の波長から察するに、そちらに居るのだろう!?助けてくれ!)


 紅羽の小さな手がこちらに向けられる。

 なんだこれ……可愛いにも程があるぞ……。


「あら?紅羽はお兄ちゃんに抱っこして欲しいのかしら?」

「バカな!?なぜ俺ではないんだ!?」

「私だって小さい時は大試に抱きしめてもらってたし……」


 聖羅さん、赤ん坊に張り合わんでも……。

 ……ちゃんと責任が取れるようになったら、俺だって我慢しないし……。


 そんなことを思いながら、母さんから紅羽を渡され、大事に抱える。


「だぁ、だぁ」

(ふぅ、やっとちょっと落ち着いたわい)

「…………」

「ばぁぶ、ぶぶ?」

(それで、私はこれからどうすれば良いのだ?)

「…………」

「ぶぶーぶ、ばばぶ……。ばぁぶ」

(まさか赤子に生まれ変わることになるとは思わなんだ……。死んで魂が抜けた兵士の体にでも叩きこまれるものだとばかり……)

「…………」

「……だぁぶ?」

(おい?大試よ、なぜ黙る?)

「あああああああああああああ!」

「ばぁぶ!?」

(なんぞ!?)


 俺の心の中が、愛しさで満ちていく。

 いや、オーバーフローを起こしている!


「すまん紅羽!ほっぺすりすりが我慢できん!」

「だぁ!ぶうば!」

(な!?おいやめよ!)

「その気持ちわかるぞ大試!父さんにもさせてくれ!」

「うるさい!紅羽は俺のだ!」

「違うわ!母さんのよ!」

「パパのだぞ!」

「今更欧米かぶれしてんじゃねぇよオッサン!」

「父親に対してオッサンとはなんだオッサンとは!パパと呼べ!」


 30分後。


「……くだらねー親子喧嘩してしまった……」

「子供産んですぐこれは疲れたわ……」

「何故誰もパパと呼んでくれないんだ……」

「だぁぶ……?」

(こいつら大丈夫なのか……?)


 どうかな……?

 個人的な感想としては、あんまり大丈夫じゃないと思う……。

 可愛いって……怖いな……。


「なんだろう?この子見ていると、なんだか他人に思えないんだよね……」


 そんな中、暫く沈黙していた理衣がそんな事を言い出した。

 そりゃそうだろうな。

 だって、憑依させて神様と戦った仲だもんな。

 教えたらビックリするだろうか?


「理衣ちゃん、貴方はもう義理とは言え私の娘よ?だから、もちろん他人じゃないわ」

「あ、えっと、そう言う意味じゃなかったんですけど……でも嬉しいです……えへへ~」

「大試!早くこの娘たち連れて帰って来なさい!絶対逃がしちゃ駄目よ!」

「……はいはい」


 娘を産んですぐなので、母性が暴走しているらしい母を見て、逆に冷静になった俺。

 頭が落ち着いてくると、今度は、てふ子様について色々考えなければならない気がしてきた。

 タケミーとの戦いで、健闘の褒美として転生の権利が授与されてたけれど、まさか俺の妹になるとはなぁ……。


(世の中何が起こるかわかりませんね)

(さっきまであの世にいた気がするがな……まあ、魂が体に定着したのが何時かは知らんが……)


 紅羽の顔が、赤ん坊ながら渋そうな表情になる。

 何も知らない人たちからは、愚図りだす直前か、もしくはおしめの中に何かが生み出されたのではないかと思ってしまいそうな雰囲気だ。

 まあ、本人的には泣きたいくらいの状況かもしれないけれど。


「データ収集完了。これが、人の赤ちゃんが持つ魅了の効果であると推測します」

「赤ちゃんが可愛いのは、人間を始めとした高等動物がそう感じるように進化されただけであって、赤ん坊だからと特別可愛いというわけではないはず。にも拘わらず可愛いのは不可解」

「マスター、私も産みたいなー?」

「「「身の程を弁えろ!私のマスターだぞ!!!」」」


 AI同士の喧嘩をスルーする。

 お前たちも弁えろ。

 俺の紅羽だぞ?





感想、評価よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
300話到達おめでとうございます! 妹がこんなオチだし、将来大試に子供が出来たらなんか有りそうwwww
中身が武田てふこでもいいのか 妹は可愛い、反抗期を迎える前まではな
『憑依させて神様と戦った仲』である理衣もだけど、「実家に像が作られると言う家門始祖なご先祖様が小姑(旦那の歳離れた妹)」になってしまう会長のほうが心配だよ……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ