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「おい、みろよアレ!」

「ああ!すげぇ!」

「なんてフードファイトしやがる!」

「それだけじゃねぇぞ!」

「なんつう美人なんだ……」

「美人フードファイター……奴は、これから出てくるぞ」

「私……負けない!例えビジュアルで負けても、食べる量では勝つ!」

「そうは言うが、あの娘今でもすごい食べてるのに、全然苦しそうじゃないんだよな……」

「まだ余力を残しているというのか……!」


 強化された身体能力により、周りの会話が聞こえてくる。

 意識しないと聞き分けなんて出来ないんだけど、俺は別に無理に大量に食べる気もないので、気楽な状態だからこそ聞く余裕があるわけだ。


 それにしても、フードファイターってなんだ?

 この人たち、食べることで戦ってるのか?

 一昔前に流行った大食い選手権的な?

 なんでそんな人達がこんなに集まって……。


 いやそうか!イタリアンの食べ放題なんて早々ない!少なくとも俺は知らない!

 だからこそ、ここに集まっているのかも知れない!

 そんな彼らの前に、通常の人間よりも燃費が極端に悪く、且つ絶世の美女クラスのエルフを見せればどうなるか!

 答えは、こうだ!


「き……キミ!よかったらウチのチームに入らないか!?」

「え?ごめんなさい嫌です。邪魔なのでどっか行ってください」

「それなら我が社に来てくれ!絶対に大食いタレントとして……いや!貴方が望むならグラビアアイドルでもイケると思う!絶対に売れるよ!」

「いえ、結構ですので。どっか行ってください」

「じゃあお姉さんと一緒ならどう!?ギャラは山分け……いえ!2対8でいいわ!貴方が8ね!」

「えっ……うーん……でもお姉さんは私のタイプじゃないのでごめんなさい」

「傷つくわ……」


 スカウト合戦が加熱する。

 その中でも的確にオーダーを飛ばして途切れること無く食事を楽しんでいる辺り、アレクシアは中々器用な所があるなぁ……。

 普段は、アレなのに……。


(大試!大試よ!もう一度ティラミスを注文しておくれ!)

(皿もう一つ空いたので2つ頼めますけどどうします?)

(ならアフォガードを頼む!)


 もう一人の絶世の美女エルフも、楽しんでくれているようで何よりだ。

 食べ放題系で元を取るって発想自体間違いで、楽しんで食べることを重視するべきだということはわかっているけれど、この2人なら2人分の料金でも元が取れそうな気がする。


 ところで、さっき感じた視線は、アレクシアに集まったものだったんだろうか?

 どっちかっていうと、俺の方に注がれていたような気がするんだけどなぁ。

 アレクシアと一緒にいて俺に注目する理由がわからん。

 華やかさでもなんでも、ビジュアル面で俺が勝っている部分が思い浮かばないし……。

 貴族たちの間では、俺は割とヘイト集める程度に有名らしいけれど、この店に貴族が来る事はそうそう無い気がするし……。


「大試さん!このカップル限定のハート型生ハムメロンというの頼んでみませんか!?」

「いいけど、なんでそんなもんあるんだ?世の中の女性たちは、何故ハートの形が好きなんだろう……」

「心臓は美味しいですからね!」

「それ、ハートが好きな女の子らしい発想とはちょっと違うような……」


 まあ、フードファイターに相応しい発想ではあるけども。

 それからももりもり食べ続け、きっちり120分堪能した俺達は、羨望の眼差しをアレクシアに集めながら退店したのだった。


「いやー!美味しかったです!ありがとうございます大試さん!」

(やはりヒューマンの食べ物はいいのう!エルフの集落も食にはこだわっておったが、どうしても狭いコミュニティで培われた物じゃからバラエティが足りんかった!)

「そうですねぇ……これからはメニューを増やしていきたいところです!」


 エルフ2人が、これが何のためのデートかも忘れて語り合っている。

 傍から見たら、見えない何かに一方的に語りかける不思議な美女なんだけど、アレクシアはその自覚あるんだろうか?

 多分、今の状態で俺に注目する奴はまずいないだろう。


 だというのに……。


「うーん……」

「どうかしました?」

「いや、やっぱり誰かに見られてる気がするんだよなぁ……」

「自意識過剰なのでは?」

「……いや、うん。その可能性も否定できないけれどさ……。アレクシアと2人でデートしてて、俺の方を見るって何者なんだろうなぁ……」

「デート……そうでした、これ、デートでした……初めて男の子とデート……」


 やはり忘れていたか貴様!

 いいけどさ……。


「視線のことは置いておくとして、シスコンは卒業できそうか?」

「今のところはまったく……」


 だろうなぁ……。

 俺も、食べ放題で暴食して解決するとは思っていなかったさ。

 どうしたもんかなぁ……。


「手でも繋いでみるか?」

「手?手……手を!?」

「恋人たちといえばそういうもんじゃないか?」


 傍から見てるとイラッとするけれどもな!


「手をつなぐなんて!そんなエッチな!」

「エッチ……?」

「そうですよ!それに……私の手は……」


 この反応……もしかしたら、アレクシアは手が弱いのか?

 ならば、そこを攻めてみるか!


 俺は、強引にアレクシアと手を繋いでみた。


「ひゃあああああ!?」

「うるさい、目立つぞ」

「でっでも!でもぉ!」

「やっておいてなんだけど、そこまで狼狽えるとは思わなかった」

「エッチです!卑猥です!」


 今までになく恥ずかしがっている様子のアレクシア。

 それほどか?

 手を握っただけだぞ?

 エルフの文化だと、手を握り合うのはかなりアウトな行為だったりするの?


 なんて考えていたけれど、どうもちょっと違うらしい。


「……あの、私の手、変なところは無いでしょうか?硬いところとか……。ナイフの練習だけは結構してきたので、変な所にタコとかできちゃってて……」


 そういうと、顔を赤くさせながら俯いてしまうアレクシア。

 ……なんか、今までで一番女の子してるな……。


「別に気にならないぞ。むしろ俺のほうがゴツゴツだろ?アレクシアの手は綺麗だと思うけどな」

「そ……そうでしょうか?」

「逆に、俺の手のほうが握ってて嫌だったりしないか?」

「感触としては、確かにちょっと硬くてゴツゴツしてますけれど、なんといいますか、頼もしい感じがするというか……。これが男の子の手なんですね」

「俺も剣を振ってきたからな。ただ、流石に往来で女の子と手をつなぐのは恥ずかしいな……」

「ならやめましょうよ!」

「さっきまでと同じ事繰り返してても何の変化もないだろ!我慢しろ!妹に嫌われたいのか!?」

「それだけはいやですぅ!」


 その気持だけは本物のようで、握る手の力が少し強くなった。


「ですが、これでシスコンは治るんでしょうか……?」

「さぁな」

「気休めでもいいので肯定してほしいです!」

「治るぞ」

「もう遅いですよー!」


 うるさいな!こっちだってわかんねーよ!エルフの性癖の変え方なんて!

 そう反論しようとしたとき、背後から鋭い殺気を感じた。

 抗うこと無く木刀を具現化し、後ろへと振る。


 キィン!


 そんな甲高い音とともに、飛んできたナイフが弾かれた。

 これは、完全に殺しに来てるな……。


「なんと!まさか今のを防ぐとは思いませんでしたよ!」


 ナイフが飛んできた方向から、拍手をしながら歩いてくる男。

 格好からするに、聖騎士っぽいけれど、外国人っぽい顔をしている気がする。

 つっても、このゲームの中だと、日本人と外国人の容姿での差がわかりにくいんだけどさ。


「不意打ちが失敗に終わった以上、正面から戦わせていただきましょう」


 男が剣を抜いた。





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「心臓は美味しいですからね」のパワーワード 野生動物にとっては獲物の心臓が一番美味いのだろう 人族にとっては、ハツとか人気部位ではないと思うが
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