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「ドラゴンって、俺の抱いていたイメージとだいぶ違うんですね……」

「どのようなイメージをお持ちだったのか存じませんが、女ばかりの集団であり、何かしらで秀でた者を好む種族となれば、どうしてもそうなってしまいます」

「あの、お母様?余の持っていたドラゴンのイメージともだいぶ違うのですが?」

「それは……流石に子どもたちにそんな面を見せるのは恥ずかしいので……ですが、18歳になったらそういう情報が開示されるのですよ?といっても、実際に他種族の雄がこのドラゴンの住処まで来ることは、数百年に1度あるか無いかという頻度なので、今のドラゴンたちの殆どは、話でしか男というものを知りませんけれど」

「カメリアさんみたいに、飛んでいけば良いんじゃないんですか?」

「ドラゴンといっても、皆が飛べるわけではありませんし、飛べたとしても、私程長距離を飛べる者はそうそう居ないのです。私ですら、この場所に飽きすぎて、世界中の空を飛び回っていたら、たまたま人間の街を見つけたから降り立ってみたという程度の認識しかありませんでしたから。大半のドラゴンは、泳ぎが得意なため、大昔、まだこのあたりに大きな川が流れていた頃は、海まで下り、そのまま人の住む地まで遊びに行っていた者も多かったようですが……」


 そういや、今のこの水流エレベーターもそうだけど、この死んだ世界樹からこれだけ水が流れ出ているのに、なんで川がないんだ?

 とめどなく流れてるからこそ、こんなふうに高速で上昇できているんだろうし……。


「川が無くなったのって何故なんですか?」

「恐らく、砂が増えたために土地の保水力が無くなったからでしょう。もしかしたら、地下の深い場所に水脈となって名残が残っているのやも知れませんが、流石に我々でも、砂の中を流れる水を進むのは難しいので……」


 唯の川か、ただの砂なら行けたのかも知れないけれど、両方の合わさったら厄介な状況になったわけか。

 そして、比較的近くにいる魔族たちに対しては、あまり良い印象を持っていなかったから、没交渉になっていたと。


 あれ?もしかしたら、ドラゴンたちってこの魔族の領域より、開拓村周辺のほうが住みやすいんじゃないか?

 流石に好き勝手されるのは困るけれど、水も自然も豊富で、肉を食べられる魔獣も多いから、希望者募って移住でも勧めてみるか?

 他の魔族たちと違って、既に俺達が人間だってことは、長と長代理にバレてるわけだし……。


「カメリアさん、ルージュ。もしなんだけど、俺や聖羅の出身地である魔の森の中の開拓村に移住希望者を募ったら、来てくれそうなドラゴンいる?」

「います」

「いるぞ」


 とりあえず、眼の前の2人が手を上げた。

 キミら、長とその代理だよね?


「長が居なくなって大丈夫なのか?」

「大丈夫ではないでしょうね」

「そうです、お母様はここで大人しくしていると良いでしょう。余が大試たちと生活してみて、感想をお伝えしますので」


 ドヤァとカメリアさんに胸を張るルージュ。

 憧れの母親にマウントをとれるチャンスだと思っているらしい。

 だけれど、カメリアさんは涼しい顔で返した。


「何を言っているのですか?ドラゴン族全員で移住すればよいのです」


 えっと?何を言っているのですか?

 流石に全員で来るなんて想定していないんですけれど……?

 そもそも、空飛べないって話でしたよね……?

 川もないし……。


「どうやってですか?」

「この世界樹は、世界樹を模して大昔の文明の者たちに作られた物です。なので、今でもこの世界樹に残るその時代の遺物に、テレポートゲートというものが存在します。不完全な代物のため、片道でしか移動できませんし、一度起動すると、恐らくあまり長い時間は稼働しておく事もできずに壊れてしまいますが、それでも我らドラゴンが全員が通る程度の余裕はあるはずです。いつか、移住するのに良い場所が見つかったときのためにと、何代も前の世代のドラゴンたちから暇つぶしに研究してきた結果ですので、きっと成功するでしょう」


 となると、アイ達の下位互換……というより、大先輩の装置があるってことだろうか?

 でも、話を聞く限りだと、他のテレポートゲートへではなく、座標を指定して移動できるみたいだから、それはそれで便利だな。


「まあ、何にせよまだ何年か先の話にはなると思うんですけれど、ちょっと考えておいてください。まだまだウチの村は規模が大きくないので、ドラゴンの力が加わったらいい影響があるんじゃないかって目論見もありますし、ドラゴン的にも生活しやすいと思うんですよ」

「考えるまでもありません。その話を聞けば、ドラゴンはほぼ確実に全員が行きたがるでしょう。こうなったら、秘密を守れる信用のあるドラゴン数名で計画を話し合っておくべきですね……」

「無論、余もお手伝いしますよ!」

「いえ、ルージュは秘密を守るのがあまり得意ではないので、大人しく大試さんと遊んでいなさい」

「そんな!?」


 母親から戦力外通告を受けたルージュ。

 指導者をするには、純すぎる気がするんだよなあ……。


「大試、ドラゴンが開拓村に来るなら、お酒の製造施設がいっぱい必要になるかも」

「俺達の親世代だけで、1日何十リットル飲むんだよって聞きたくなる状態だったからな……」

「だから、ドラゴンたちに手伝ってもらって作ればいいと思う。私の力使わずにお酒作るなら、ドラゴンみたいに長命の種類のほうが良い気がするし」


 ドラゴンたちに酒を?

 なんて名前になるんだろう……。

 沙羅曼蛇亜とか?

 いやそれトカゲか。


「それは楽しそうです!是非やらせてください!」


 カメリアさんが、出会ってから一番のテンションになっている。

 やっぱ酒好きなんだ……。


「のう大試よ!エルフにもやらせてもらえんか!?長命といえばエルフじゃろ!」

「じゃあエルフの集落にも聖羅印の醸造所作りますか?」

「いいのうそれ!ドバドバエルフ向けの酒を作るんじゃ!」


 エルフ向けってどんなんだ?

 イメージだと、青々とした葉っぱの香りがするとか?


「魔族には難しいかもしれないにゃあ。でも、農業に対応できているから、実は案外適性あるにゃ?」

「えー?絶対ないとおもう!」

「まあそうかもにゃ」


 魔族は、立候補せず。


「強いお酒を作ってくださいよ〜。グラス1杯で胃がひっくり返るほど気持ち悪くなるようなお酒をたくさん〜」


 ワーウルフの少女は、嘔吐もイケる口らしい……。


「王国からも資金援助しますよ!あまり多くはありませんが!」


 有栖も乗り気だ。

 皆酒が好きなんだなぁ……。


 そんな話をしていると、だんだん上昇するスピードが遅くなってきた気がする。

 これは、そろそろ到着が近いか?

 なんて思っていると、とうとう一番上と思われる所に到着した。

 どういう仕組なのか、一番上まで昇ってきたら、水面が上昇する事もなくなった。

 これを電気なしに維持しているのはすごいと思う。


 だから、そんな素晴らしい技術を持つドラゴンの皆さんには。是非落ち着いて俺の話を聞いてほしい。

 決闘なんてしかけてこないでね?


「つきました。ここが、我らドラゴン族の住む地。その名も、エアーズロックです」


 エレベーターを登るために乗っていた船から降りて、自動ドアを抜けて外を見ると、そこには武家屋敷が広がっていた。

 あれ?ノットファンタジー?




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