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22:

「おう!よく来たな大試!」


 目の前で、筋骨隆々のでっけーオッサンがニカっと笑いながら座っている。

 一見プロレスラーか何かに見えるけれど、実はこの国の王様だ。

 隣に立ってる白い美少女の父親でもある。

 遺伝子ヨワヨワ……かと思いきや内面は割と似てる所もあるんだけど……。

 例えば、自分が国のトップであるにもかかわらず、一介の学生である俺なんかを玉座の間に呼び出す気安さとか。

 緊張で吐きそう……。


「お元気そうで何よりです、陛下……」

「む?顔色が悪いな?具合でも悪いのか?」

「いえ、帰りのバスで車酔いして……」


 吐き気の原因は、緊張じゃなかったかもしれない。


 突然の野外演習から帰ってきた俺は、戦闘用の装備から着替える事すらできずに連行され、そのまま国王陛下との謁見に臨んでいる。

 つまり、この国に来た初日と同じ毛皮の蛮族スタイルでだ。

 いいのかこれで?ある意味ファンタジーっぽくはあるけど、ビジュアル的にはかなり野蛮な方の内容だぞ?


 まあいいか。

 どう見ても陛下の方がパワータイプだし……。


「それで、何かお話があると伺ったのですが……」

「そうだ!実は、聖女の事でお前に頼みがあってな!」


 王様が直々に呼び出してきてて、尚且つ聖女の話題って、それってつまり面倒な案件って事ですよね?

 なんて面倒そうな事態に巻き込んでくれてんだこの美少女め……と隣にいる有栖をチラ見してみると、申し訳なさそうな顔をしてい……いやこれまだ車酔いが残ってるだけだな。

 バスとUNOの組み合わせって最強なのでは?


「聖女の護衛に任命された桜井風雅は知っているな?」

「はい、それはもう。幼馴染なので」

「奴が先日のパーティーで拘束された翌日に、教会の隔離施設から失踪したと知らせが入った!」


 教会の隔離施設って言葉が既に結構俺の中でアレなんだけど……。

 そこから脱走かー。

 脱走して何するんだ?

 実家でも帰るのか?

 主人公なんだし、どうせならゲームの内容通り魔王倒しに行ってくれないかなぁ……。


「一応言っておきますけど、風雅を匿ったりとかはしてませんよ?」

「分かっている!あの学園内は、お前が思っているより目が多いぞ!」

「それはそれで怖いですね……」


 流石に自室とかトイレの中くらいは、プライバシー尊重してくれてるよな?

 週に何回くらいお腹壊してるとかまで把握されてるとは思いたくないけど……。

 監視してても流石にそれはデータ取らんか?

 でも、お姫様の友人関係は厳しく調査されてそうだしなぁ……。


「お前に頼みたいのは、聖女の護衛だ!」

「ごえい?」

「本人の希望でもあるらしいがな!桜井風雅が居なくなった以上代わりを用意しなければならないが、教会側に丁度いい人材がいないらしい!」

「私も別に丁度いいわけじゃない気がするんですが……。ギフトも何とか王とか何とか神じゃないですし……」

「同郷の幼馴染!聖女の希望!そこそこ強い!俺の親友の息子!十分だ!教会側も、お前ならと渋々だが合意した!」


 十分か?本当に十分か?十分じゃないと思うなぁ俺……。

 というか、魔王討伐の旅みたいなのに連れて行かれるポジションだろうし、できれば行きたくねぇ……。

 卒業したら実家に帰ってリアル箱庭ゲーしてぇ……。

 養蜂場とかキノコ農園つくりてぇんだ……。


 でもなぁ……、聖羅が危ない目に合うのもなぁ……。


「……わかりました。丁度いい代わりが見つかるまでは、私がやりますよ」

「お!よかったよかった!」

「でも、できるだけ早急に護衛として適任の強いギフト持ち探してくださいよ?俺のギフトって剣出すだけなんですから」

「わかっている……が、聖女が受け入れる者等いないかもしれんがな!」


 不安だ。

 非常に不安だ。

 聖羅が認める護衛なんて、後はもう実家の両親くらいじゃないか……?

 有栖とリンゼなら一緒にいても構わないと思ってそうだけど、国側があの2人を最前線に投入するという判断をするかはわからないし、何よりその2人が行くならやっぱり俺も心配になるだろうって言うのがなぁ……。

 ほんと、風雅が問題起こさず真面目にやっててくれればなぁ!

 どこ行ったアイツ!?


「でも、護衛って言っても普段は必要無いんですよね?」

「そうだな……。まあ、王都内であれば、様々な守りが彼女の周りに控えているから大丈夫だろう!ただ、公の行事に出席することになった場合は、どうしても護衛として一緒に出てもらう事になるだろうがな!」

「人前怖い……」


 風雅なら目立つの喜ぶんだろうけどなぁ……。

 繰り返す。

 ほんと、風雅が問題起こさず真面目にやっててくれればなぁ!

 どこ行ったアイツ!?


 ゲームのシナリオなんて知らんけど、本編に関わる位置に置かれそうな以上、やっぱりもっと強く成っておかないと行けない。

 それこそ、終盤の主人公と戦っても勝てるくらいの力は持っていないといけないだろう。

 魔王がどんな強さなのか知らないけど、相手に反撃のチャンス与えない位の圧倒的な強さが欲しい。

 その位万全の準備をしてからじゃないと怖くて挑戦できんわ。

 やっぱり、有栖にダンジョンの予約バンバンとってもらわないといけないかもな……。



「そういえば娘から聞いたが、大試も何か俺に用があるのではなかったか?」

「あーそうでした。実は、ガチャチケットって言うのを使ってもらいたくて……」

「がちゃ?」


 俺は、王様に俺のギフトについて軽く説明した。


「ふむ……つまり、このガチャチケットというのを破れば、新しい剣がランダムで貰えるというわけだな?」

「そういう事です。俺が自分で使うと毎回のように木刀が出てくるので、一国の王になる程の豪運の持ち主に代わりにやって頂ければと……」

「なるほどな。いいだろう!」


 そう言って、何の躊躇もなくガチャチケを破り捨てる王。

 すると、俺の目の前にガチャが出現し、もはやおなじみとなったカプセルが転がり出てきた。

 ただ、今回のカプセルは中がちょっとどす黒い……。

 これ、ここで開けたらまずくね……?


「ここで開けて何かあったら不味いですし、開封は他の場所でやりますね」

「そうか?俺が引いた剣がどんなものだったか見たかったが……」

「いやぁ、私もそのつもりだったんですけど、カプセルの中が真っ黒で怖いので……」

「うむ、確かに黒いな。では仕方ない!」


 その後、少し学園での有栖の事を聞かれてから、ずっと気持ち悪そうな顔をしながら横にいたその本人と一緒に車に乗って学園へ戻った。


「まだ気持ち悪いのか?」

「だいぶ良くなった気がしたんですけど、車の中の臭いを嗅ぐとまたぶり返して……」

「あーあるある!」


 とは言え、俺に出来る事は無いからなぁ。

 回復魔法なんて使えないし、使えたとしても聖羅ですら殆ど効果なかったって言ってたもんな。


 そういえば、俺も似たような効果ある剣持ってたけど、聖羅がいる上に俺自身が病気にならんから殆ど未使用だったな……。

 そう思って、疱瘡正宗を具現化してみた。

 説明書きだと、毒や感染症を治すって事だったけど、それとは関係なさそうな車酔いじゃ流石に無理かな?

 まあ、試すだけ試してみよう。

 どう使うんだろ?治すために病人を斬るんじゃ本末転倒だし、とりあえず有栖の頭に疱瘡正宗を触れさせてみた。


「……あら?吐き気が無くなりました……」

「え?まじでか?」

「まじでです」


 神剣はすごい。

 でも、神剣を車酔いに使うのはどうなんだろう?

 すごい罰当たりな事をしているのではないだろうか?

 邪魔だからって神剣の木刀を薪に使えないか試した俺が言えることじゃないけどな!

 これで、今度からバスもUNOも怖くない!



「本当に1人でカプセルの中身を確認するのですか?」

「うん。こんな黒いモヤモヤが中に充満してるカプセル開けるのに、一国の姫様を立ち会わせるわけにはいかないでしょ」

「そうですか……。わかりました!では、後でどんなものが入っていたか教えてくださいね!」

「了解、じゃあまた明日な」

「よしなにー!」


 俺は、反対によしなにの意味を教えてほしい。


 寮の自室へと入り、万が一毒ガスか何かが漏れ出た時のために窓を開けておく。

 とはいえ、今の所SSRの派手な剣たちも、鞘から抜かなければただのエフェクトがうっとおしいだけの剣だったから、そこまでリスクは無いと思うけども。


 俺は、早速カプセルを開封してみた。

 すると、中から黒いモヤモヤが漏れ出てくる。

 モヤが晴れると、そこには黒い剣があった。

 カプセルから取り出すと元の大きさに戻り、なんとなく悪役が使ってそうなダークで有機的なデザインの剣となった。

 説明書き説明書きっと。


 えーと?

 まおうけ……。



 スマホを取り出し、元女神にかける。

 早く出ろ!

 早く早く早く!


『もしもし!何よ?こんな時間に掛けてくるなん』

「ガチャ引いたんだけどさ!」

『うわっえ?なに?何かあったの?』

「ガチャから出てきたんだよ!」

『何が出てきたのよ?』

「魔王剣デモングレイル!」

『魔王の剣ってこと?』

「魔王が封印されてる剣!」


『は?』




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[気になる点] 正宗でいけるならエクスカリバーさんでもいけてるのでは………?
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