やっぱりここって……
見てくださりありがとうございます。
いろいろあって、俺は異世界にいた。
俺の名前は神崎アキラ。
典型的なオタク高校生だ。
どうやら、元いた世界の俺は死んだらしい。
死因はコスプレをして真夜中の街を徘徊してたら車にひかれて死亡。
自分でも情けなくなる死に方である。
神はそんな俺の死にざまを憐れんで、第二の人生を用意してくれたらしい。神に感謝。
あたりを見回すと、そこはいかにも魔物とかが出てきそうな薄暗い森の中だった。
「いきなりハードモードかよ……」
俺は肩を落とした。
そういえば、俺は死んだときの状態そのままでこの異世界に来たらしい。体は高校生だし、所持金も無し。服装もコスプレ姿のまま……
「服くらいちゃんとしたやつ支給してくれぇぇ」
少しだけ神を恨んだ。
少しの間辺りを彷徨っていると、赤い宝石を拾った。それとほぼ同時に、馬の鳴き声と、タイヤの音がした。
馬車だ! 助かったかもしれない!
この千載一遇のチャンスを逃すまいと、迫ってくる馬車を必死で止める。
「おーい! 止まってくれーーー!」
幸い、相手もすぐにこちらに気づいたようで、馬車を止めてくれた。
「こんなところで何してる! 魔物にでも喰われたいのか!」
急に怒鳴られ、動揺する俺。
「それにお前、その服装…… ここら辺の者じゃないな?」
馬車に乗っていたおじいさんは話を続ける。
「何か事情があるのか知らんが、『魔除け』があるからと言ってこの森に長居するのは危険じゃ。とりあえず後ろに乗れ。今日はわしの家に泊めてやる」
「あ、ありがとうございます」
俺は、すぐに荷台に飛び乗った。
移動している最中、俺とおじいさんはたくさんの話をした。彼が言うには、魔除けなしであの森から生きて出られたのは奇跡に近いことらしい。
「よし、着いたぞ」
「お、お邪魔します」
「そう固くなるな。腹減ってるだろう、パンならあるんじゃが、食うか?」
なんて優しいおじいさんだ。今この瞬間、彼が神よりも輝いて見える。
それにしても、異世界でも意外と食べるものは一緒なんだなぁ。意外とこの世界にも馴染めるのかもしれない。
そんな希望を膨らませつつ、俺とおじいさんは二人で食卓を囲った。
「ところでお前、どこから来たんじゃ?服も変わっているし、顔だちもここの者ではない……」
こんな時なんと言ったらいいのか…… 『別の世界から来ました』 と正直に言って信じてもらえるわけないよな……
俺が言葉を詰まらせているとおじいさんは
「言いたくないのならいい。隠したい事情もあるじゃろうからな」
「べ、別にそういうわけでは……」
「行く当てがないのなら、騎士団に保護してもらうといいじゃろう。ここから東に進めばロブランド城がある。『ジェルドに言われてきた』と言えば、門を開けてくれるじゃろう」
地図を見せながらおじいさんは言った。
へぇ、このおじいさん、ジェルドっていうのか…… 一つ気になるのは、『ロブランド城』という名前に強烈な既視感があったことだ。
「今、『ロブランド城』って言いましたか?」
「ああ。そう言った。」
「国王の名前は?」
「アーサー・バシュコドール3世じゃが、そんなことも知らんとは。本当に何も知らないんじゃな」
いや、俺はその名前を知っている。おそらく、この世界の誰よりも知っている。
「だったら、この大陸の名前はナヌドラース大陸ですか!」
「ああ、その通りじゃが、急にどうした? すごく興奮しているようじゃが……」
「すみません……」
「謝ることではないんじゃが……」
ようやく理解した。俺が転生したこの世界は俺が昔小説で書いた、『俺が作った』世界だったんだ!!




