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扶桑国戦記 (改訂版)  作者: 長幸 翠
第四章 反攻作戦
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反攻作戦31

 ――扶桑軍 突入隊 グリフォン1――


 雨が上がりどんよりとした曇り空のもと、直也の搭乗する≪アトラス≫と配下の≪タロス≫、≪バーロウ≫が楢柄市を走る。橋の襲撃は既に敵に伝わっているに違いなく、細い道路を建物沿いに移動している。その予測が正しいことを示すように、南や北から数機の偵察ドローンが飛んで来たが、速攻で地対空ミサイルや銃弾を撃ち込み排除した。


 途中で部隊を分ける。


 一隊目は陽動分隊で、市の東側から中心部へ向かい、敵をおびき寄せる為、主要な交差点で警備する敵部隊を攻撃させる。


 二隊目はドローン発射地点の制圧分隊で、市の南側へと見つからないよう細心の注意を払い進ませる。


 三隊目は、直也の≪アトラス≫と護衛の≪タロス≫一機、通信機とバッテリーを搭載した≪バーロウ≫二機の本隊で、陽動分隊と制圧分隊と間隔を保ちつつゆっくりと南下させる。


 陽動分隊が二つの敵小隊をあっという間に蹴散らすと、踵を返して建物の中に隠れていく。


 隊を分けてから十分程で、南に先行していた複数の≪コマドリ≫が自爆ドローンの発射地点を発見した。


 場所は楢柄市郊外のショッピングモール。広大な駐車場に数多くの大型トラックが並び、荷台から自爆ドローンを射出し続けている。


 対人用の小型自爆ドローン≪パジョーンカ≫は、整然と並んだ筒状の発射機から、まるで多連装ロケットのように次々と撃ち出されると、主翼と尾翼を展開して飛び去っていく。


 対車両用自爆ドローン≪アサー≫の射出はそれとは趣が異なり、金属製の檻のようなケースに収納されている。ケースにはカタパルトが取り付けられ、こちらも順々に空へと送り出されている。


 敵の接近を知った護衛部隊が、大慌てで北側に集まっている。ただ前線司令部より南側は本来安全地帯ということで数は少なく、二個小隊六十人程度しかいない。車両もほとんどが軽装甲車両で、脅威となるのは三十ミリ機関砲を搭載した二両の装甲兵員輸送車のみだ。


 ≪アトラス≫はそこから四キロほど離れた場所にある建物の中に身を隠す。≪アトラス≫が身を隠す場所からは、両方の部隊を無遅延でコントロール可能だ。


 直也は護衛の排除に三機の≪タロス≫を向かわせると、残りはドローン発射機となっている大型トラックの攻撃と、ドローンのコントロールルーム制圧のため、見つからないよう西側から回り込ませる。


 ショッピングモールの建物の近くには発電機やアンテナが建ち並び、何本もの太いケーブルが建物へと続いている。状況から、コントロールルームはその中に置かれていると判断する。


 配置につくと、二機の≪バーロウ≫が迫り来る護衛部隊に向けて迫撃砲を撃ち始める。こちらが既に到着しているとは思っていなかったらしく、全員が車両に乗っており無防備だった。


 砲弾が着弾し、アスファルト片と土を舞い上げる。慌てて車列が止まった所で、三機の≪タロス≫が攻撃を始めた。建物や植え込みの陰に隠れていた二機の≪タロス≫が、携帯式対戦車ミサイルを装甲兵員輸送車に撃ち込み、乗員もろとも鉄の棺桶と変える。残る一機の≪タロス≫が、他の車列に向けて十二・七ミリガトリングガンを撃ち込んでいく。五・五六ミリや七・六二ミリといった小口径弾程度の防弾性能しか持たない車両では十二・七ミリ弾を防ぐ事など出来ず、次々と蜂の巣になっていく。


 最初に狙われた車両は、前後左右全てのガラスの内側を真っ赤に染めた。またある車両では、運転手が銃撃を避けようと急発進したために、後ろ扉から降りようとしていた兵士達が一塊になって路上に投げ出される。身軽になった車両は勢い余って他の車両に衝突し動きを止める。そこに十二・七ミリガトリングガンを撃ち込まれる。


 半数以上の兵士は車両から降りる前に無力化され、車両から逃げ出せた兵士も、迫撃砲弾とガトリングガンによって、車両の陰に身を隠すしかない。その間に、対戦車ミサイルから五・五六ミリライフルに持ち替えた二機の≪タロス≫が車列へと迫り掃討していく。


 最初の迫撃砲弾が着弾してから五十秒後には、護衛部隊は文字通り全滅した。


 護衛部隊への攻撃と時をほぼ同じくして、駐車場でドローンを射出し続けている複数の大型トラックにも攻撃を始める。


 護衛部隊が出払ったため、人員はそれぞれの大型トラックの周囲にはドローンの射出作業を行っている二、三人しかいない。しかも広い範囲に散らばっており、ほぼ無防備だ。


 ≪タロス≫を見た兵士が、慌ててアサルトライフルを手にするも、構える間もなく足を撃たれて倒れる。トラックの陰に隠れてドローンの射出を続けていた兵士が、回り込んできた≪タロス≫に殴られて地面に転がる。ドローン発射機にグレネード弾を撃ち込まれたトラックが、爆発と共に炎に包まれる。


 まるで洪水が全てを押し流すかの如く、ドローン発射機を破壊または無力化していく。


 コントロールルームの制圧も他の攻撃と同時に始めていた。向かったのは、≪タロス≫通常型一機と軽装型三機だ。軽装型は人用の迷彩服を着用し、その上にプロテクター、ヘルメット、マスク、ゴーグルを装着している。パッと見は人間の兵士だ。


 手榴弾で建物のガラスを割り、破片が降り注ぐ中を通常型≪タロス≫を先頭に内部に侵入する。コントロールルームは突入場所から数メートル先の、フードコートのあった辺りに造られていた。元あった椅子やテーブルは片隅に乱雑に積み上げられ、代わりに並べられた長テーブルには、パソコンや無線機など様々な機材が並んでいる。作業していた二十人は、全員が動きを止めてこちらを見ていた。


 突然の侵入者に、完全武装した三人の兵士がライフルを構えようとするも、反応速度で≪タロス≫に敵うはずも無い。即座に撃たれて床に転がる。


 四機の≪タロス≫は、死体に目もくれずライフルを構えたまま前進し、突入から三秒後、コントロールルームに到達する。


 軽装型の一機、三十五番機が、ガスク語で声を上げる。


『直ちに武器を捨て、床に伏せろ!』


 あまりの早業に頭が追いつかず、ほとんどの兵士が言葉に従う中、二人が指示を無視して一台のパソコンに飛びつこうとする。


(システムをロックする気か……!)


 ≪タロス≫やドローンには、敵にコントロール機器を奪われ使用されないように、操作をロックする機能がある。直也は敵の自爆ドローンにも同様の機能があると考え、パソコンを操作しようとした兵士に向け発砲する。


 脚を撃ち抜かれた二人が倒れるが、このうち一人は這いつくばりながらもパソコンに取り付こうとする。見上げた根性ではあるが、思い通りにさせるつもりはない。続けて腕を撃つと、体を丸め呻き声を上げる。


『向こうに移動して座っていろ。

 ……手当は許可するが、不審な行動を取った場合は容赦しない』


 軽装型の三十五番機が軽くライフルを振り、少し離れた床を指し示す。敵わないとみた兵士達は恐る恐る体を起こして指示に従う。撃たれた二人も、他の兵士の手を借りて移動する。


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