3.初レベルアップ
『レベルが上がりました。』
『同族による戦いに勝利したことにより、称号、同族殺しを獲得しました。』
怪物を倒した直後、どこからともなく声が聞こえて来た。
驚き周りを見渡すが守衛室の中にも外にもどこにも人影は見当たらない。
再度声を聞こうと耳を傾けるが、聞こえてくることは無かった。
(レベル?称号?とかなんとか聞こえた気がしたが)
ふと襲われる直前に見ていたステータス画面を思い出す。
目の前に転がっている怪物が動かないことを確認し、手に持っていたバットはいつでも使えるように右手に持ちつつ、さっき襲われたときに落としてしまっていたスマホを拾いあげる。
(やっぱり、レベルが1増えてる。)
---------------------
種族:ゾンビ(元人間)
名前:神谷優斗
性別:男
年齢:0歳(人間年齢享年25歳)
レベル: 2
HP:59 /59
MP:12/12
攻撃:17
防御:23
魔攻:17
魔防:12
俊敏:6
運 :23
称号:同族殺し
ユニークスキル:蘇生術
スキル:痛覚無効、飢餓 LV.1
---------------------
スマホにはあいも変わらず種族ゾンビで名前が俺のステータスのようなものが映し出されていた。
レベル1のときの記憶は曖昧だが、ステータスは全体的に増えているような気がする。
それに、なんとも危なそうな称号なるものまで増えてしまっている。
(同族殺し、同族、同族かぁ。。)
目の前で転がっている怪物に目を向ける。
お前はこの怪物と同族なのだと嫌でも認識させられてしまう言葉である。
(次は、ユニークスキル蘇生術、あとスキルの欄には痛覚無効と飢餓。)
自身の体を再度見まわす。皮膚はボロボロ、ところどころ肉が噛み千切られて骨が見えているところもある。
なのに全く痛みを感じることが無い。きっとこれが痛覚無効の効果なのだろう。
それに確かに腹は減っている。今日突然の残業で夕ご飯を食べられていないためだと思いたい。
正直目の前に転がっている怪物の肉が少しだけ、ほんの少しだけ美味しそうに見え始めてしまっていることに絶望を覚えていたりもする。
(あと、誰もゾンビになってまで蘇生したいなんて思ってねぇよ。。。。)
蘇生術、これはきっと言葉の意味のままなのだろう。どうしたことか俺はゾンビになって蘇生してしまったらしい。
いやいやそんなわけない何言ってんの?と言いたい。ゾンビなんているものかと思いたい。
しかし、守衛さんが食われている光景、目の前の怪物の姿、そして何よりこんなに体を損傷しているのに痛み一つ感じない自分がこの事実を信じざる負えない状況にしてくる。
夢であること、壮絶なドッキリであること、何かの間違いであること、とりあえず何でも良いから心のどこかでこの状況を拒絶していた。
しかし、そろそろこれが現実であることを受け入れなければいけないらしい。
どうやら俺はゾンビに殺され、人間という種族としての人生を25歳で終え、現在ゾンビとして蘇生し再度人生ならぬゾン生?を歩もうとしているらしい。
「、、がぁ、、、、ダンだぞれ、、、」
俺は点を仰いだ。
「ジにだい、、、」
まだ真っ暗な空には大きな満月が浮かんでいた。