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99.天然のあざとさほどズルいもんはないね

「お、王子様なのかい!?」


「そうだ。

この国の第一王子にあたる」


「イノス・スノーフォレストだ。

よろしく」


 イノスと名乗った王子様は表情をほとんど変えずに首を横に傾けた。

 お辞儀のつもりかな?

 あんまり感情を出したりはしないタイプなのかね。


「シリウス、久しぶり。

あんまり変わってないみたいだね」


「……いや、去年会ってるからな。

そんな数年ぶりみたいに言うな」


「……そうだっけ?」


「……妹のクラリスと一緒にこの国の星雪祭(スタースノー)に参加しただろ」


「シリウスには妹がいたんだ」


「……はぁ」


 イノスはきょとんとした顔で首をかしげてる。

 これはあれだね。

 天然であざとい感じの子なんだね。

 うちの王子がまともに見えるんだから相当だよ。

 てか、あの大天使クラリスたんを忘れられるとは、罪深い子だね。


「で?

そんなシリウスは何しに来たの?

あ、もうすぐ星雪祭だからまた来てくれたの?」


「いや、短期留学だ。

王子のおまえなら知っているはずだろ」


「……かつて、はるか彼方にそんなことを聞いたような気がしないでもない」


「……はぁ」


 あの王子(バカ)がため息を。

 イノス、恐ろしい子……!


「……誰?」


 なんだか疲れちゃった王子(シリウス)を放って、イノスは今度はあたしたちの方にくりんと首を向けた。

 見れば見るほど吸い込まれそうなぐらいまっすぐで澄んだ青。

 雲ひとつない青空に飛び込んでいきそうな感じの瞳だね。


「あたしはミサ。

ミサ・フォン・クールベルト!

で、こっちがクレアで。

こっちがスケさん!」


「……クレア・ノーザンライトと申します。

殿下にお会いできて光栄です」


「……スケイル・フォン・アルバーノと申します。

シリウス王子の側仕えでございます。

王子にご用の際はワタクシにお申し付けくださいませ」


 あたしが意気揚々と2人も紹介してあげたのに、2人はため息をつきながら自分で自己紹介してた。

 解せぬ。

 ていうか、2人ってそんな名前なんだね。

 スケさんはスケ・サンとかなんだと思ってたよ。


「うむ。

イノス・スノーフォレストだ。

改めてよろしく」


 うーむ。

 こんな時にも表情を崩さないんだね。

 なんだか、どうにかして笑顔にしてみたくなっちゃうよね。

 くすぐったりしたら怒られるかな。

 怒られるだろうな。

 

「ミサ、と、メリダ、と、カクサン、だね」


 うん、あたししか合ってないね。


「……いや、違います」


「……なぜミサさんだけ」


「こいつは人の名前を覚えないことで有名だからな。

覚えてほしいなら根気よくやっていくしかないぞ」


 呆れ顔の2人に王子が説明してあげてる。

 なんであたしは一発で覚えてくれたのかね。

 まあ、覚えやすくはあるか。


「……人の名前って難しいな」


「わかる!

あたしもぜんぜん覚えらんないんだよ!」


「いや、わかるなよ」


 カタカナでごちゃごちゃ言われてもおばちゃん覚えらんないんだよね。

 フォンてなによ、ホント。


「ミサも一緒だ」


 あ。


「うん、一緒だねー!」


 なんか今、笑った?

 すぐ元に戻っちゃったけど、ちょっとだけ笑ったような気がする。


「それで?

これから父に会うの?」


 あ、もうすっかり通常モードだね。


「ああ。

俺様と、ミ、ミサのことを紹介にな。

クレアとスケイルは付き添い兼護衛だ」


 あたしのとこでどもるのキモいよ。


「……ミサはシリウスの何?」


 あ、また首こてん出た。

 なにそれ、かわい。


「……えっと、その、あの、だな」


 ……さっさと言いなよ。


「……はぁ。

ミサさんは王子の婚約者なんです。

それで、短期留学に際して王に紹介をと思いまして」


 結局、見かねたスケさんが代わりに説明してくれたよ。

 まったく。

 男ならハッキリすればいいのにね。


「……!」


 ん?

 なんかイノス驚いてる?

 表情があんま変わらないから分かりにくいけど。


「……そうか。

婚約者……」


 ん?

 どしたの?


「……分かった。

父の方とやり取りは済んでるんだろう?

それならこのまま城に案内しよう。

僕がいれば最短で進めるからね」


 イノスはちょっとだけ残念そうな顔をしたあと、さっきまでの通常のモードに切り替わって、あたしたちをお城に案内してくれたんだ。










「おー!

面白い形のお城だね!」


 スノーフォレストのお城はなんて言うか、全部(とんが)ってた。

 広さや大きさはアルベルト王国のお城と同じぐらいなんだけど、屋根が全部尖ってる。

 なんか、事件とかで人が刺さりそうな感じだね。


「スノーフォレストは1年中積雪がある。

だから尖塔にしないとこの規模の建造物は雪の重さに耐えられないんだ」


「ほえ~。

そーなんだね」


「……ミサ・フォン・クールベルト。

おまえ、ちゃんと分かってないのに返事してるだろ」


「ん?

とーぜん!

よく分かってるじゃん、バカ王子」


「バ、バカとはなんだバカとは!

貴様に言われたくはないわ!」


「……たしかに」


「スケさん!

たしかにって聞こえてるからね!」


「……いいからもう行こうよ。

寒いのは苦手なんだよ」


「……」


「ほら、ミサさん。

イノス殿下が呆れてますよ、まったく」


「いやいや、なんであたしのせい!?」


「……いいな、楽しそうで」


「……ん?」


 イノスは何かをポツリと呟くと先にお城に入ってっちゃったから、あたしたちは慌ててそのあとをついていったんだ。





「……じゃ、ここでちょっと待ってて。

用意ができたらメイドが迎えにくるから」


 イノスに案内されたもんのすんごい広い部屋であたしたちは身支度を整えた。

 気のせいかね?

 イノスが少しよそよそしくなってた気がするけど。


 あ、ちなみに、支度を手伝ってくれたメイドさんはなかなかなナイズバディーで、迎えに来てくれたメイドさんは小振りながらもキレイなバディーだったよ。

 ここの王様とは気が合いそうな気がするね。





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