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89/252

89.そして物語は佳境へ!って感じだね。あたしはまだ寝てるけどねぇ

「はぁっ!!」


「……!」


 クレアが一瞬の隙を突いてカークの剣を弾き飛ばす。

 飛ばされた剣は回転しながら弧を描き、やがて地面に突き刺さった。


 そして、クレアがカークの眼前に剣を突き付けるとカークは両手を挙げて降参の意を示した。

 どうやら武器を手離したら戦闘を終了するように暗示をかけられていたようだ。


 その様子を見たスケイルはジョンに向けて放っていた魔法を止め、カークと同じように両手を上に挙げた。


「……な、なんのつもりですか?」


 スケイルの連射魔法に苦戦していたジョンは息を乱しながらも、戦いをやめたスケイルを警戒して剣を構えたままでいた。


「降参です。

カークがやられたら、さすがにあなた方2人を1人で相手は出来ません。

それに、もう時間稼ぎは十分でしょう」


 スケイルが学院の屋上に目を向けると、屋上では大きな爆発がいくつも起こっていた。


「な、なんだあれ」


 クレアは両手を挙げたまま動かないカークを置いて、ジョンと合流しながら屋上に目を向けていた。


「ミカエル先生の魔法ですね。

相手はシリウス王子でしょう」


「……スケイルさん」


「なんでしょう?」


 ジョンに尋ねられ、スケイルは柔和な笑みを浮かべた。

 それはどんな質問をされるのかを知っているような表情だった。


「……いったい、何がどうなってるんですか。

突然、ミサが拐われて、その犯人がミカエル先生とサリエルさんで、スケイルさんもそれに協力してて、もう、よく分かんないんですけど」


「……私もです」


 ジョンの質問に、クレアもカークのことを心配そうに見つめながら同意した。


「……ふむ。

まあ、もういいでしょう。

すべてをお話しましょう。


と、その前に、カークを元に戻しますか。

彼にも聞かせておいた方がいいでしょうからね。

彼はどうせ反対するだろうからと、説明もなしにいきなり洗脳してしまったそうですから」


「え!?

カーク先輩にかかった洗脳を解けるんですか!?」


 カークのもとに歩いていくスケイルにクレアは詰め寄った。


「ええ。

問題ありません。

危ないですから少し下がっていてください」


 スケイルはクレアに手のひらを向けて近付くのを制した。

 そして、1人でカークの側まで行くと耳元に口を近付けて、小さな声でぼそっと呟いた。


クレアがナンパされてるぞ


「……な、」


「カーク先輩!!」


「なんだとぉぉ~!!」


「うわぁっ!」


 ミカエルの洗脳から解放されたカークは落ちていた剣を拾うと、なぜかジョンに対して剣を振りかぶった。


「ちょ、ちょっと!

カークさん!

俺ですよ!

ジョンです!

攻撃重い!」


「許さん許さん! ……って、ん?

あ、なんだ。

ジョンじゃないか」


 血眼になっていたカークはジョンに声をかけられてようやく正気に戻り、剣を納めた。


「……先輩になんて言ったんです?」


「……ご想像にお任せします」


 2人のやり取りを傍観していたクレアに、スケイルはくすくすと笑いながら答えたのだった。




「……さて、では詳細をお話しましょう」















「……と、言うわけです」


「……」


「……」


 サリエルからすべてを説明され、カイルとフィーナは揃って顎に手を当てて考えるポーズを見せた。

 この2人は反発しながらも意外と相性は悪くなさそうだ。

 サリエルはそんなことを1人で考えながら2人が考えをまとめるのを待っていた。


「……だから、ミサを帝国に引き渡すなどと言ったのか」


 ようやく自分の中で話を消化できたのか。

 まずカイルが声を発した。


「……正直まだ納得はしていないが、その場合、たぶん俺でもそうしただろうな」


「さすがは我が王子。

ご理解いただけたようで何よりです」


 カイルの答えに、サリエルはにっこりと笑ってみせた。


「……だが、俺を謀ったことを許したわけではない。

国に帰ったら覚悟しておけ」


「ふふ、こわいこわい」


 そんなことを言いながらも、サリエルはやはり嬉しそうに笑みを浮かべるのだった。


「……私は、」


 2人がそんなやり取りをするなか、フィーナがようやくといった形で口を開く。


「私はやはり許せない。

お嬢様を利用するようなやり方を承服するわけにはいかない」


「……あなたは、それでいいのかもしれませんね」


「えっ?」


 フィーナが出した答えにも、サリエルはやはり柔らかい笑顔で返した。


「いずれにせよ、我々のターンは終わりです。

あとは上の方々の結果に身を任せるとしましょう」


 サリエルはそう言って死闘を繰り広げているであろう屋上を見やるのだった。





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