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86.え?そんなの聞いてないんですけど!?

『ミサなのです!』


『ミサ!』


『ミサぁ~!』


「アルちゃんルーちゃんケルちゃん!」


 ああ!

 かわいい我が子たち!

 迎えに来てくれるなんて、なんて健気なんだい!


 ……まあ、今は3人とも魔獣の姿だから、ホントはおっきな蛇と蜘蛛と狼が校舎をよじ登ってきた、わりとホラーな映像なんだけどね。

 あたしは拘束されてるし。


 あ、そうそう。

 あたしいま拘束されてるのよ。

 屋上って、なんか貯水タンクみたいなのが置いてあるとこって一段高くなってるでしょ?

 あたしはそこに立てられた十字架みたいのにくくりつけられてるのよ。

 あ、貯水タンクはないんだけどね。

 あ、それと、ミカエル先生の魔法で浮いてるみたいだから縄で手足をぐるぐる巻きにされてるけど、別に痛くはないんだよね。


 で、なんか映画とかだと、こうやって縛られてると怪獣みたいのが出てきちゃうんだよね。

 まさに今がそんな感じ。

 

 そういや、こういうパニック系のホラー、わりと好きだったなー。

 竜巻にのって鮫が襲ってくるのとか。

 いやいや、ありえないよ~とかってツッコミながら観るのが良かったんだよね~。

 旦那には雰囲気壊すから黙っててくれって言われたけど。

 いや、無理よ。

 シュールすぎるんだもん。

 ヒロインの子とか、よくあれで迫真の演技できるなーって思うよ。



『ミサがどっかよく分からないとこ見てる!』


『私たちの声も聞こえてないんじゃない!?』


『おのれミカエルなのです』



 あ、ちなみに、あたしはナイスなサポートして怪我しちゃうけど、最後には主人公とヒロインと一緒に生き残るムキムキのスキンヘッドが好きだったね。

 良いヤツなのよ、あの手のタイプは。



『ミサ!

僕たちの声が聞こえないの!?』


『きっと洗脳されてるのよ!』


『クソミカエル』



「……ミサさん?

私は何もしてないですよ?

聞いてます?」


「え?

あ!なんだい!?

なんも聞いてなかったよ!」



『良かった!

いつものミサだ!』


『いつものちょっとどっかいっちゃってるやつだったのね!

良かった!』


『死ね、バカクソミカエル』



「……アルビナス、あなたキャラ忘れてませんか?」


 先生、それもそうだけど、あたしって皆にそんなふうに思われてんのかい?

 もしかして、あたしが軽くトリップしてる時は皆優しく見守ってくれてたのかい?

 だとしたらありがとうねぇ。

 年取ると物思いに耽ったり、昔のことを思い出すことが増えるんだよ。

 これからもよろしく頼むよ。



「ミサ・フォン・クールベルト!」


「あ、バカ王子」


 ケルちゃんたちとそんなやり取りをしていると、ケルちゃんの背中から王子(バカ)が颯爽と飛び降りてきた。


「あ、なに?

あんたも来たの?

わざわざごくろーさん」


「おい!

こいつらと扱いが違いすぎるぞ!」


 なんか文句言ってる。

 そりゃあねぇ、愛すべき我が子と王子(アホ)とじゃ、こっちの喜び具合も違うってもんよ。

 まあでも逆に言えば、あたしがここまでボロクソに言えるのも王子(コレ)だけだと思えば貴重な存在なのかもね。


「うそうそ、来てくれて嬉しいよ。

ありがとね」


 だから、これぐらいはちゃんと言ってあげようかね。


「うっ!

そ、そうだろう!

嬉しいだろう!

そうだろうそうだろう!

はっはっはっはっ!」


 ……なんか気持ち悪いぐらいに嬉しそうなんだけど。

 余計なこと言わない方が良かったかね。


 でも、確かにここまで素直に思ってることをぶつけられるのも王子(コレ)だけってのは確かだね。

 だからそう思うと……、


「……うん。

ホントに嬉しいよ。

ありがと」


「……う、うぅ」


 あれ?

 なんか黙っちゃったね。





「さて、話を進めましょうか」


 あたしたちがドタバタやってると、ミカエル先生が本題に入り始めた。


 脱線しちゃってごめんよ。

 学生時代はよく授業を脱線させて先生に叱れてたの思い出したよ。

 あ、今も学生だっけ?



「そ、そうだ!

おいミカエル!

なぜミサを連れ去るようなマネをした!

貴様のしたことは国家に対する重大な反逆行為だそ!」


 王子が先生を指差しながら怒鳴ってる。

 どうやらもう復活したみたいだね。


「……それなら問題ありませんよ。

これは王からも賛同を得ていますから」


「……なに?」


 あたしの横に立ってた先生が飛び降りて、王子たちの前に立つ。


 あ、そうだ。

 先生から言えって言われてたセリフを言うの忘れてた。

 なんか取り込み中みたいだけど言っとくか。


「えーと、


きゃー。

先生に捕らわれてるわー。

王子ー。

たすけてー」


 うむ!

 完璧!


「……」


「……」


 あれ?

 どったの?


「……おい、ミサ・フォン・クールベルト。

さすがに空気読め」


 え?

 あんたに言われるなんて屈辱なんだけど。


『うんうん、これでこそミサよね』


『うん、なんか安心するね』


『ミサはこれでいいのです』


 え?

 なに?

 なんか3人も失礼じゃないかい?


「……はぁ、《催眠(ヒュプノ)》」


「え!?

……んにゃ……。

すぴーすぴー……」


 そして、あたしは先生の魔法ですやすや眠らされちゃったとさ。



「……ちょっと待て。

なぜミサにそれが効く。

ミサには状態異常魔法は効かないんじゃないのか?」


「効かないのではなく、効きにくいというだけです。

彼女と同じ属性で、かつ彼女より高位の術者である私がちょっと強めにかければ、これぐらいわけないですから」


「……ふん。

相変わらずの化け物っぷりだな」


「ふふ、よく言われます」


「……ちっ」


 悠然と微笑む先生に、王子は眉間にシワを寄せて表情を曇らせてる。

 やっぱり先生はとんでもないんだね。


「……そんなことより、さっきの話はどういうことだ?

なぜ父上がこのことを認めている?

そもそもおまえたちの目的はなんなんだ?」


「ああ、そういえば、まだお話してませんでしたっけ?」


 先生はとぼけたような顔をしたあと、ゆっくりと口を開く。


「帝国からこんな提示があったのです。

ミサさんを引き渡せば、この国との戦闘行為を向こう100年完全に停止する、と」


「……なに?」


 え?


「そして、王と相談した結果、我々は帝国にミサさんを引く渡すことにしたのです」


「……貴様」


『『『……は?』』』


 いや、あたしそれ聞いてないよ!

 どういうことだい!




あ、あたしまた眠っちゃったから、次からまたあたしの語りじゃなくなるからよろしくね。

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