81.みんな~!早くあたしを助けに来て~!って、1回やってみたかったのよ
「……ミカエル先生?
なんでいんの?」
目を覚ましたら目の前にイケメンが。
え?
これ夢?
でもミカエル先生ってのがなー。
あたしセンス悪いな~。
「……ミサさん。
わざと考えてるでしょう」
あ、バレた?
「やれやれ。
あなたは本当に、こんな時でもあなたらしいですね」
「こんな時?」
そう言われて周りをキョロキョロ見回してみると、いつものベットではなくて、なんだか知らないとこのふかふかベットに寝ていることに気が付いた。
「え?
なにここ?
え?
ホントに夢なのかい?」
「夢ではないですよ。
あなたが寝ている間に、あなたのことをさらってしまいました」
……うん。
夢だ。
間違いない。
ミカエル先生がこんな痛いセリフを言うわけない。
「おやすみなさー……あだっ!」
「……だから夢ではないと言っているでしょう」
「チョップしなくてもいいじゃないかい!」
「あなたが話を聞かないからです」
「まったくもう。
んで、夢じゃないなら、なんであたしをさらったりなんかしてるのさ?
なんのドッキリだい?」
『大成功!!』って書いた札でも持ってりゃいいのかい?
「……そうですね。
あなたには全てを話しておきましょう。
その方が事を運びやすいですからね」
「へ?」
なに?
なんか真面目な感じなのかい?
「……それで?
ミサの居場所は分かったのかい?」
ミサの屋敷の屋根の上。
シリウスたちがミサ奪還計画を立てている時、三大魔獣と呼ばれる3人が離れた場所でそれぞれ目を閉じて意識を集中していた。
「……まだなのです。
ミサが意識を取り戻しさえすれば、私たちはミサがどこにいるか分かるのです」
カイルに尋ねられたアルビナスはそう答える。
ミサがさらわれたということに、3人は意外にも冷静だった。
魔獣として長い時を生きてきた者として、それなりの場をいくつも乗り越えてきたからだろう。
「……それまで、ずっとそうしているつもりか?」
「もちろんなのです」
しかし、ミサの両親たちに情報を伝えたあと、一晩中休みもせずに探索し続ける3人の必死さにカイルはやるせない表情を見せた。
それは三大魔獣とまで呼ばれるほどに強力な存在がそれほどミサに傾倒していることにではなく、まるで子供が必死に母親を探しているようにも思えたからだった。
「……そうか」
カイルはそんな3人の姿にそれしか返すことが出来なかった。
「……来た!」
「ミサっ!」
「起きたのです!」
そして、3人は同時にそれを感じた。
「えっ!?
ここは……」
目を覚ましたミサの居場所に3人が驚く。
「どうした!
ミサがどこにいるか分かったんだろ!?」
「……とりあえずそこに向かうのです」
「あ、おい!」
アルビナスはカイルの問いには答えず、屋上から飛んで地上に降り立った。
カイルも慌ててそのあとを追う。
風魔法を使えばこの高さからの落下も問題なく着地できるようだ。
3人が屋敷の門に到着すると、そこにはすでに準備を整えたシリウスたちがいた。
当然、カイルもすでに装備を整え、腰に剣を差していた。
「アルちゃん、ルーちゃん、ケルちゃん。
ミサのことをお願いね」
ミサの母親が3人の手を取る。
ミサの父親はそんな妻の肩に手を置き、3人に信頼の眼差しを送る。
どうやら、ミサの両親は屋敷で待機することにしたようだ。
兄のロベルトは公務のためにすでに屋敷にはいなかった。
今回、ミサの奪還作戦に赴くのはシリウスとクラリス、ジョンとクレア、フィーナとカイル、そして三大魔獣の3人であった。
カークは念のために屋敷に残り、スケイルは王子たちの不在をカバーすることになったのだ。
「任せるのです」
「大丈夫よ!
ミサを必ず連れて帰るわ!」
「うん!」
両親の祈るような願いを3人はしっかりと受け止めた。
「おい!
早く行くぞ!」
シリウスに急かされ、アルビナスはムッとした顔を見せる。
「分かってるのです。
ついてくるのは勝手ですが、邪魔だけはしないでほしいのです」
「ふん!
それはこっちのセリフだ!」
どうやら、この2人はあまり仲が良くないようだった。
アルビナスからしたら、いずれミサを連れていってしまうかもしれない存在であるシリウスのことを快くは思えないようだった。
『さあ、早く乗るのです』
そして、魔獣の姿になった3人の背に乗って、シリウスたちはミサが捕らえられている場所まで向かうのだった。
「……と、いうことで、今はあなたを連れ戻そうとシリウス王子たちがここに向かっていることでしょう」
「な、なんだってぇ~~!!」
「……なんで急に大げさにリアクションし始めたんですか」
「いや、なんかここだけ使われるような気がして」
ほら、尺とか演出の都合があるでしょ?
「……ちょっと何の話をしているのか分からないのですが」
あ、すんませんね。
「……とにかく頼みましたよ。
あなたにかかっているようなものなのですから」
「あーうん。
あんま自信ないけど、やれるだけやってみるよ」
「……不安でしかないですね」




