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66.やっぱり癒しは必要だよ

「ただいま~」


「おかえりなさいませ、お嬢様」


 ミカエル先生に家の門まで送ってもらうと、メイドのフィーナが出迎えてくれた。

 なんか、今日はいろいろあったからいつも以上に疲れたよ。


「あら、お連れ様ですか?」


「へ?」


「どうも、こんにちは」


 あたしがうなだれながら家に入ると、門のところで別れたはずのミカエル先生がついてきていた。


 え?なんで?


「あれ?

先生帰ったんじゃないの?」


「いえ、ついでにミサさんのお部屋の『門』の具合を見ておこうと思いましてね」


「ああ、そゆこと」


 『門』っていうのは、ケルちゃんたち三大魔獣をお迎えするにあたって、先生が森の中心地とあたしの部屋とを繋ぐために設置した転移門のこと。

 あんまり頻繁に三大魔獣が森を出入りするのもおかしいし、人化してても、子供が魔獣の森を出入りするのがそもそもおかしいから、3人があたしの家をメインで過ごす場所にしたいならってことで作ってくれたんだよ。

 これがあれば、あたしの部屋から魔獣の森の中心地まで瞬時に転移できるわけだね。

 ケルちゃんたちにしても森の長として、ずっとあたしの家にいるわけにはいかないから、交代交代で『門』から入れ替わることにしたみたいだよ。

 普段は普通のクローゼットなんだけど、登録された人が転移したいって思いながら開くと、森の中心地と繋がるんだよ。

 登録者と一緒なら誰でも同行できるらしいから、緊急時の避難なんかにも良さそうだね。


 先生もずいぶん親切だねと思ったけど、森や国のために必要だったみたいだね。

 まあ、あたしもあの中心地のキレイな景色を見たくなったらすぐに行けるから、おこぼれに与ってる感じだね。


「あ、どうも~。

ミカエル先生。

ようこそいらっしゃいました~。

どうぞ、ゆっくりしていってくださいね~」


「あ、いえ、ミサさんも疲れたでしょうから、『門』の様子を見たら今日はすぐに帰ります」


「そんなこと仰らずに~。

お嬢様なんてお菓子でも与えておけば元気になりますから、私の作ったケーキでも食べていってくださいよ~」


「まあ、それもそうですね」


 おい、おふたりさん。


 まあ、今ので分かったかもしんないけど、うちのフィーナは先生にぞっこんなのよ。

 ぞっこんとか、今は言わないのかね?

 なんでも、この前先生が『門』を設置しに来た時にヒトメボレしたらしくて、先生が来た時だけあたしの扱いがすごい雑になるんだよね。


 しかも、厄介なことに。


「ミサさんの懐刀であるあなたとの親交を深めておくのは確かに有効かもしれません」


「そうですよ。

外堀から埋めるのは大事ですからね」


「「ふふふ、ふふふふふふ」」


 お互いに腹黒いことを承知の上でやりあってるもんだから手の施しようがないわけよ。

 まあ、フィーナの恋を応援してあげたいとは思うけど、このおっさんを陥落するのは骨が折れそうだよね。


「……ふふふ、なんですか?

ミサさん?」


 ほらね。









「ミサ~!

おかえりー!」


「おかえりなさいなのです」


「おかえりなさい!」


「みんな~!

ただいま~!!」


 あたしが部屋に入ると、ケルちゃんアルちゃんルーちゃんの3人がとてとてと駆け寄ってくる。

 あたしはそれをぎゅー!っと抱きしめて受け止めるんだ。


 あ~。

 癒されるわ~。

 学院でのゴタゴタとか、さっきの腹黒2人組とか、なんかもうどうでもよくなるわ~。

 昔買ってたワンコもあたしが帰るとこうやって出迎えてくれたね~。

 やっぱり純真無垢なのっていいわ~。

 どっかの腹黒たちとは違って。


「……ミサさん?」


「……お嬢様?」


 なんか、腹黒2人組が言ってるけど今だけは聞こえないわ~。

 てか、フィーナもそんな能力あるの?

 あ、メイドパワー?

 そうなのー。不思議だねー。









「……ふむ。

『門』の方は特に問題ないようですね。

偽装魔法もうまく働いているようですし」


 あたしが3人に癒されてる間に、先生はさっさと『門』の具合を見てくれてた。

 真剣な表情のミカエル先生にうっとりしてるフィーナはほっておこう。


「森側の偽装はどうですか?

また、他には何か問題は?」


 先生がアルちゃんに話を振り、アルちゃんが少し考えてからそれに答える。


「偽装や『門』には問題ないのです。

……ただ」


「ただ?」


 なんかあるのかい?


「最近、西からの視線が強い気がするです」


「……ほう」


「あ!

私もそれ思った!」


 アルちゃんにルーちゃんも同意を示した。


「えー?

僕は分かんないなー」


 うんうん、ケルちゃんはそれでいいのよ。


「でも、森に侵入しようとしてるとかはないみたいなのです。

監視が厳しくなった、というのが正しい表現だと思うのです」


「……そうですか」


 先生も何か思うところがあるのか、アゴに手を当てて考えてるみたいだった。


 フィーナ。


『ふふふ、思案する姿もまた……』


 っていうの、声に出てるからね。


「こちらでも調べてみましょう。

あなた方はこれまで以上に森への出入りには気を付けるように。

特に『門』からこちらに来て、外から魔獣の森に戻ったりなどの矛盾を発生させないように気を付けてください」


「わかったのです」


「わかったわ!」


「???」


 うん。

 ケルちゃんはよく分かってないね。

 あとでアルちゃんに教えてもらいな。


「あと、現在、隣国の王子が留学で学院に来ています。

くれぐれも魔獣の姿でミサさんと一緒にいるところを見られたりしないように、十分気を付けてください」


「えっ!?」


「……」


「あ!

いや!なんでもないよ!」


 やめて、先生。

 そんなゴミムシを見るような目で見ないどくれ。

 フィーナ、うらやましい……じゃないよ。


「……」


「……えーと、ごめんなさい!!」


 そして、国境での出来事を聞いた先生はとてつもなく長いため息を吐いたのでした。





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