64.選択科目にもいるみたいだよ
「……つまり、この場合は川を使った機動力の減衰と、丘陵の上部を取ることでの地理的優位性の確保によって、相手の半数程度の兵力で敵を殲滅することが可能となるわけです。
続いて……」
「……サ、ミサ!」
「……んがっ!」
あ、クラリスさん。
かわいい顔してどったの?
え?かわいいのはいつもだって?
そりゃそーだ!
「……死ね」
「ぅぎゃっほい!」
ミカエル先生の地獄チョーク投げを間一髪で避けるあたし。
てか、いま○ねって言わなかったかい?
「……ちっ」
舌打ちした!
いま舌打ちよ、この人!
「……ふむふむ。
戦術学か。
どのようなものかと思ったが、なるほど。
兵法や隊の指揮の方法を教えているわけか。
これは勉強になるな」
カイルさん、あんたここにもいるんだね。
え?
全部あたしと一緒になるようにした?
へー、そう。
それはキモいね。
あと、なんかしゃべる度にこっち見て、キラン!ってやるのやめてくれるかい?
ただでさえあたしの居眠りでイライラしてる先生の矛先が余計にあたしに向かうんだよ。
え?
あたしが寝るのが悪いって?
そりゃそーだ!
「あだっ!」
「……授業に集中しなさい」
「そ、そりゃ、そー、だ……」
「……えー、では、二人一組になって魔法の相性についての検証を行っていきましょう」
続いての実践魔法の授業。
こういう時は自分の属性と同じ属性の人か、相性の悪い属性の人と組むらしい。
だけど、あたしは他の人に自分の属性を言えないから、いつもクラリスと組んでこっそり練習してる。
他のクラスメートには風属性で通してるんだけどね。
闇属性はいろんな属性の魔法を使えて、その中でもあたしがそれなりに得意だったのが風だったからだ。
「クラ……」
「ミサミサ!
俺と組むぞ!」
「はいぃ!?」
クラリスの輝くような笑顔に迎えられようとしたら、カイルの無駄にキラキラした笑顔に取って代わられた。
クラリスは二次被害を恐れてか、とっとと他の子とペアを組んでたよ。
この裏切り者~!
せ、先生……。
「ミサ君とカイル君は風属性同士。
相性も良いし、カイル君の風魔法は一流だから勉強させてもらいなさい!」
くそぅ。
良い笑顔しやがって。
味方が誰もいないよう、ぐすん。
「さあ!
やるぞ!
ミサミサ!
さあさあさあ!」
「わ、わかった!
わかったから下がりな!
暑苦しいんだよ!」
いくらイケメンでも近すぎるとさすがに怖いよ。
てか、目に毒だね。
クラリスだったら大歓迎だけど、ぐへへ。
「お?
なに気持ち悪い顔してるんだ?
それも悪くないぞ」
……それ、褒めてるのかい?
まあ、女に対して否定的な言葉を使わないとこはまあまあだね。
気持ち悪いはダメだけど。
「《グレートワンダフルハイパーハリケーン!》」
「うわーお」
そして、しぶしぶカイルとペアを組むことになって、同属性魔法同士の相殺を試すってことになったんだけど、カイルは7本の大きな竜巻を自分の周りに出現させた。
てか、技名ダサっ!
絶対、本来の名前じゃないでしょ!
でも、それってつまりほとんど無詠唱であんなすごい魔法を出したってことで。
しかも、あれはかなりの大魔法なわけで。
あたしは得意って言っても他の属性魔法に比べたらってだけで、まだぜんぜん初級魔法しか使えないわけで。
「よーし!
いくぞ!
ミサミサ!」
「い、いや、ちょ、ちょっと待って!」
つまり、こんなんに相殺できるわけなんてなくて!
「ほう!
直前まで魔法を出さないのか!
その意気や良し!
いくぞ!」
「待って待って待って、待っとくれ~!!」
「たぁー!」
「ぎゃー!!」
「ミサ~!!!」
クラリスの声を聞きながら竜巻に巻かれるあたし。
ふふふ、飛んでる、あたし、飛んでるよ~。
そのあと、森まで吹き飛ばされたあたしの捜索で残りの授業時間がなくなったのは言うまでもないね。




