61.ここでヤツが乱入ね。ま、そんな気はしてたよ
「なっ!」
「へ?」
「いやいやいやいや!」
うん、みんなそりゃ驚くよね。
「だ、だめだ!
カ、カイル殿下!
どうかお考え直しを!
わたくしの首だけで、どうか!」
ジョンさん。そんなに焦って必死に言ってくれるのかね?
あたしゃ良い友達を持ったね。
でもね、あんたの首もあげないからね。
「ちょいとあんた、なに勝手に決めてるんだい!
あたしゃそんな話、受けやしないよ!」
「?」
いや、『?』じゃないよ!
あたしが喜んでお受けします!とか言うと思ったのかね!
「ミサ、べつに君の意思は関係ないのさ。
これはアルベルト王国とマウロ王国の国際関係上の問題。
そこに一令嬢の意見など介在させる必要はないのさ」
「へ?
……いや、当事者でしょ!」
何をキョトンとした顔してんだか!
「当事者であろうとも関係ないさ。
これは王家の間での話であって、俺が今回の件を不問に伏すか、国際問題として今後の友好関係に支障をきたすかの問題で、そこに当事者であるミサの意思意見はなくて構わないんだよ」
「はぁっ!?」
あかん、この坊っちゃんは心からそう言ってるみたいだ。
「……ミサ、カイル王子の言うことは正しいよ。
残念ながら、あとは王家同士での話になるの」
「クラリス」
あのクラリスが落ち込んだ顔で耳打ちしてきたってことは本当なのかね。
え?
なんか、そんな大事なの?
え?
ちょっと先生。
ミカエル大魔王大先生。
なんとかしてよ。
「……」
いや、黙って考え込んでないでさぁ!
肝心な時に役に立たないね、この魔神は!
「さ、王にはあとで話を通すから、ミサは俺と軽くハネムーンと行こう!」
「いや、ちょっ!」
ちょ、待てよ!
「ちょぉっっと、待ったぁ~~~!!!」
「あ、王子」
そんなこんなでウチとこの王子が参上。
え?
あんた授業は?
まだ朝一なんだけど。
てか、どっから聞き付けてきたんだい。
「やあ!
これはこれはシリウス王子!
久しぶりだね!」
「カイル、貴様!」
「え?
あ、知り合いかい?」
そりゃそうか。
隣国の王子なんだし、話したことぐらいはあるよね。
「ミサは俺様のものだ!
勝手に連れ出すなど許さん!」
いや、あんたのでもないけどね。
てか、人をモノ扱いすんな。
ま、でも今は止めてくれた方がありがたいから黙っとこうかね。
あ、というか、王家での話ってんなら、コレとなら話が通じるってわけか。
よし!
なら今だけは頑張れ!
えーと、名前なんだっけ?
シ、シリアル王子?
かな?
うん、頑張れ!
「ふふふ、現れて早々、相変わらず騒がしいね、君は。
しかし、あの君が俺のモノ、とはね。
これはますます彼女が欲しくなったよ!」
「へ?
はひゃっ!」
「き、貴様!
何を!」
カイルはあたしを抱え込むと、窓際まで下がった。
イケメンのお姫様だっこは心臓に悪いよ!
「そんなに言うなら決闘だ!
シリウス!
俺が勝ったらミサは俺の婚約者!
君が勝ったら君の婚約者となる!
いいな!」
「へ?」
「いいだろう!
やってやるさ!」
「はい?」
「お兄様!
頑張って~!」
「シリウス王子!
申し訳ありません!
よろしくお願いします!」
いやいや、どっちに転がっても、あたしはどっちかの婚約者になることになってるんだけど。
え?
皆もなんで応援してんの?
「いやいや、おかしいじゃん!
ミサが婚約者にならない方法がない!」
おお!
ジョン!
あんただけが頼りだ!
「さあ、いくぞ!
校庭で勝負だ!」
「望むところだ!」
……ああ、誰も聞いてないよジョン。
「とう!」
そして、窓から飛び降りるカイル。
ジョォォォォン!
「……ま、もう少し様子を見ますか」
先生!
ちょっと面白がってるでしょ!
ちょっと笑ってるの見えてるからね!