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60.償いってなんだい?美味しいのかい?

「ほらほらぁ~!

敵意はないってば~!

ばんざ~い」


 カイルはクレアとジョンに剣を突き付けられながらも、笑顔で万歳しながら害がないことをアピールしてる。


「……真偽が確かめられるまでは解放できない」


 クレアはその笑顔には騙されず、淡々と話す。

 さすがは騎士様志望だね。

 イケメンすぎてクラクラしちゃうよ。


「ミ、ミサ~。

何とか言ってくれよ~」


 カイルが情けない声で助けを求めてきた。


「そうは言ってもね。

あたしもあんたのことをちゃんと知らないからね」


「そんなぁ~」


 カイルが困ったようにしおしおしたけど、実際、昨日ちょっと助けただけで、カイルの素性はまったく知らないんだから仕方ないよね。


「ミサ。

悪いけど、ミカエル先生を呼んできてくれるか?」


「あ、はいはい……」


「まあ、もういますけどね」


「って、うわっ!」


 ジョンに頼まれて先生のとこに行こうとしたら、先生はすでに教卓に立ってた。

 なんか、すごい嫌そうな顔してる。


「はぁ~~~~~~~~…………、

なぜ、こう次から次へと」


 すごい長い溜め息だね。

 え?てか、なんであたしの方見てるの?

 あたし何もしてなくないかい?


「やれやれ、来るのが遅いぞ、ミカエル殿」


「えっ!?」


「なっ!

いつの間に!」


 あらあら。


 カイルはいつの間にかクレアとジョンの包囲から抜け出して、先生の横に立ってた。

 てか、あのミカエル先生にもそんな態度なんだね。

 もはや軽く尊敬するよ。


「……ここでは普通に先生でお願いしますよ、王子」


 んん?

 王子?

 いま王子って言ったかい?

 あたしが知ってる王子はあの王子(バカ)だけなんだけど。


「え~、と言うことで、彼は隣のマウロ王国から留学のために来られました。

では、自己紹介を」


「うむ!」


 ミカエル先生に促されて、カイルがずずいっと一歩前に出る。


「俺はマウロ王国第一王子にして王太子であるカイル・マウロ8世だ!

俺の妻になりたいものは大歓迎!

みな平等に愛してやるぞ!

よろしく!」


「「「……」」」


「……え~、アルベルト王国の良いところを学びに来ました。みんな仲良くしてね。

と、マウロ国語で言っているようですね」


 ああ……。

 なんか、うちとこの王子(バカ)とはまた違った意味で残念な人だね。

 先生の無理やりなフォローが悲しいよ。

 え?

 王子って普通の人いないの?


 カイルは皆のゴミムシを見るみたいな目に気付いてないのか、両手を振って愛想を振り撒いてる。


「「も……」」


「え?」


「「ももももももも」」


 ん?

 なんか、ジョンとクレアがバグったよ?


「「もーしわけありませんでした~!!!」」


「うわっ!」


 クレアとジョンによるダイビング土下座が炸裂だよ。


「マ、マウロ王国の王太子殿下とは露知らず、無礼にも刃を向けるなど、とんだ失礼を!

どうか、どうか我らの首だけで償いを!

寛大な処置をお願い申し上げます~!!」


 あ、そか。

 腐っても隣国の王子だもんね。

 そんな人に剣を突き付けたら、知らなかったとはいえ打ち首は当然。

 それこそ国際問題ものなわけかい。


「……ふむ」


 さて、カイルはどう出るかね。

 ミカエル先生もとりあえず流れを見てる感じなのかね。

 きっと先生なら何とかしてくれるだろうけど、あたしもとりあえずは黙っとくかね。


「……」


「……」


「……」


 無言の時間が長いね。

 ミリ○ネアのみのさんかね。


「気にするな!」


 おお。


「俺のことは知らなかったのだ。

ミサと、そこなクラリスはアルベルト王国にとって大事な存在なのだろう?

それならば騎士を目指しているのであろうそなたたちがあのような行動に出るのは当然!

むしろ誉めてつかわすぞ!」


 なかなかやるじゃないかい。

 見直したよ。


「「あ、ありがとうございます!!」」


 で、再び息ぴったりの綺麗な土下座。

 なに?

 実践武術ではそんな作法も教えてくれるのかい?


「……」


 おや?

 ミカエル先生は何やら不穏な顔してるけど、なんか気にくわなかったのかね?

 あ、いつも仏頂面だって?

 こりゃ失敬♪

 あ、すんません。

 無言でこっち見ないでください。

 ホントすいません。


「ふむ。

しかし償い。

そうか、その手があったか」


 おや?

 何やらカイルが顎に手を当てて考え込んでるね。

 まあ、きっとろくでもないことなんだろうね。


「よし!

決めた!」


 おお。

 良い笑顔。

 嫌な企みを思い付いた時のクラリスの笑顔だよ、それは。


「今回の件を不問に伏す代わりに、俺はミサを婚約者にするぞ!

それで手打ちだ!」


「……はっ?」


 きっと、この時のあたしはバカみたいに口をぽかんと開けてたと思う。


「決まりだな!」


 決めるな!




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