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50/252

50.飴ちゃんを作っただけなのに……

「ミ、ミサ!?」


「ギィ?」


 うん、蜘蛛さんもちゃんと止まって首をかしげてくれるのかわいいよね。


「……お、王子」


「カーク!」


 倒れているカクさんの姿を見て、王子が駆け寄る。


「ケルちゃん!

蜘蛛さんを牽制してて!」


『え!

僕、蜘蛛は嫌いだよ~』


 そう言って、しっぽを足の間にしまって弱腰になるケルちゃん。


 あ、そういえば、さっき移動中に三竦みがどうとかってスケさんが言ってたね。


『ケルベロスは昔、蜘蛛に全身を糸でぐるぐる巻きにされてから、苦手になったらしいのです』


「蛇さん」


 蛇さんはそう言いながら、しゅるしゅると蜘蛛さんの前に立ちはだかる。


『ここは私が牽制してますから、どうぞなのです』


「わかった!

ありがと!」


 蛇さんにお礼を言って、あたしたちはカクさんの元に走った。

 クレアと、人化したケルちゃんも一緒に。


「おい!

カーク!

大丈夫か!」


「……王子、申し訳、ありません」


「王子、ちょっとどいてください」


 カクさんを揺さぶる王子をスケさんがどかして、カクさんの状態を診てるみたいだね。

 クレアやクラリスはちゃんと一歩離れて様子を見てるから、あたしもそれに倣うとするかね。


「ふむ、麻痺毒ですね。

即死毒じゃなくて良かった。

休眠期に起きてしまったから、保存食として巣穴に持っていくつもりだったのでしょう」


 スケさんがカクさんに手をかざして、何か調べたみたいだ。

 スケさんの手からは魔方陣みたいなのが出てる。


「スケイル!

治せるのか!?」


「難しいですね。

即死の蜘蛛の毒は最上級のものですので、私の水魔法でも中和しきれません」


 王子に肩をつかまれても、スケさんはそれを振り払いながら冷静に答えた。


「くそっ!

クラリス!

光魔法で浄化できないか!」


「あ、私は、まだ浄化を覚えてないから……」


 クラリスが申し訳なさそうに指をいじいじしてる。

 こんな時でもかわいいクラリス、いい。


「ならば仕方ありません。

カークはこのまま運びましょう。

幸い、危険な魔獣はミサさんが何とかできるみたいですし、それ以外はクラリス殿下の《聖光(ホーリーライト)》で寄せ付けずに行けるでしょうから」


「そんなっ!

でも、カーク先輩は苦しいのでしょう!?」


「……そうですね。

身動きが取れないだけでなく、呼吸器系も麻痺しているので、呼吸も苦しいはずです」


「そんなっ!」


 クレアがスケさんにすがりつくが、スケさんは悔しそうに首を縦に振るだけだった。


 それは可哀想だね。

 何とかならないもんかね。


「それなら、ミサの飴玉あげればいーよ!」


「ケルちゃん?」


 あたしたちが困っていたら、ケルちゃんがあたしを指差して、そんなことを言った。


『それがいいでしょう。

ミサさんの飴には状態異常回復の効果があります』


 蛇さんが蜘蛛さんにシャー!って言いながら、ケルちゃんの言葉を補った。


「……バ、バカなっ!

ミサさん!

さっきの飴玉、まだありますかっ!?」


 スケさんがそれを聞いた途端、顔色を変えてあたしに詰め寄ってきた。


「え、あ、あるけど」


 おばさんは飴ちゃんを切らさないからね。


 あたしはポッケから、手作りの飴ちゃんを出した。

 まだ、あと5個はある。


「ちょっと失礼!」


 スケさんはその内の1つをつかむと、包み紙をあけて、自分の口に放り込んだ。

 ケルちゃんが、ずるーい!って言ってたけど、なんか真面目な話してるから今は大人しくしてようね。


「……こ、これはっ!」


 しばらく口の中で飴玉をころころ転がしたスケさんは、自分の状態を確認して、驚きの声をあげた。

 そして、あたしの手からもう1つ飴ちゃんを取ると、包み紙から取り出した飴ちゃんをカクさんの口に突っ込んだ。


「むがっ!」


「いいから舐めろ!

麻痺してても、少しなら動かせるだろ!」


 突然、口に飴ちゃんを突っ込まれたカクさんは驚いてたけど、スケさんの勢いに負けて、素直に飴ちゃんを舐め始めた。

 で、しばらくすると、


「……ん?」


 カクさんが自分の腕を持ち上げて、指を動かし始めた。


「あ、う、動けるぞ」


 そして、ゆっくりと体を動かして、立ち上がることが出来るようになった。


「……え?」


「……うそ!」


 クレアやクラリスたちが驚いた顔をしてる。


「……スケイル。

どういうことだ」


 王子が珍しく真面目な顔でスケさんに詰め寄ってる。

 ちゃんとしてればイケメンなんだよね、この王子(バカ)は。


「……ご覧の通りです。

ミサさんの作ったこの飴玉は、状態異常を回復させ、体力もある程度回復させる作用があるようです」


「そんなの、中級ポーションと同等の効果じゃない!」


 スケさんの説明に、クラリスが声を上げて驚く。


「いや、即死の蜘蛛の毒を完全に浄化するなど、上級ポーションに匹敵する」


 ポーションって、そういえば、なんかミカエル先生の戦術学で聞いたことあるね。

 たしか、いろんなケガとか状態異常とかを治せるけど、作るのがすごい大変だってやつ。


「……上級ポーションは、水魔法と光魔法の使い手が数ヶ月かけて1本作るような代物だぞ」


 え?

 そだっけ?


「ミサ、これ、1日で作ったって言ってたよね?」


 ……正確には数時間だね。

 冷ます時間をいれなきゃ、1時間とかかもね。


「……それを、10個ほど……」


 ……正確には30個だね。

 途中から楽しくなっちゃって、調子にのっていっぱい作ったんだよ。


「……こんなの、医療も戦争も、根底から覆るぞ」


 ちょっと王子。

 なんか怖いこと言わないどくれよ。

 というか、これあたし、またやっちゃったやつかね?



「はぁ。

やれやれ、あなたはどれだけやらかせば気が済むんですか」


「ミカエル先生!?」


 なんだかザワザワし始めた所で、悪の大ボス、大魔王ミカエル先生が魔方陣から降臨せしめたよ。


「……ミサ君?」


 あ、すんません。



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― 新着の感想 ―
[良い点] これはやらかしたな、ミサ(。>﹏<。) まあでもカークが助かったようで安心だ◎ さて、ミカエル先生が登場した……。
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