47.どうやら、あたしにラブコメ展開は向かないみたいだよ
「ほら!
王子だろ!
しゃんとしなよ!」
「……こ、こども……。
ミサ、の、子供……」
だーめだ、こりゃ。
ケルちゃんが盲目の蛇とやらを撃退してくれたあと、あたしがバグった王子をどうしようか悩んでいると、
「僕に乗ってく?」
ケルちゃんが犬化(本当は獄狼化)して、大きくなってくれた。
あたしはお言葉に甘えることにして、王子を抱えようとしたけど、見た目に反して重いんだよ、これ。
「ちょ、っと!
くそ重たいね、あんた!
自分でケルちゃんに乗りなよ!」
「……子供。
ふふふ、子供って……」
「だー!もう!
いつまでバグってんだい!
……って、ぎゃー!」
あたしは王子の重さに耐えられずに、そのまま倒れこんじまった。
「いててて……って、おわっ!」
気付いたら、王子があたしに覆い被さってる上に、顔がめっちゃ近くにあるんだけども!
……悪かったね、『きゃっ!』じゃなくて。
「ちょ!
近いって!
ねえ!
くそ王子!」
「……ふふふー。
子供だってさー、はははー」
……むしろ、正気じゃなくて助かったのかね。
「もー何やってんのー」
見かねたケルちゃんが王子をくわえて助けてくれた。
いや、ホント助かったよ。
「ねーねー。
こいつ、このまま食べていーい?」
「食べちゃダメ!」
いや、ダメ、かなぁ。
「ボク、こいつに耳切られたんだよねー」
「あ、そうだったね。
……ちょっとぐらいならいいかね」
「……お、い。
ふざけ、んな」
「あ、正気に戻った」
ちっ。
そして、そのままケルちゃんの背にのって森を進みながら、王子にケルちゃんのことを説明した。
私の家で引き取ることになったから、実質、私の家族だと。
「なーんだ!
そういうことか!
はっはっはっ!
そうか!
あの時のケルベロスか!
いや、あの時はすまなかったな!
いやー!
かわいいなー!
それに蛇も追っ払って、強くてカッコいいんだなー!」
そう言って、ケルちゃんの背に頬擦りする王子。
え?
なんでこの人、ケルちゃんに媚売ってるの?
「や、やめろよー!
そんなに褒めても、嬉しくなんてないからなー!」
そう言いながら、照れくさそうに手で顔を擦るケルちゃん。
うん、ケルちゃんが可愛いからもっとやれ。
そんなやり取りをしていると、ケルちゃんが突然、鼻をひくひくさせた。
「ミサ!
血の匂い!」
「え!?」
「ボク、この匂い知ってる!
水みたいな人と、太陽みたいな人!」
「……だれ?」
「太陽……まさか、クラリスか?」
「え?」
王子が顔を青くしてる。
「……それに、スケイルは水属性なんだ」
「え!?
血の匂いって!
それ、大変じゃないか!」
さらに、ケルちゃんが鼻を利かせる。
「これ、さっきの蛇もいるよ!」
「盲目の蛇か!」
「ヤバいよ!
ケルちゃん!
匂いの方向に急いで!」
「わかった!」
そして、あたしたちは急いでクラリスたちのもとに走った。
クラリス、スケさん、無事でいてくれよ!




