42.演習開始だよ
そして、やって来たよ、演習当日。
「はっはっはっ!
ミサ・フォン・クールベルト!
見よ!
この見事に晴れ渡った空を!
演習日和だな!
これは、優勝は俺様たちで間違いなしだ!」
「あ~ら!
シリウス王子!
悪いけど、優勝はワタクシたちですわよ!」
「むむっ!
貴様はシルバ・ヒートヘイズ!
それは聞き捨てならんぞ!
優勝は俺様とミサ・フォン・クールベルトのペアだ!」
「い~え!
優勝するのは、ワタクシとジョンくんのペアでしてよ!」
「ジョン。
良い天気だね~」
「ああ、ホントだな」
おバカ2人が何やら言い争ってるのをよそに、あたしとジョンは遠い空をぼんやりと眺めていた。
もう、先輩方2人で行けばいいんじゃないかね。
そしたら、誰も文句無しに優勝だよ、良かったね。
「さあ、クラリス殿下。
魔獣の森は危険です。
お手を」
「あ、う、うん。
ありがと。
スケイル」
「クレア。
俺はなるべく手は出さない。
だが、本当にピンチになった時は体を張って守ってやるから心配するな」
「はい!
ありがとうございます!」
いいねー。
あたしもそんな青い春を謳歌したいよ。
「そもそも、俺様とミサ・フォン・クールベルトは資質が違うのだ!
俺様たちの特訓の成果をとくと見るがいい!」
「あ~ら!
そんなことを言ったら、ワタクシとジョンくんが特訓でどれだけレベルアップをしたか、その目でしかとご覧あそばせ!」
「良い天気だねー、ジョン」
「ああ、そうだな」
「さあ、そろそろ演習を始めますよ。
順番に名前をお呼びしますから、私から課題が書かれた紙を受け取り次第、各自、森に入っていってください」
ミカエル先生が小さなメモ用紙の束を掲げながら皆に声を掛けた。
いよいよ始まるんだね。
「……では次!
クラリス君とスケイル君!」
「あ、はい!
ミサ、行ってくるね!」
「うん、頑張って!」
ぐっとガッツポーズするクラリス。
いいね、癒しだね。
そのあとすぐにスケさんと手を繋ぐんだね。
うらやましいね。
「次!
ジョン君とシルバ君!」
「はいっ!
ミサ、じゃ~……!」
「……健闘を祈るよ」
シルバ先輩に引っ張られていったけど大丈夫なのかね。
「次!
クレア君とカーク君!」
「はっ!
では、ミサ、お先に」
「うん、いってらっしゃい」
2人並んで颯爽と森に駆けていく姿が凛々しくてカッコいいね。
「……では、最後、ミサ君とシリウス君!」
「あ、はいはい」
結局、呼ばれたの最後だったね。
「ミサ君の属性は秘密ですからね。
他の生徒たちが森に行ってから、ということにしました。
では、こちらが課題の書かれた用紙です」
あ、なるほどね。
あたしは先生からメモを受け取る。
「なんて書かれているんだ?」
「え~と、なになに。
『闇属性魔法《従属》を使って、魔獣の森の主になれ』
だって」
「……は?」
ん?どゆこと?
「そういうことです。
では、出発してください」
「おい!
どういうつもりだ!」
先生に食って掛かろうとする王子。
「はい、出発~」
ミカエル先生はそれに構わず、あたしたちを転移魔法で強制的に森の中に転移させることにしたみたいだ。
いや、待ってよ。
先生、説明プリーズ。
王子は転移魔方陣の中でバタバタと暴れているみたいだ。
「ミサ君。
健闘を祈ります」
「へ?あ、はい」
最後の先生の表情が印象的で、あたしは転移する瞬間まて、先生の顔を見つめていたんだ。




