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33/252

33.王様はわりと良い人なのかね?

「面を上げよ」


 あ、はいよ。


 謁見の間に入り、玉座の前まで足を震わせながら歩いて、ミカエル先生に続いて、跪いて頭を下げてたら、しばらくしてから、王様のダンディな声が聞こえた。


「私がリグザルト・アルベルト・ディオスだ。

そなたがミサ・フォン・クールベルト嬢だな」


 リ……なんだって?

 あんまり長い片仮名は覚えられないんだよ。

 あっちの時も、新しいアイドルグループの名前が全然覚えられなくて、姪っ子に怒られてたからね。


 ミカエル先生をチラッと見ると、小さく頷いてくれた。

 返事をしろってことらしい。


 あたしは片膝をついたままの体勢で口上を述べる。

 この国は男女での差をなるべく出さないようにしてるみたいで、志願すれば女性でも騎士や軍に、特に障害なく従事できるし、大臣にも女性がいる。

 王様に跪く時も、男女問わず騎士みたいに片膝をついて頭を垂れるから、あたしのドレスもスカートの丈が長く広く取られてて、足を曲げやすくなってる。


「お初にお目にかかります。

わたくしがミサ・フォン・クールベルトでございます。

陛下のご尊顔を拝謁賜り、恐悦至極にござる!」


 ……うん、噛んだね。

 ミカエル先生?

 下向いてるのをいいことに笑ってるでしょ。

 肩震えてるのバレてるよ。


 ん?王様?


「……ふっ」


 ふ?


「ふははははっ!

ござ!

ござるって!

なんだねそれは!」


 いや、王様爆笑しとる~!


「ふははははっ!

ふはっ!

はっ!

はははははっ!」


「いやっ!

笑いすぎだよ!」


 あ!しまった!

 おもいっきり指差しちゃったよ。


「はーっはーっ。

いや、すまんな。

ずいぶん緊張しているから、何をやらかしてくれるかと楽しみにしていたものでな」


 おや?

 お許しいただけた?

 ていうか、嫌な期待だね。


「君の噂は聞いているよ。

入学式の日に、うちのバカ息子をぶん殴ったそうだね」


 え?知ってんのかい!?

 ヤバいよ。

 これ、不敬罪とやらで打ち首なんじゃないのかい?


「い、いやー、何のことを仰っているのやら~。

皆目、見当もつきませんな~」


 とりあえず、明後日の方向を向いて鳴らない口笛を吹く作戦でいってみるよ。


「いや、誤魔化さんで良い。

ミカエルから詳細は聞いておるからな」


 あたしが先生の方を見ると、先生はさっきのあたしと同じように、そっぽ向いて鳴らない口笛を吹いていた。


 裏切り者めっ!

 真似すんなっ!


「私はね、正直、嬉しかったんだ」


 え?


「あのバカ息子は、第2王子という立場上、私があまり関わってやれなかったからなのか、極端な育ち方をしてしまってね」


 この国では、王は皇太子である第1王子以外には、寵愛を授けないようにしているらしい。

 なんでも、昔にそれでトラブルがあったらしく、余計な誤解を生むようなことはしないようにしたんだって。


「あいつのことは、母である、今は亡き王妃がよく面倒を見ていたんだが、妻が亡くなってからは一般的な教育はしていたが、肝心の心の部分を育ててやれなかった。

その結果、ああなってしまって」


 そうだね。

 うん。

 なってしまったね。

 残念な感じに。


「とはいえ、あれはあいつなりに国を良くしようと思ってやっていること。

無下にはすまいと対処が遅れてしまった。

いつかは、誰かが叱ってやらねばとは思っていたのだ」


「王よ。

本来ならば、師である私の役目。

まともに務めること能わず、申し訳ありません」


「良いのだ、ミカエル。

ただでさえ多忙なお主に、そこまで手を回すのは難しかろう」


 そうだね、ミカエル先生いっつも忙しそうだもんね。


「そこを、ミサ。

そなたがぶっ壊してくれたのだよ」


 王様。

 ぶっ壊すだなんて……いや、たしかにぶっ叩きはしたね。


「そんなそなたに願いが……いや、王からの請願があるのだ」


「はぁ」


 いや、それってもう断れないやつだよね?

 どんな内容でも、謹んでお受け致さないといけないやつだよね?


「実はな……」



「父上!」


「あ!

バカ王子!」



 王様が口を開こうとした矢先、噂の王子(バカ)が扉をバーン!って開けて登場したんだよ。




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― 新着の感想 ―
[良い点] ござる! 朝からお腹が痛くなりました(笑) バカ王子もそれなりに色々あったのですね〜! ってまさかの本人登場!?
2022/10/17 08:20 退会済み
管理
[良い点] 王様は話が分かる良い人みたいで安心しました笑
[良い点] さあて、どんな話になるのやら。 次回に期待☆彡
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