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30.カクさんカッチョいいじゃないかい

「くそっ!」


 カークが突然現れたクロスイーターというカエル型の魔獣に悪態をつきながら剣を抜いた。


「先輩っ!

無理だっ!

クロスイーターに剣は効かない!」


「そんなこと、分かっている!」


 カークはクレアに答えながら跳躍し、振りかぶった剣をクロスイーターに思い切り突き刺した。


 が、


 剣は分厚い脂肪の鎧にぼよんと弾かれた。

 クロスイーターはまったく意に介しておらず、眠そうに欠伸をしている。


「……くそっ!」


 スケイルがいれば!


 カークはそんな考えをすぐに打ち消す。

 無い物ねだりをしていても仕方ない。

 それに、戦場において、あらゆる場面で適応できなければ騎士として意味をなさない。

 しかも、自分は王子の護衛騎士。

 どんな手段を用いてでも敵を倒し、主を守る。

 剣が通用しないならば、頭を使うしかない。


 クロスイーターがこちらを見据えて口をもごもごさせている。

 舌を伸ばす予備動作だ。


「ちっ!」


 高速で飛び出してきた舌を、カークは寸でのところでかわす。


「先輩!

私は足手まといだ!

私を置いていってください!

クロスイーターにやられても殺されはしない!

やつが私に気を取られている隙に逃げて、やつが去った時に回収していただければ構いません!」


「……それは論外だ。

仲間を置いて逃げるなどあり得ない」


「先輩っ!」


 クレアの言葉を、カークは即座に棄却した。


ーー考えろ。何か、何かあるはずだーー


「……そうだ」


 カークはくるりと振り向き、クレアに向き合った。


「クレア。

やはり、おまえを置いていく」


「えっ?」


 再び飛び出した舌を、カークは跳躍して避けた。

 その先に、クレアがいるにも拘わらず。


「きゃあっ!」


 クレアは思わず身構える。





「ちょっと!

先生!

そろそろ助けないとっ!」


「……いや、まだですよ」


「へっ?」





「ゲコッ!?」


 カークは剣をクレアの手前の地面に向けて思い切り投げた。

 そして、それは地面に突き刺さり、鋭利な剣に高速で飛び込んできた舌は、自らの速度で、自らの肉を2つに分けた。


「ゲェェッ!」


 2つに裂かれ、クレアの左右を通過した舌はすぐにしゅるしゅると引っ込み、クロスイーターは森の奥に引っ込んでいった。


「む!逃がさん!」


 カークはそれを討伐せんと追い掛けようとしたが、クレアが袖の裾を掴んで引き止めた。


「大丈夫です。

きっと、ミカエル先生が何とかしてくれる。

それよりも、先輩が無事で良かった」


 途中から演技を忘れたクレアは、本気でカークの心配をし、そして、無事なことに、心から安堵していた。

 その様子に、カークも魔獣を追うのを諦め、ふっと笑った。


「こっちのセリフだ。

おまえが無事で、本当に良かった」



 そして、クレアはカークに背負われて、救護室へと運ばれていった。









「やれやれ。

何とかなった、のか?」


 ジョンが演習場の森を立ち去る2人を見送りながら、ふうと一息ついた。


「そのカエルは大丈夫なのかい?」


「問題ありません。

切られる直前に舌の軌道をずらしました。

舌が切れたように見えたのは、私の幻影魔法です」


 さすがはミカエル先生だね。


「あまり魔獣を傷付けると、あなたに怒られますからね」


「え?」


「なんでもありません。

とりあえず、私たちはこれで解散にしましょう。

私は後片付けと、2人の話が終わったら適当に理由をつけて、魔獣は退治したと説明しておきます」


「えー!

救護室の様子は見ないのー?」


 クラリスがものすごい不満げな顔をしてる。

 正直、あたしも気になって仕方ない。


「クラリス姫。

それは無粋というものですよ」


 スケさんにたしなめられて、クラリスはしぶしぶ引き下がった。

 でも気になるから、明日いろいろ聞いてやろうかね。


「まあ、私は説明の際に根掘り葉掘り聞きますけどね」


 このミカエル(悪魔)めっ!



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― 新着の感想 ―
[良い点] クロスイーターの舌が無事でよかったです! ミカエル先生、本当に容赦ないですね( *´艸`)笑
2022/08/05 19:53 退会済み
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