27.ヤツを手に入れるんだよ
「クレアが演習場内の森で崖から滑って転んでケガをしちゃって、そこを魔獣に襲われて大ピンチ!
そこでカークが颯爽と現れて、魔獣を打ち倒してクレアを助け、クレアはお礼とともに想いを告げる。
それでハッピーエンド!
どう!!」
クラリスの発表を聞いて、ジョンが手を挙げる。
「そもそも魔獣はどうすんだ?
そんな都合よく現れて、しかもクレアに実際に襲い掛かる前にカーク先輩に登場させられるのか?」
「うっ!」
ジョンの指摘に、クラリスがダメージを受ける。
続けてあたしも手を挙げる。
「そもそもクレアが崖から滑るなんてミスをするとは思えないんだけど」
「たしかに」
「ううっ!」
クレアも同意し、クラリスはさらなるダメージを負う。
そして、とどめにスケさんが手を挙げた。
「というより、そんな状況に、ミカエル先生がさせないでしょう。
学院内に魔獣が発生すれば、あの人がまず感知しますし、それに、演習中は生徒一人ひとりに簡易結界が張られてて、あまりケガはしないですからね。
それに何より、手負いとはいえ、クレアが倒せない魔獣ということは、それなりの強さを持った個体ということですよね?
そうなると、カークも無傷で仕留めるのは難しいかと」
「きゅうぅぅ~」
クラリスは大ダメージを受けた。
もはや瀕死だ。
たしかに、なかなか厳しい作戦だね。
あ、そうだ!
「それなら、一気に全部を解決できるやり方があるよ」
「にゃふ!?」
あ、復活クラリスだ。
ネコかな?
飼ってもいいかな。
「「「お願いします!」」」
「まったく、いきなり何なんですか……」
その日の実践魔法の時間、あたしとクラリスとスケさんの3人は、ミカエル先生に頭を下げた。
そう。
ケルちゃんほどの魔獣を封印できて、かつ学院の結界の探知を担い、いざという時にすべてを解決できる人物。
ミカエル先生に協力してもらうんだよ。
障害になるなら、初めからこっち側にしちゃえってね。
あたしたちが事情を説明すると、先生は嫌な顔をした。
「ね、ねえ。
やっぱりムリなんじゃない?
先生、すごい顔してるよ」
「え、ええ。
やはり、安全面からも難しいし、そんなことにかまけている暇などないとか言われそうですね」
クラリスとスケさんがこそこそ話している。
仲良いね、あんたたち。
でもね、あたしは知ってるよ。
まだまだ短い付き合いだけど、何となくミカエル先生のことは分かってきたつもりだよ。
きっと先生なら、こういう時……
「……それは、面白そうですね(ニヤリ)」
ほら、やっぱり。
「ほ、ほんとですか!?
やった!」
「やりましたね!」
うんうん、手を取り合ってはしゃいじゃって。
まぶしくて見てらんないよ。
それにしても、さすがはミカエル先生。
そういうとこ、良いと思うよ。
「……ミサ君?」
「はいっ!
すいません!」
そうだ。
この人、自分への悪口に敏感なんだったね。
もう魔法っていうか、エスパーなんじゃないかい?
「まあ、実際、カーク君もクレア君も、これからの王国騎士団には必要な存在となるでしょう。
お互い、それが鍛練の障害となるのなら、早めに解消してあげるのも教師の務めというものです」
「さっすが先生!」
「そこまでお考えだったとは」
いや、絶対、いま思い付いただけだね。
「……ミサ君?」
いや、なんでもないよ。
先生すごーい、うぇーい。
かくして、クレアのラブラブ大作戦は本番を迎えることとなったのさ。