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246.大団円?まー、ハピエンってことでいーんじゃないかね。

「あんたからのプロポーズだけどさ……」


「あ、ああ……」


「断る!」


「ふげぷぎぇっ!?」


 なんて?


「り、理由を、聞いても、いいか?」


 ベッドにいるあたしの横に戻ってきたシリウスはひどく動揺した様子だった。

 よろよろシリウス。よろウス。

 どうやら大ダメージのようだ。


「……」


 うーん。なんて言ったもんかね。


「い、いや、すまない。

 断られたのにズルズルと引き下がるのは良くないな。そんなのは男じゃない。うん、ここは潔く、だな、うん……」


 あん?


「あ、ごめん。そゆことやなくて」


「……ほえ?」


 やめな? すんごいバカみたいな顔だよ? あ、この人バカなんだった。


「えーと、その~……」


 いや、いざとなるとかなーりビビる。

 こやつはよくこんなこっ恥ずかしいことをいけしゃあしゃあと言えたもんだね。


「……ミサ?」


 ええい!

 ビビるな!

 男を見せたこのバカに女を見せつけたれ!


「結婚してくだしゃい!」


「……は?」


 うん。噛んだね。


「……え、と……ん? あ、と、理由を、聞いても、いいか?」


「あ、うん。そだよね。いきなりそれだけぶちこまれてもそうなるよね、うん」


 あかん。あたしテンパっとーる。

 落ち着けー。モチつけー。ぺったしぺったし。うし。落ち着いた。


「……つまりだね。

 あんたはこの1年、王様としてすんごい頑張ってて、端っこの村まで行っては自ら体を動かして復興を手伝ったり街道を整えたり体制を整えたり、ホント立派にやってたと思うのよ。

 で、しかもそんだけ忙しくしてるのに、ちゃんとあたしのトコにも頻繁に会いに来てくれてさ」


 ……ホント、いつ寝てんの? って心配になるぐらい……。


「し、知ってたのか」


 まーね。変なメイドさんのおかげもあるし、薄々察してはいたよ。

 いつもあたしに会いに来たときはバカみたいに元気にしてたけど、ちょっと痩せたかなとか、ちょっとクマがあるなとか……よく、見てたからね。


「んでさ。

 それに比べてあたしは修行してただけやん?」


「いや、ミサにはそれが何より重要なことだったから」


「ま、そなんだけど、なんか、頑張りであんたに負けた気がしたのよ」


「べつに勝負じゃないだろ」


「いーの。あたしゃ負けず嫌いだからね」


「……ミサらしいな」


 だしょ?


「だからさ。

 その、これぐらいはさ、あたしの方から言ってあげようかなって思ったわけよ」


 眩しいぐらいに頑張ってるあんたに、求婚するのはあたしの方なんだよ。

 それぐらい、あたしにも頑張らせてよ。

 それにね、ちょーっとばかし悔しいからね。自分に言い聞かせてやんのさ。


「あたしがあんたをもらってやるから。

 あたしが、あんたのことを世界中の誰より幸せにしてやるから、覚悟しときなってこと」


 ってね。


「おいおい」


 あ、なにちょっと引いてんのさ。

 えーい!

 こうなったらもう自棄(やけ)じゃい!


「とうっ!」


「ふむぐっ!?」


 あたしはバカ王の口に飛び込むみたいにして、ベッドから体を起こしてチューをした。

 シリウスは驚いてたけど、優しくあたしを受け止めてくれたよ。


「ぷあっ!」


「きゅ! 急に何をっ!?」


 唇を離すと、シリウスはひどく動揺した様子だった。

 ふふふ。やってやったぜ。


「あたしもあんたを愛してるってこと!

 だから、あたしと結婚してください!」


 うむ!

 今度は噛まずに言えた!


「……あ、と……えーと、よ、よろしくお願い、します?」


「うむ! えいっ!」


「わっ!」


 戸惑った様子のシリウスの胸に飛び込む。

 驚いてたけど、しっかりあたしの腰に手を回して抱き止めてくれた。


「改めて、これからよろしくね。あなた」


「お、おう。ミサミサ」


「……まずはその呼び方をやめようか」






「はい! 大成功しましたー!」





「……はい?」


 突然、窓から大音量の声。マイク?

 てか、この声って、スケさんじゃね?




「わーっ!!」


「やったー!!」


「バカ王おめでとー!」


「ミサ様カッコいい!!」




「うわっ!?」


 スケさんの無駄に明るい声のあとに、割れんばかりの大歓声。

 窓ガラスがホントに割れそうにビリビリしてる。


「どゆこと?」


「……いや、俺も知らん。

 これは、防音結界が張られていた?」


 シリウスと顔を見合わせてきょとん。

 どうやらこの人も分からないらしい。

 てか、防音結界? ……ホンマや。いや、寝起きにんなもんしてあっても気付かんわ。


 2人で嫌な予感がしつつも窓を開ける。


「うおっ!」


 窓が開いてあたしたちの顔が見えた途端、大歓声がさらに数倍に膨れ上がった。窓を開けたから結界が解除されたのもあるね。

 てか、さっきは結界してあってもそれをぶち抜く勢いの歓声だったってことかい?

 

 てか、うるさっ! 鼓膜バーストするわ!


「……なんこれ」


 診療所の窓の外にはさっきとほぼ同じ人数の大観衆が。


「いやー、無事に成功して良かったですねー!

 ミサさんが断った時はどうなることかと思いましたが、まさかの逆プロポーズ!

 さすがは我らがミサさんだ!!」


「……おい。スケさんや」


 空中浮遊しながらマイク握りしめて、なに楽しそうに実況しておる。


「え? てか、今の聞いてたの?

 なんで、どうやって?」


 隠しマイク?


「なに言ってるんですか。私は水属性ですよ。

 音や姿を伝達したり、逆に内側からの音を消したりなんて朝飯前です!」


「爽やかな笑顔だことっ!」


 えーと、それはつまり、外からの音はあたしたちに聞こえないようにしてて、その上で皆は静かにしてて、んで、あたしたちの今の会話はこの大観衆に丸聞こえだったってこと?


「プライバシーはいずこにっ!?」


「プライバシー? なんだそれは?」


「どこにもなかった!!」


 こんな時に異世界ギャップ出さんでええねん!


「ミサー! おめでとー!」


「カッコよかったぞー!」


「……クラリス。ジョン」


 楽しそうに笑っておられるわ……。


「ま、まったく。あ、あいつらには、困ったもの、だな~……はは」


「……ん?」


 隣のシリウスの様子がおかしい。

 なんか、白々しい。


 ……こいつ、もしかして……。


「……あーた。ひょっとしてホントは気付いてたのかい?」


「ギクッ!」


 それ、リアルに声に出す人いるんだ。


「……ふーん。はーん。へー。ほー。そーーなんだーーー」


「あ、いや、え、と、違くて、な」


 兄さん、しどろもどろですぜ。目が泳いでますぜ。


「……いーかい。始めに言っとくけど、あたしゃ嘘が大嫌いなんだ。

 あたしのための嘘? そんなのないね。

 夫婦なら、ホントに信頼しあってるなら、何も隠し立てする必要なんてないんだから」


「うぐっ……」


「……で?」


 じろり。


「……すいません。気付いてました」


「うむ。素直でよろしい」


 でも、気付いてたってことは、この人は始めからこれに加担してたわけじゃなさそうだね。

 

「……でもまあ、とりあえず1発ぶん殴らせてよ」


「なぜだっ!?」


「なんかムカつくから」


「輩だ! 輩がいるぞ!」


「自分の嫁捕まえて輩はないでしょ。せめてガキ大将にしとくれ」


「なぜ!?」


 なんなら歌ったろか? ボエ~! って。


「大丈夫。あんただけじゃないから。

 たぶん元凶であろうスケさんもだから」


「で、では、私はこの辺で。あとは各自解散……」


「逃がさないよ?」


 スケさんが察して逃げようとするから、この街全体を結界で覆った。

 闇属性の魔力をふんだんに使用した、魔導天使にも破れないような結界でござい。


「こんなところでそんな無駄遣いをっ!?」


「……『召喚』」


 逃げられないようにしてからの、魔獣の長全員集合。

 皆には魔獣の姿で出てもらった。危ないからスケさんみたいに空中浮遊でね。


「ちょ、ちょっと? ミサさん?」


 スケさん戦々恐々。


「おまえも行けやぁっ!!」


「ぷげもにゃっ!?」


 そんで、シリウスをぶん殴って窓から吹っ飛ばして、スケさんのもとへ。


「ヤッチマイナ」


 どっかのハリウッド女優みたいに、キルなビルの感じで。


『はーい! 丸焼きだね!』


『やれやれ。まあでも、ミサを取られるのはシャクだし、軽くひと噛みぐらいしようかしら』


『確かになのです。私も軽くひと睨みするのです』


「おい! 三大魔獣! シャレにならんぞ!」


 ケルちゃんたちったら、わざわざシリウスにだけ分かるように念話を飛ばすなんて分かってらっしゃる。


『なんかよく分からんが、楽しそうだから俺もやるぞ!』


『そうじゃな。腹ごなしに、ワシも軽くひと呑みしとくかの』


 うん。リヴァイさんのは生還不可能だよね?


『み、皆さんほどほどに。

 まあ、死んでしまってもすぐなら私が復活させられますが』


 あたしゃ、あーたが一番怖いよ、フェリス様。


「おい! 騎士団! 助けろ!」


 たまらず騎士団に助けを求めるバカ王。


「すんませーん。俺らは観衆に被害が出ないようにするので精一杯ですわー」


「裏切り者ー!」


 うんうん。見逃してあげる代わりにこっちの味方をしてくれる。ジョンさんたちは分かっておられる。

 あ、ちなみに観衆とシリウスたちとの間にもあたしが強力な結界を張ってるから、長の皆がはっちゃけても観てる人たちは問題ないのよ。

 頭上で繰り広げられるスペクタクルショー。素敵やん?


「さあ! 騒げー!」


「皆さん……」


「うげっ! ボス来たっ!」


「誰がボスですか」


 愚かなスケさんシリウスをやっちまおうって時に、ラスボスミカエル登場。

 これ、怒られるやーつ?


「……」


「ゴクリ……」


 と言ってみる。


「建物には被害が出ないように私が結界張っておくのでご心配なく」


 うん、満面の笑み。


「よっしゃ! いけー!」


 汚ねぇ花火咲かせろやー!!


「裏切り者ー!! ぎゃー!!」


「わー!!!」








 と、まあ、結局最後までドタバタでハチャメチャな感じで儀式兼お祭りは幕を閉じたわけよ。

 なんだかずっと慌ただしいけど、その方があたしたちっぽいだろ?


 きっと、毎年こんな感じでドタバタしながらやってくんだろうね。





「あははははっ! いけいけー!」


「く、くそっ! スケイル応戦するぞっ!

 このままじゃ死ぬっ!」


「してますよっ!」


「ちょ! さすがに無理っ……ギャー!!」


「ひゃーー!!」





 ま、人間バカみたいに笑ってるのが一番だーね。

 そんで、毎年こうやってバカ騒ぎできるように、1年間無事にしっかり国を支えていかないとね。


「ミ、ミサ! ヘ、ヘルプミー!」


 このバカの、妻として。


「ミサミサ~~っ!!」


 ……きっと、前の世界の旦那もそれでいいって言ってる気がするよ。

 だって、シリウスがそう言いそうだもん。

 似てんのよ、この人たち。


 バカで、変なとこ真面目で。

 そんで、とんでもなく優しくて。

 何よりも、真っ直ぐで。


「……ね? あたしのバカ旦那」


「なんの話だぁー!! わぁーーー!!!」


 こっちの話よ。

 あんたと、あたしのね。






ーーーーーーーーーー 完 ーーーーーーーーーー












 あ、ども。ミサです。

 本編はこれで完結なんだけど、エピローグとか、皆のちょっとしたお話とかを次にちょいと載せようと思うんよ。

 クラリスたんたちのアレコレとか、カイルたちの赤ちゃんに会いに行く話とか、皆気になるだろ? 気になるって言って。

 だから、もう何話か載せようと思うから、よかったらそれも見てってくれたら、あたしゃ嬉しいよ。


 とりあえずは、本編最後まで見てくれてありがとね。

 んじゃまた!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ひとまず完結、お疲れさまでした。 [気になる点] 毎年恒例のお祭りは、王様が噛まれて睨まれて飲まれて生き返るところまでがワンセットになるんですね、分かります。(笑) そしてミサのプロポーズ…
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