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242/252

242.なんかもう儀式始まったんだけど?

「あー、あー。マイクテスマイクテス……」


「……」


 スケさんが拡声魔導具の調子を確認する。

 ちなみにその確認の仕方を教えたのはあたしだよ。素直にそのままやってくれるスケさんがかわいい件。




「わー! わー!」


「ミサ様~!」


「シリウス陛下~!」


「スケイル様イケボ~!!」




 大歓声。

 すんごい人の数。

 見渡す限りの人ヒトひと。ひとひとぴっちゃんひとぴっちゃん……あ、あれはしとしとか。


 え? てか、どんな状況かって?

 お祭りのメインイベントである、リヴァイさんへの魔力喰えやボケ! の儀式がいよいよ始まるんだよ!



 え? あれ? ケルちゃんたちとのお話は? え? 1話飛ばした?


 そう思ったあなた。

 いや、違うんよ。

 ケルちゃんたちとの戯れの時間があんまりにも長くてね。ジョンさん&様子を見に来たスケさんに連行されちゃったのよ。

 ま、そのままケルちゃんたちもついてきたからお話はしたんだけどね。

 まあ、この地の魔獣たちとケンカしたりもしたけど、今では獲物を捧げに来るぐらい従順にしてやったぜ! みたいなほっこり? エピソードよ。ちょっと前にヤバめの突然変異魔獣が現れて、それをケルちゃんルーちゃんで退治したので完全に長として認められたみたい。

 なんにせよ、うまくいってるみたいで良かったよ。



 んで、控え室みたいなとこに連行されたあたしはメイドさんたちにあれこれいじられて、あっという間に素敵なメイクと素敵な神聖っぽいドレスに着替えさせられたわけ。


「ミサミサミサミサミサミサっ!!

 すごい綺麗だぞっ!!」


「どっから入ったボケがぁっ!!」


「どぼんとげちょっ!!」


 とまあ、そんなひとボケもありまして。

 瞬速で儀式の時間と相成ったわけなのです。



 その儀式。

 特設の祭壇があって、高さのあるそこから見渡す限りの人ヒトひとなのよ。

 ふっ。人がゴミのようだ。

 薙ぎ払えっ!


 んで、壇上にはあたしとシリウス。あとは進行役のスケさんだけ。

 あたしとシリウスは椅子に座ってるんだけどね、まるでステージみたいな祭壇なのよ。背景に暗幕とかがないステージ? あたしの後ろは晴れ渡る青空が広がってる。

 デザインはクラリスがノリノリでやってくれたみたい。悪知恵提供ミカエル。技術提供ハイドで。

 まだ空は明るいけど、宙に浮かぶ光源からのスポットライトでステージ上はひときわ照らされてる。

 てか、暑い。これ光魔法じゃなくて、もはや火魔法じゃね?


「……ミサ」


「あ、うん」


 スケさんが儀式の開始を告げる。


 大歓声のもと、シリウスが席をたってあたしに手を差し出す。

 あたしはその手を取ってゆっくりと立ち上がる。


 あたしたちが動き出すと、集まった観衆はしんと静まり返る。

 アルベルト王国。スノーフォレスト王国。リヴァイスシー王国。マウロ王国。

 そして、この新しい王国。

 各国から集まった大勢の人々。

 国や身分に関係なく、皆が一同に介してこっちを見てる。


「……あー」


 シリウスはあたしと一緒に拡声魔導具(めんどいから次からマイクね)の前まで行くと、マイクに向かってゆっくりと話し出した。



「今日は忙しいなか、集まってくれたことに感謝する」



 シリウスが話し出すと、観衆からは割れんばかりの歓声が。



「シリウス陛下カッコいいー!」


「イケメーン!」


「バカ陛下ー!」


「よっ! バカー!」



「おいっ! バカって言ったな! おまえら覚えたぞ!」


「反応しないっ」


「いてっ」



 ほろ酔いのヤジにいちいち反応するバカ王の頭をはたく。


「アレ。あんたんとこの騎士団でしょ。さすがにアルベルト王国の兵士さんたちは自重してるみたいだけど。

 そうやって賑やかしてくれるだけ愛されてる証拠じゃん。


『遠すぎる王より寄り添える王になりたい』


 まさに、あんたの理想通りじゃんか」


 言った騎士さんたちはちゃんと団長さんとジョンにしばかれてるし、統率は取れてても雰囲気がいいのは伝わってくるよ。


「……そうか。そうだな」


 あたしの言葉を噛み締めるように頷くと、シリウスは再びマイクに向かった。



「……今日は、記念すべき日だ。

 1年前のこの日。

 世界を滅びから救う方法が確立され、そして、それを今日ここで行うことができるのだから。

 今日の儀式は、そのはじめの一歩だ」



 帝国でのゴタゴタが終わったあと各国の民には、

『帝国の研究で、このままではいずれ世界は闇属性の魔力の暴走で滅びることが分かった。そして、唯一ミサ・クールベルト(あたし)がそれを何とかすることができる。帝国は(あやま)った方法を取ろうとした結果、連合軍によって討たれたが、年1回のこの祭りの儀式でそれを解決できる』

 って感じで説明してある。

 帝国は酷いことをしてはいたけど、世界を救うという名目のもとだった。その研究のおかげで世界の危機が分かった。だから帝国を必要以上に憎むなよ。

 ってことみたい。

 帝国の民はたぶん皆、帝国が悪いことをしてたって分かってるんだろうけど、その説明が自分たちが世界から悪い奴って目で見られないようにするための配慮なんだって分かってるみたいだから、皆もそういうことにすることに納得してくれたみたい。



「今回の儀式を執り行うのは一筋縄ではなかった。

 各国の協力。魔獣の長の協力。そして民たちの協力。

 そして、何よりもここにいるミサの頑張り。

 それら全てがなければ成し得なかった。

 まさに、世界が力を合わせて実現に至ったと言えよう」


「……」



 こうして大観衆の前で堂々と挨拶ができるなんて、ホントに立派になったもんだよ。

 そりゃ王族なんだから教育は受けてるし心得もあるんだろうけど、それでも各国の重鎮も集まるこの大観衆を前に堂々と話ができるってのはホントにすごいと思うよ。


 ……あたしの挨拶はなしにしてもらって良かった。うん、ホントに。

 巫女さん的な立場として、余計なことは喋らずに儀式をやった方が神聖感出るじゃん? みたいに言って何とか言いくるめて良かったよ。こんな超大観衆。緊張で噛みまくる自信しかないわ。



「……で、あるからして……」



『ミサ! まだか! ワシは腹が減ったぞ!』


「わっ!」


「おわぁっ! リヴァイさんっ!?」



 シリウスの挨拶がまだ途中だったけど、リヴァイさんが待ちきれずに壇上の奥に出現、乱入。

 皆ざわざわポカーンよ。



「あ、あれが、伝説のリヴァイアサン……」


「なんて大きさだ」



 リヴァイさんは魔獣の姿で登場。

 でっかい水龍の登場に皆びっくりよ。

 デカすぎるから壇上ってよりは、その後ろでうねうねしてる感じ。


「ちょ、リヴァイさん。まだ登場は早いって。皆まとめて召喚して、皆にオオーっ! って言わせる作戦だったやん!」


 てか、あたしが喚んでないのに勝手に自分を召喚させるとか力ずくなことを。余計にお腹減っちゃうよ。


『待てん待てん! そこのバカは話が長い! ワシはまた空腹で倒れるぞ!

 この日をどれだけ待ったと思っとる!』


「……子供か」


 たしかに、こりゃ校長先生ばりに長くなりそうだなとは思ったけど。

 スポットライトの暑さで、わき汗洪水確定だなとは思ったけど。

 脇のあいた涼しい系のドレスにしてもらって良かったわ。



「な、なんか叫んでるぞ?」


「お、怒ってるんじゃないよな?」



 あ、そか。

 魔獣時のリヴァイさんの声はあたしにしか聞こえないんだった。

 ここはあたしが通訳したげないと。



「あ、えーと」


「あ、おいっ」



 あたしはシリウスからマイクを奪って、リヴァイさんの主張を翻訳こんにゃくしたげる。


「リヴァイアサンは、『今日という日を迎えられたことを嬉しく思う。ともに世界を救うために、今だけは手を取り合おうぞ』って言ってます」


「なるほどー!」


「ミサ様は魔獣言語も分かるのか!」


「さすが!」


「かわいい!」


「おらと結婚してほしいべ!」


「ミサたんは俺のだー!」


『ワシはそんなこと言っとらんぞ!』


 皆の歓声を受けて、穏やかな微笑みで手を振る。

 一部、変なことを言ってる輩はシカトする。

 ついでに猛抗議するリヴァイさんもシカトする。

 あーた伝説の存在よ? そんなのが『腹へった』しか言わなかったら威厳もなにもないやん。ちゃんと『今だけは』って言ったからいいでしょ。魔獣は脅威であることに変わりはないってことを示さないとみたいだしね。


 ま、出てきちゃったもんは仕方ない。

 校長先生の長話はもう終わりにして、皆にご登場いただきましょ。


「……」


 あたしは静かにスッと右手を上に挙げた。

 皆がそれを受けて静かになる。


「おい! 俺の挨拶がまだ……」


『おい! ワシの言うことを正確に……』


 約2名ほどまだ騒いでるけどシカトシカト。


「……」


 ゆっくりと目を閉じる。

 そして少し間を空けてから、ゆっくりと目を開けて呟く。


「……『召喚』」


 あたしの言葉に応えるように、あたしの周りに4つの魔方陣が現れる。

 そして、そこから各国の魔獣の長たちが現れる。



「わー!」


「す、すごいっ!」


「これが各地の魔獣の長っ!?」



 観衆が驚いてるのが分かる。

 計算通り(ニヤリ)。

 皆には魔獣の姿で登場してもらった。

 その方がカッチョいいから。


『ふふーん』


『皆驚いてるわね』


『……ベタな演出なのです』


『そうか? 俺は好きだぞ?』


 アルちゃん? あとでお話しよっかー。


「紹介します!

 まずはこの国の双頭の1人!

 獄狼の王、ケルベロス!」


『わんわーん!』


 はいかわいい。


「そしてもう1人!

 即死の蜘蛛、ルーシア!」


『いえーい!』


 ルーちゃんのふたつ名って怖いよね。


「さらに、アルベルト王国の長。

 盲目の蛇、アルビナス!」


『じつはおでこにも怖い眼があるのでーす』


 アルちゃんだけは皆が言葉を理解してないの分かっててやってるよね。


「さらにさらに、スノーフォレスト王国の長。

 九尾の狐、タマモ!」


『俺もカッコいいふたつ名欲しいぞー!』


 え? じゃー、どん兵衛とか? ダメ?


「……そして、今回の儀式には参加できませんでしたが、マウロ王国の長。

 不死鳥、アナスタ……」


「ちょーっと待った~!!」


「ほへ!?」


 出産のために参加できなかったフェリス様ことアナスタシアの紹介をしようと思ったら、誰かに止められた。

 この声は……。



「ど、どこからの声だ?」


「上だ!」


「な、なんだあれはっ!?」


「鳥か?」


「ヒコーキか?」


「いや……鳥だな」



 ノリノリの観衆の皆さん。

 ヒコーキって言ったのミカエル先生でしょ。


「てか、鳥ってことは……」


『お待たせしました』


「フェ……アナスタシアっ!?」


「よっ」


「その背中にカイル!」


 空から現れたでっかい鳥は壇上に優雅に着地。その背中からカイルが降りてくる。

 てか、危なかった。フェリス様のことをフェリス様って呼んじゃうとこだった。

 皆の前では、魔獣モードのときはアナスタシアだった。

 ミカエル先生の氷のような視線が怖いけど見なかったことにしよ。


「え? え? ここにいるってことは……」


「ああ。無事にフェリスは出産を終えた」


「そなんだ! おめでとう!!」


「ああ。ありがとう」


 ん?


『え? てか、それですぐにここに来たの?

 産後間もないフェリス様の背中で?』


『大丈夫ですよ。私は魔獣な上に不死鳥ですから。

 人の姿での出産は大変でも、元の姿になればそんなの何でもありませんから』


『そなんだ。良かった良かった』


 なら良かった。

 カイルが産後すぐの妻に無理やり飛ばせて来るようなクズなのかと思ったわ。


『ま、何はともあれおめでとう』


『ありがとうございます。またミサさんには改めて紹介しますね』


『ぜひぜひ!』


「では、俺は下から見ているぞ」


「あ、へいへい。カイルもご苦労さん」


 カイルはすぐに空気を読んでステージを降りた。目立つだけ目立ってさっさと消える。さすがモテ男。


「では、改めて」


 気を取り直して、


「マウロ王国の長。

 不死鳥アナスタシア!」


 魔獣の長が全員一堂に介すると、皆の歓声は凄まじかった。

 世界が揺れてるみたい。


『おい! ワシの紹介はー!?』


 あ、忘れてた。

 リヴァイさんはフライングしたからいいでしょ。



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