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241.ハイド氏とヒナちゃんの恋の行く末は

「ミサさんっ!」


「あら。ヒナちゃんも」


 お次はリヴァイスシー王国の王太子であるハイド氏と再会。その隣にはメイドのヒナちゃんの姿も。


「久しぶりだねぇ、ふたりとも」


「そ、そうだね」


「会えて嬉しいです!」


 相変わらずちょいと陰キャ感のあるハイド氏と、快活でコミュ力抜群なヒナちゃん。

 対称的な2人だけど相性はいいみたいで。


「ふふふ。お手々繋いでデートかい? いいねぇ」


 しっかり恋人繋ぎでデートですよ。爆発しろい。


「そうなんです!」


「おおぅ」


 食い気味に繋いだ手を掲げるヒナちゃん。

 そないにアピールされると、それはそれであたしゃ圧倒されちまうよ。


「ようやく陛下が私たちの交際を正式に認めてくださったのです!」


「あら! そなんだ! おめでと!」


「はいっ!」


 うーむ。この輝かしい笑顔。守りたい。


「ハイドも、良かったね」


「……うん」


 ヒナちゃんは王子様付きのメイドでハイドの幼馴染みとはいえ、そんなに位の高い家の子じゃない。

 だからきっと、ここまで来るのにずいぶん苦労したはず。


「……頑張ったんだね、ヒナちゃん」


「はい! 家柄どうこうで文句言われるのが悔しくて、非の打ちごころがないぐらいに頑張りました!」


「ヒナちゃんイッケメーン」


「えへへ」


 照れ笑い、神かよ。


「ハイドもずいぶん頑張ったんじゃないかい?」


 そっちからもアプローチがないと王様はオチないよね。


「いや、俺はたいしたことはしてないよ。


『ヒナとの交際を認めないと王位を継がないぞ』とか、

『国を出るぞ』とか、

『そこで俺がどんな発明をしても止める奴はいないなぁ』とか、


 そんなことを毎日のように父上に向けて言い続けただけだよ」


「……そりゃ、パピィも災難だったね」


 そんなたいしたことをされたら、王様も毎夜うなされてたことだろうね。


「……父上は、最後に俺たちのことを認める時に、『おまえたちの頑張りはよく分かった。俺は初めから、おまえたち次第では認めるつもりだったんだ』と言っていた」


「……陛下は、私たちが交際するために真に努力するかを見定めていたのです」


「うん。我が父ながら、見事だよ」


「……そだねー」


 絶対ウソだね。

 大方、息子の嫌がらせ口撃に嫌気が差して、ホントはもう認めちゃいたいけど、素直に言うのは悔しいからそういうことにしようって思ったんだろうね。

 リヴァイスシー王国の王様も魔導天使のアザゼルさんも、なんかそんな頑固なとこある感じするもん。


「まあでも、それで晴れて俺たちは正式に交際、婚約することが決まったんだ」


「えへへ」


「……そか」


 まあ、本人たちが幸せそうだからいっか。

 てか、この2人の頑固さも似たようなもんだし、海の男と女は皆そんな感じなのかね。国民性として?


「あ、そういやリヴァイさんは?」


 今回のある意味主役と言っても過言ではない大事なポジションのお人。

 あたしの集めた闇属性の魔力を爆食してくれるじいちゃん。


「ああ。なんか、今日に備えてお腹を空かせておいたみたいなんだけど、空腹すぎて体調崩して休んでるよ」


「え、大丈夫なのかい?」


 食べ放題行く前のあたしじゃん。


「はい。今はアザゼルさんが少し魔力を差し上げていて、それで儀式までには復活させると」


「そ、そっか。ならいいけど」


 食べ放題が楽しみすぎて何も食べずにいたら気持ち悪くなっちゃって、ちょっと食べよっておにぎりとか食べてたら本番であんまり食べられなくなるみたいにならないといいけど。

 あたしはよくやるからさ、それ。


「ま、本番では食えなくても無理やり押し込むからいっか」


「そうだね。なんなら俺が作った杭打ち機で押し込んであげるよ」


「よろ~」


「ふ、ふたりともほどほどにね」


 かしこ~。






「そういえば、マウロの新王は今回は参加は難しそうなんだっけ?」


「ん? あー、そうだねー」


 話題は変わってマウロ王国のことに。

 マウロ王国ではカイルが正式に王位を継いで、もう新たな王様として国を治めてるんだ。もちろん、その隣にはフェリス様がいるよ。


「王妃様が間もなく出産とのことですからね。仕方ありません」


「んね。楽しみだね~」


 そうなのよ。

 フェリス様ったら、もうすぐ子供が生まれるのよ。

 1年前の帝国とのバトル時には既に妊娠してたのか、その騒動で盛り上がってデキたのかは分からんけど。魔獣さんだし。

 てか、ふたりの間に子供が生まれれば世界初の人間と魔獣とのハーフってことになるんだよね。


「男の子でしょうか、女の子でしょうか」


「あのカイル国王なら、どちらでも目一杯愛するだろうね」


「ふふふ、確かに」


 他の国の人たちはフェリス様の正体が魔獣の長である不死鳥アナスタシアであることを知らない。

 というか、マウロ王国の中でも知っている人はごくごく僅かだ。

 カイルの両親とか、カイルたちが本当に信用してる人しか知らないらしい。

 人間と魔獣とのハーフとか、どんな子が生まれるんだろうって思ったけど、ミカエル先生いわく、


『人化の術は肉体も何もかもを人間に変える術で、アナスタシアほどの術者なら常時人の姿でいることで完全に人間の状態になることが可能でしょう。

 そのため、生まれてくる子は少しだけ魔力の強い普通の人間の子でしょう』


 とのことだった。

 カイルたちは普通の人間の子供として育てるつもりだろうし、まあ心配はいらないでしょ。


 ……そういや、フェリス様は不死鳥ってことだけど、寿命のあるカイルと結婚して、子供を作って、自分はどうするつもりなんだろ。

 絶対にカイルの方が先に死ぬわけで、2人の子供もやっぱりフェリス様より先にいなくなっちゃうわけで。

 てか、そこまで来たらフェリス様だけそのままでいるのは変なのか。

 あれ? カイルってそういやフェリス様の血を飲んだから長生きなんだっけ?

 なんにせよ、皆がいなくなっても自分だけ生き残るってのは、やっぱり寂しいよね。

 あたしはどうやらおかげさまで、皆と同じぐらいの寿命でやっていけそうだけど、長生きの魔獣の中でも取り分け長生きなフェリス様は人間の中でどう生きていくんだろう。


「ミサ? 大丈夫?」


「急に黙り込んでしまって、どこか具合でも悪いんですか?」


「え?」


 あ、つい考え込んじゃってた。


「ううん。ちょっとボーッとしてただけ。

 いっぱい食べ過ぎたからさ」


「なんだ」


「ふふ。ミサさんらしいですね」


「だしょ?」


 ま、今度フェリス様にそれとなく聞いてみよかな。









「ふう」


 カイルたちとはそこで別れた。

 どうやらリヴァイさんの様子を見てくるらしい。しばらくデートしてから。


「ミサミサミサミサミサっ!!」


「だからおまえはまだ早いっつーのっ!」


「ぷぎゃもねっ!!」


 んで、再び現れたバカを一蹴して、またしばらく歩いてると。


「ミサ発見!!」


「やっと見つけたわっ!!」


「あ! ケルちゃん! ルーちゃん!!」


 愛しのケルちゃんルーちゃんコンビの登場!


「2人とも久しぶりなのです」


「アル! 1年もミサを独り占めしてズルいわよ!」


「そーだそーだ!」


 あ、そうそう。さっきまでサイレントモブモードになってたけど、ちゃんとジョンとアルちゃんもいるよ。あたしがまたやらかさないようにバッチリ見張っとる。


「2人も魔獣たちにちゃんと役割を振って自由な時間を作ればいいのです。

 仕事をちゃんとすればミサに会う時間は十分作れるのです」


「う~。それが難しいんだよ~」


「そうよ。あいつら、なかなか言う通りに出来ないんだもの」


「それも長の役目なのです」


 アルベルト王国では魔獣の皆さんにバッチリ役目を与えて、ほとんどあたしと一緒にいたアルちゃんと違って、ケルちゃんたちはだいぶ苦戦してるみたい。

 実際、2人はこの1年間、ほとんどあたしと会えてない。

 ま、ちゃんと自分のやるべき仕事をやってるのは偉いよね。


「ミサー!」


「てーい!」


「わー!!」


 ケルちゃんたちは我慢の限界を迎えたみたいで、あたしの胸に飛び込んできた。


「わーい! 久しぶりのミサだー!」


「温かいわー! これよー! この匂いよー!」


「あはははっ! やめれ! ぐりぐりしないで。くすぐったい!」


 2人はあたしにくっつくなり、頭ぐりぐりでギューギュー攻撃を仕掛けてきた。


「ええい! お返しじゃー! ギューギュー!!」


「わー!」


「きゃー!」


「私も! なのですっ!」


 それを見てたアルちゃんがたまらず飛び込んでくる。


「うっしゃ! 皆こいっ!」


 まとめてギューギューじゃっ!


「俺様もっ!」


「貴様は違うわっ!!」


「ふぎゃぽんげぇっ!!」


 どっかのバカは撃退して、と。

 あ、2人とのお話はこのギューギュー大会が終わるまで待っててね。





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