24.クレア嬢の悩み
「はっはっはっはっ！
ミサ・フォン・クールベルトぉ～～！！」
「お昼ごはんぐらいゆっくり食べさせとくれよ！」
「ぐはぁっ！」
やれやれ。
仲直りした途端にこれさね。
まあでも、グーパン１発でおとなしく引き下がったからまだいいか。
ん？
というか、仲直りするほどの仲でもないか。
うん。
きっとそうだね。
「ふふふふふ」
「ん？
どうしたんだい？
クラリス。にやにや変な笑い方して」
かわいいじゃないか。
「ミサったら、あんだけ言ってたのに、やっぱりお兄様と仲直りしたのね」
「なっ！ちがっ！」
「ふふふ。いいのいいの。
私は嬉しいよ～」
「その笑い方やめなっ！
あたしと王子はそもそも仲直りなんかする仲じゃないんだよ！」
「もー、照れなくてもいーんだよー」
「照れてない！！」
ちょっと！
ジョンにクレア！
この恐ろしい子をどうにかしてちょうだいよ！
そんな懇願の目線を２人に送ったら、
「ふ～！
食った食った！
ん？どしたん？」
ジョンは話をまったく聞いてなかった。
ジョン。
あんたは相変わらずだね。
あんたはそれでいいよ。
「クレア？」
もう１人のクレアはと言うと、
「ん？
ああ、すまん。
聞いていなかった。
なんだ？」
何やら考え事をしていたようで、上の空だった。
「いや、別にいいんだ。
たいした話じゃないから」
「そうか。
すまないな」
そう言って、再び思慮にふけるクレア。
なんだか様子がおかしいね。
「クレア？
何かあったのかい？
あたしで良ければ話聞くよ？」
「ん？ああ」
アンニュイなクレアもいいけど、あたしはやっぱりクールでカッコいいクレアが好きだよ。
「……実はな、」
「カクさんと気まずくなってる？」
クレアはぽつりぽつりと話してくれた。
「ああ。
先日、実践武術の授業でカーク先輩と手合わせをしていたんだが、私が地面のぬかるみで足を滑らせてしまってね。
ちょうどそこに、カーク先輩が斬りつけをしようと、こちらに手を向かわせて来ててね。
その、カーク先輩の手が私の胸に当たってしまったんだよ」
「へ？」
「それで、カーク先輩はものすごい勢いで謝ってくれたし、別に稽古中のことだから私は気にしてないんだが、それ以来、どうもカーク先輩の態度がよそよそしくてね」
……カクさん。
純情にもほどがあるよ。
「まったく、困ったものですよね」
「わっ！
スケさん！？」
いつの間にか、クレアの後ろにスケさんが現れて、うんうんと頷いていた。
神出鬼没はミカエル先生だけにしといておくれ。
「その一件以来、カークのヤツは女性と手合わせするのを躊躇うようになってしまって。
戦場では男も女もないからと、幼い頃から男女問わずに全力で手合わせに臨むべしと教えられてきたのに、クレアさんに女を感じてしまって戸惑っているのでしょうね」
「そっかー。
でも、クレア的にはその方が良かったんじゃないの？」
「えっ！？」
あたしがそう言うと、心底驚いた顔をするクレア。
「ミサっ！
クレアは、クレアがカークのことを大好きだってことは誰にもバレてないって思ってるんだから言っちゃダメだよ！」
「あ、そうだったのかい？」
「え？え？」
クラリス、思いっきり言ってるよ？
「あ、そーなの？
てっきり、いつもカーク先輩は私のだからおまえら手を出すなよばりにアピールしてるんだと思ってた」
「ええっ！？」
ジョン、それは追い打ちだよ。
「まあまあ、本人は無自覚に猛アタックしてるし、されてるカークはまったく気付いていないのです。
周りがどうこう言っても仕方ないですよ」
「ひ、ひえ～、スケイル先輩まで！」
うん。
スケさん、とどめ差したね。
「まあ、とにかく、これを機に、カクさんにクレアの想いに気付いてもらうのもアリかもね」
「そ、そんなっ！」
「私としても、カークにいつまでもうじうじしていられたら困ります。
私が面倒を見るのはアレ１人で十分です」
ん？
スケさん。アレって、アレのこと？
「よーし！そうと決まれば、クレアのラブラブ大作戦スタートよ！」
「えー！そんな名前かよー！」
なんだか、クラリスとジョンも楽しそうに盛り上がってるけど。
「クレア。
クレアはどうしたいんだい？」
結局は、クレアの気持ち次第だよ。
「……よし、やろう。
らぶらぶ大作戦とやら、必ず遂行してみせよう！」
……軍の命令じゃないんだよ？
