表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

224/252

224.しか勝たん!からの、大詰めよ!

「キ~ッス! キ~ッス!」


「男を見せろ! シリウス!!」


「ぬぐぐぐぐっ!!」


 シリアスな展開から一転、なぜか突然にお目覚めロマンスキスを周囲から盛大に要求されたシリウスは、追い詰められながら真っ赤な顔で徐々にミサに顔を近付けていた。

 その一方、あちら側では……、









「いやいやいやいやいやいやいやいやいやっ!! なぜ? なんで!? ほわいっ!?」


 いや、さっきまで真面目にやってたやん!

 シリアスで緊迫したシーンやってたやん!

 それがなんで、何がどうしてどうなってこうなった!?


「てか、あんたも顔真っ赤にしながら、なに満更でもないような顔してどんどん近付いてきてんの!?」


 あかんから!

 寝てるいたいけな美少女にチューとか、完全にアウトだから!

 あんなん許されるの古代の童話オンリーだから!


「いや、近いわっ!」


 少しずつ、でも確実に近付いてくるバカ王子の顔。

 近くで見るとやっぱそれなりに整った……じゃいわ! 流されるなあたし! これはノリというの名の犯罪だ! 立ち向かえ!


「キ~ッス! キ~ッス!」


「あん?」


 ツユちゃん。あーたも一緒になって盛り上がっ……ん?


「ふふふ。さすがはカイル王子。

 見事に私の提案にノッてくれましたね。

 これですよ。やっぱり物語の最後はこうじゃないと……」


 ……ほーん。


「……ツ~ユちゃん?」


「ん? ふひゃっ!?」


「なーる。全部あーたの仕業なわけかー。

 あたしの夢の中に現れるぐらいだもんねー。

 バラキエルさんの監視が緩んだ瞬間を狙ってカイルに接触するなんて、きっとツユちゃんなら簡単なんだろーねー」


「い、今までにない洞察力ですねー。あははー」


 女はね。こういう時の勘は神様にだって負けないんだよ~。


「ツユちゃ~ん。覚悟はいいかい?」


「え? ちょっ、ミサさん? お顔がとんでもなく恐ろ……え? 私、何されちゃうのかなー……あはははー……あー、えーと……あでゅっ!」


「あ、待てっ!」


 ツユちゃんにワキワキした両手を伸ばそうとしたら、シュンって突然姿を消しやがった。

 逃げやがったな、あんにゃろ。



『キーッス! キーッス!』



「あ! あっちに逃げやがった!」


 あたしの夢の中から消えたツユちゃんはさりげなく現実世界の皆のとこに合流して、ケルちゃんとかジョンとかと一緒にバカ王子を盛り立ててやがるんよ。

 バラキエルさんに閉じ込められてるって言ってたのに、きっとホントは普通に出てこれたんよ、あれ。くそー。


「て! そんな場合じゃない!」


 ツユちゃんに気を取られてたら、いつの間にかバカ王子の顔面がすぐ目の前まで来てた!

 てか、ツユちゃん。なんつーアングルで画面固定して消えたのよ!

 めちゃくちゃ寝てるあたし目線やん! 寝てて目をつぶってるはずなのに、目ガン開きでキスされるの待ってるみたいになっとるやん!

 

「いや、さすがにキツいて! どんだけイケメンでもそんだけ唇突き出して迫られたらさすがにキツいて!」


 なんか違うやん!

 こういうのってもっとロマンティックな浮かれモードやん!

 胸がキュルルンなはずやん!

 なんこれ!

 眠り姫視点だとこんなムードないん? あ、てか眠ってるからホントは分かんないのか。いや、違う。そうじゃない。てか、そんな場合じゃない。あかん。パニクっとる。

 いや、違うよ?

 べつにチュー自体にテンパってるってわけでもないんよ?

 ほらあれ、あたしこれでも前は既婚者だったし? そういうのは、ねえ。そりゃ人並みには、ねえ?

 いや、そういうことやなくて!

 今のあたしはうら若き乙女なわけで! その純粋な唇は守るべきエデンなわけで!


「って、ゆーてる間にバカが来るぅーー!!」


 あかん!

 もう、もう、ヤツの! バカの唇がっ! 意外と柔らかそ……じゃない!

 ここはもう世界もあたしもぶっ壊してでも自力で無理やり起きるしかーーーっ!!


「ひっ! やめっ! ちょっ、待っ!

 待っっっっ!!」














「……ミサ。ウェイクアッ……」


「待てやコラーーっ!!」


「ふげぶっっっ!!!」


「ん?」


 あれ?

 これって……。


「あ、起きた!」


「え? してなくない?」


「ちっ」


 いや、いま舌打ちしたの誰よっ!


「え? てか、起きれた! セーフ?

 ひゃっほーい!!」


 でもなんで?

 あたし多分ギリギリ自力で無理やり起きてないよ?


「ミサ……」


「ん?」


 不思議に思ってると後ろから声をかけられた。その懐かしい声に振り返ると、


「ミサの純潔は私が守るわ」


「クラリス!!」


 愛しのクラリスたんがものすごく頼もしい顔で出迎えてくれた。


「そっか。クラリスがあたしを起こしてくれたんだね!」


「もちろん! あんなクソバカにミサの唇を奪わせたりなんかしないわ!」


 そのクソバカは貴女のお兄様なんだけどね。でも激しく同意だよ!


「ありがとー! ホントに助かったよー!」


 ぎゅーっ!!


「きゃー!」


 きゃーって言いながらも嬉しいくせにー!


「もー、むしろクラリスにあげるわ! ちゅっちゅー!」


「ひゃーっ!」


 やっぱクラリスたんしか勝たんわ!





「おーい。シリウス。大丈夫か?」


 あ、お兄ちゃん王子。

 あ、てか、あたし、勢いで王子(バカ)を思いっきりぶん殴っちゃったね。


「……ぐ」


 あ、生きてた?


「……なんか、むしろもう、懐かしい……ぐふ」


 あ、死んだ。


 うーむ。たしかに入学式でクソバカ野郎を全力展開してたアレをぶん殴った時ばりの全力グーパンだったね。

 ま、アレもあの時よりはだいぶマシにはなったけど。

 でも、乙女の唇を奪おうとしたのは許さん。一生許さん。




「ミサさん。目覚めたばかりで申し訳ないですが、戯れはそのあたりにして、そろそろ幕引きといきましょう」


「……先生」


 ひとしきり皆でわーわー騒いだあと、ミカエル先生が場を取り仕切るように声をかけてきた。

 あたしゃ、あんたがけっこうノリノリだったのも知ってるんだからね? あとで覚えてなよ?

 あ、ちなみにツユちゃんはいつの間にか消えてたよ。あんにゃろ。今度会ったら全力で揉みしだいてやるんだからね。


 ま、今はそんなことより。


「……バラキエルさん」


「……くっ」


「ちっ!」


 ミカエル先生の魔法で拘束されてるバラキエルさんと皇帝さんのもとへ。

 2人はとんでもなく悔しそうな目で睨み付けてきた。先生が拘束してないと今にも噛みついてきそう。


 でもね。

 そんな怖い顔しても、あたしはあんたたちを許すつもりなんてないんだよ。

 むしろ、あたしを怒らせたんだってことを思い知らせてやらないとね。


「……」


 あたしは睨み付けてくるバラキエルさんたちに負けないように2人を見下ろしながら、手を地面にかざした。


「……《召喚》」


 そして、そう唱えると、あたしの足元に魔方陣が浮かび上がって、そこから皆が呼び掛けに応じて姿を現す。


『ミサ!』


『ミサなのです!』


「アルちゃん! ルーちゃん!」


 2人ともさっき念話で話した通り、ちゃんと魔獣の姿になってくれてる。部屋が壊れないように人型サイズだけど。ケルちゃんも2人に合わせて狼さんバージョンに。


『おーう。ようやくか』


『久しいな。娘』


「タマちゃんもリヴァイさんもありがと」


 狐と水龍な2人も、このサイズ感だとちょっとカワイイね。


「カイルっ!!」


「フェリスっ!!」


 フェリス様は現れた途端、カイルのもとへ。

 うんうん。無事に再会できてホント良かった。

 このシーンを見たかったから、フェリス様だけは人間バージョンで来てもらったのよ。

 

 ま、そちらはそちらで感動の再会をゆっくり味わっててよ。


「……さて」


「くっ……」


「ひっ!」


 魔獣の長さんたちを従えて再びバラキエルさんたちに向き直れば、皇帝さんはすっかり怯えた様子だった。バラキエルさんも、悔しそうにしながらも少しビビってるみたい。


「……帝国の人たちを機械兵に変えて、あたしとサリエルさんを殺そうとして、皆に酷いことして、ホント、いろいろやってくれたね」


 あのね。シリアスなシーンなんだけどね。一回言ってみたかったセリフがあるんだよ。

 ごめんね。ちょっとどうしても言いたいから言わせてくれるかい?


「……さあ、おまえの罪を数えろ」


 ……うん。そっちかって思ったでしょ? 『月に代わって……』的な方かと思ったでしょ? 違うんよ。あたしはこっち派なのよ。

 さ、もう満足したからちゃんとやるよ。


「……せ」


「あん?」


「……殺すがいい。貴様が俺を殺すことで、貴様はやはり世界を滅ぼす権化であることが証明されるのだ!」


「……そうなん?」


 初耳やで。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ