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2.娘になったのよ

 そして、数年後。

 あたしは16歳になっていた。


 あのあと、あたしはあのご夫婦に引き取られ、養女となった。

 どうやら、あたしは異世界転生とやらをしてしまったらしい。

 てっきり、死んだら亡き夫の所に行けるかと思ってたのに、神様ってのはひどい人だよ、まったく。

 でもまあ、なってしまったものはしょうがない。

 せっかくいただいた人生だ。

 楽しんでかなきゃね!


 あたしの両親になったご夫婦は本当に良い人たちで、養女となったあたしに本当に良くしてくれてる。

 あたしは記憶喪失ってことにしておいた。

 実際、この姿になるまでの記憶はないんだから、嘘ってわけでもないだろう?


 あと、どうやら両親はたいそうな身分のお方らしい。

 たしか、侯爵家?とかって言ってたかな。

 だから、あたしみたいなのを引き取るだけの余裕があったんだろうね。

 それにしても、こんな素性も分からないあたしを引き取るなんて、人が良すぎやしないかね。

 さすがにちょっと心配になるよ。

 最初は、あたしをどっかに売り飛ばそうとしてるのかと思ったけど、そんなこともなかった。

 だって、


「女の子が欲しかったのよ~」


 って言って、お母様がこれでもかと可愛がってくれるんだから。

 ちょっと甘やかしすぎなんじゃないかと思うほどに何でも買ってくれるのよ。

 で、おじさま、もといお父様が止めてくれるかと思いきや、


「いや~、やっぱり娘は可愛いなぁ」


 こっちもデレデレなのよ。

 むしろ、お父様の方が甘いぐらいだわ。

 でもまあ、正直、自分でも自分の姿は可愛いと思うわ。

 まるでお人形さんみたいって言葉は、この子のためにあるんじゃないかと思うわよ。

 まあ、自分なんだけどね。

 腰の下まである長いさらさらの金髪。

 澄みわたる空にきらきら輝く海のような瞳。

 すっと伸びた鼻筋。

 穏やかな微笑みが似合う口。

 すらっと伸びた手足に、なかなかなボリュームのある胸元。

 それでいてスリムなその姿は、すれ違う使用人たちも息を飲むほどよ。

 自分でも何回、素っ裸で鏡の前でポージングしたことか。

 今ではようやくそんな自分にも慣れて、今は簡単なワンピースを着て、自室のテーブルで書類を確認している。


「ミサ!」


「ロベルトお兄様」


 回想に浸っていると、部屋をノックして、金髪イケメンが入ってきた。

 ちなみに、あたしの名前はミサにした。

 あんまり前の名前と違うと分からなくなっちゃうから、みさえに近い名前にしたんだ。

 で、この人はあたしを引き取ってくれた両親の実子で、あたしの兄に当たる、ロベルトお兄様だ。

 歳は、20ぐらいだっけ?

 正直、元のあたしの息子ぐらいの年齢の子をお兄様なんて呼ぶのには抵抗があったけど、数年も経てば慣れたわね。


「ミサ。

いよいよ明日から学校だな」


 そう。

 あたしは数年間、この世界に関しての勉強を重ね、本格的に学校でも学ぶことにしたのだ。

 一応、前世?では、最低限の知識はあったけど、この世界のことに関してはさっぱりだったから、ちゃんとしたとこで教えてもらった方がいいってことになってね。

 先日、学校への入学試験にも無事に合格できたので、この春から晴れて、高等学院の生徒になれるのだ。


「ミサ。

1人で大丈夫か?

俺は心配だよ。

うまくやれるかな。

友達できるかな。

イジメられたりしたら、俺がたたっ切ってやるから、すぐに言うんだぞ!」


 もう分かっただろうが、この息子も、無事に両親の資質を引き継いだみたいで、あたしのことをものすごく可愛がってくれる。

 シスコンってやつかね。

 ちょっと心配になるけど、両親もそうだから、何とも言えないね。

 それに、お兄様は騎士団の一員だから、何かあれば本当に相手をたたっ切ってしまいそうで怖いんだよ。


 あたしたちはその後、両親に呼ばれてリビングのような所に行った。

 この屋敷は大きすぎて、正直、まだ部屋の配置を理解できてない。

 まあ、あたしが方向音痴なのもあるんだけど。


 お兄様と一緒に部屋に着くと、座るように促されたので、お兄様と並んで腰をかける。


「ミサ。

入学の準備はどうだい?」


 向かいのソファーに、お母様と並んで座るお父様が声を掛けてくる。


「うん。

おかげさまで、バッチリだねえ。

これもひとえに、お父様とお母様とお兄様のおかげさね。

ほんとに、ありがとねえ」


 あたしがそう言うと、お父様はうんうんと嬉しそうに頷く。


「お母様?」


 1人深刻そうな顔をするお母様に声を掛ける。


「ミサ、あなた、そのしゃべり方は、ここだけにしなさいね」


「あ、そ、そうだ、でしたわね。

ダイジョウブデスワヨ。

しっかりやりマスワ」


 いけないいけない。

 さんざん注意されてたのに、どうしても油断すると前のしゃべり方が出ちゃうわね。

 お母様はお優しいけど、このことに関してだけは厳しく目を光らせてるから、気を付けないとね。

 お母様みたいなタイプは一番怒らせたらいけないからね。

 前の姿なら、きっと良い友達として、あたしと仲良くなれたんだけどね。




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― 新着の感想 ―
[良い点] めっちゃ美少女なのに喋り方はおばさん笑 このギャップに萌えて……いいのか!?(゜∀゜)
2022/01/05 19:02 退会済み
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