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183.カイル発見!?

「いや、どうすんの!? こちとら決死の思いで崖から身を投げたってのに、さっさとその時の魔力使っちゃって!」


 いや、きっと大丈夫だと思っててもけっこう勇気いるのよ!

 え? いや、もっかい跳べとかヤだからね!


「……面目ない」


「あーもう。じゃあなに? もっかいフェリス様に魔力あげればいいの?」


 さっきのでけっこう魔力放出しちゃったからそんなにたくさんはあげられないんだけど。


「……そ、そうなんですが、そうなると私はミサさんを認めたことに……」


「あー! うっさい! めんどい!」


「えぇっ……」


「そんなことをグダグダ言ってても仕方ないでしょ!

 フェリス様はカイルを助けたくないの!?」


「そ、それは、助けたい、ですよ、もちろん……」


 ここまできてまだゴニョゴニョ言ってるフェリス様にだんだんムカついてきたあたしは遠慮することをやめましたとさ。


「だったら四の五の言わずに魔力を受け取る! そして使う! カイルを探す! 助けに行く! おけ!?」


「お、おけー……? って、ひゃっ!」


 首をかしげるフェリス様に構わず、あたしはフェリス様の手を両手で包むように握った。


「オッケーだね! じゃーいくよ!」


「ええっ!? ちょ、ちょっと待っ……!」


「受け取ったらすぐ使っちゃえばいーから! キャッチアンドリリース! そしたらノーカン! 一瞬! 一瞬!」


 あたしはもう勢いで押し通すことにしましたとさ。


「……お嬢様。なんだか街のナンパ男のようですよ」


 フィーナさんは黙らっしゃい!


「そ、そんな簡単なものでは……」


「はいいくよどーん!」


「え? ひゃーっ!!」


 そして、あたしは手を伝って思いっきり魔力を送った。

 リヴァイさんの時もそうだったけど、大量の魔力を外に出すのは難しくても何かにこめたりするのは得意みたい。その要領であたしは今の全力の魔力をフェリス様に送った。


「……ぅ、わっ! す、すごい魔力っ」


「はいっ! 魔法使うっ!」


「あ、は、はいっ!」


 あたしが急かすと、フェリス様は目を閉じて呪文みたいのを唱え始めた。


「……んっ!」


 そして、カッと目を見開くと、薄紫の瞳が遠くを見つめてるのが分かった。


「……わかりました。カイルはやはり帝国に。……王都の地下深く。王城から根広く掘られた地下空間の一室に捕らえられています。

 ……サリエルも一緒。ふたりとも、無事なようです」


「す、すごい。そこまで分かるのですね」


 フィーナがフェリス様の魔法に驚いてる。

 たぶん帝国には結界が張られてて、ウチとこのお兄ちゃん王子とかスノーフォレストのサルサルさんとかの固有魔法でも結界の中を見通せないみたい。

 でも、フェリス様の固有魔法ならそんなのお構いなしに調べられるんだね。


「……地下、空間は、かなり複雑に、入り組んで、ます。あとは詳細な、地図さえ、あれば……あっ!」


「フェリス様!?」


 だんだん視るのが苦しそうになってきたと思ったら、フェリス様は何かに弾かれるように目を閉じた。

 フィーナがよろめくフェリス様を支える。


「……気付かれました。私の追跡魔法を察知して妨害できるとなると魔導天使のバラキエルでしょう」


 フェリス様はそう言うと、再びおっきな鳥さんの姿になった。


『急ぎましょう。マウロ国王と、アルベルト王国にも報告を。気付かれた以上、あとはスピード勝負です。

 乗ってください。まずはここから出ます』


「あ、はいはい」


 なんかよくわかんないけど急がないとらしい。

 あたしとフィーナは慌ててフェリス様の背中に乗る。


「あ、そだ。グラストさんも連れてかなきゃ」


 すっかり忘れてたよ。

 このおっさん。もうずっと気絶してるけど大丈夫なのかね。


「え? てか重っ! フェリス様、ちょっと手伝って」


 フェリス様から降りてフィーナとふたりで持ち上げようとしたけど、無駄に重厚な鎧を着たおっさんな思ったよりも重かった。


『……彼は、置いていきます』


「え!?」


 フェリス様は手伝う素振りを見せずにそれだけ伝えてきた。


『彼が私の正体を知った以上、生かしてはおけません。私が魔獣の長だということが広まれば私を利用しようとする者が必ず現れます。最悪、私が原因で内紛も起こるでしょう。

 カイルのためにも、そんなことをするわけにはいきません。

 彼にはここでこのまま野垂れ死んでもらいます。

 上に出たあとも王都の近くまでは私が運びますが、そこからは人の姿に戻って都に入ります。あなたの連れたちにはその辺りで待たせてますので』


「そ、そんな……」


「……事情が事情だけに、仕方ないかもしれませんね」


「フィーナまで……」


 でも、でも。グラストさんはちょっとあれだけど。


「でも、この人にも、家族がいるんだよ?」


『……』


 グラストさんが本音で大好きな奥さんとかわいい2人の子供。


「そんな家族を残して、グラストさんをここで殺すのかい?」


『……で、ですが、それでも、その先に犠牲になるであろう大勢の命には、変えられません』


 フェリス様は動揺してるみたいだったけど、それでも考えは変わらないみたいだった。


「……なにか、解決方法があれば良いのですが……」


 解決方法ね。

 グラストさんを殺さずに、かつフェリス様のことを誰かに。たとえ王に聞かれても話さないようにするには……。


「あ。切り札」


「お嬢様?」


 あたしは胸元をゴソコソすると、小ぶりの水晶玉を取り出した。

 ビー玉ぐらいの大きさのそれは紫色の魔力が中で渦巻いてた。


「お嬢様、それは?」


 ここに来る前にミカエル先生に渡された切り札。

 本当にどうしようもなくなった時にだけ使うように言われていたもの。崖から落ちるあたしを簡単に助けられるであろう切り札。


 いつ使うのよ?

 いまでしょ!


 あたしはその水晶玉に魔力をこめて発動させた。


「助けて! ドラ○も~んっ!」


 あたしが叫ぶと同時に水晶玉が大きく光る。

 いや、べつに叫ばなくてもいいんだけど、なんかそんな雰囲気じゃん?


「……なんですか、その謎の名前は」


 光のなかから呆れたような声が聞こえる。

 青い猫型ロボッ……じゃなくて、青い長い髪の、イケメン先生。


「ミ、ミカエル様っ!?」


『なっ!』


 そう。

 現れたのは最強の切り札。

 無敵超人ミカエル先生だよ!




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