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157.もが!もがもがもーが!

「もが! もがもがもが! もぐもぐ!」


「もぐもーぐ! もぐもぐ!」


「……ミサもケルも、食べながらだから何言ってるかぜんぜん分からないのです」


 ごめんよ、アルちゃん。だってお腹減ってたからさ。

 あ、シチューもある。わーい。


「……それにしても、さっきのクレア。少し様子が変だったな」


 ジョンはもうご飯食べたみたいで、コーヒーを飲みながらクレアが出ていった方を心配そうに見てた。


「あー、それぶぁ、あたひぃもふぉもったぁよ」


「……あ、うん。食べてからでいーや」


 あ、ごめんね。すぐ終わるからね。


「……クレアさんがどうしましたか?」


「ふぁ、スケふぁんっ!」


 食堂でご飯食べてたら、スケさんがやってきた。

 なんか会うの久しぶりだねー。


「いや、さっきですね……」


 ジョンがさっきのやり取りをスケさんに話してくれる。

 ちょっと待ってね。もーちょいで食べ終わるから。あとデザート3周したらね。


「……なるほど。少し遅かったですかね」


 スケさんはアゴに手を当てて考え始めた。

 何やら心当たりがあるようだね。


「……彼女のことは私に任せてください。皆さんの話なら聞いています。皆さんはまずはそちらを」


「わかったよ。お願いね~」


 スケさんはそれだけ言うと、軽くお辞儀したらクレアが出ていった方に足早に歩いていっちゃった。

 ちょっとよく分かんないけど、スケさんに任せとけば平気でしょ。


「ミサ。今日は一回家に帰らずに夜までここにいるんだろ?」


「ん? そーだね。また来るのもめんどいし、放課後はサリエルさんが来るまで先生のとこにでもいようかなって」


 スケさんを見送ると、ジョンが尋ねてきた。


「そうか。なら、俺は夜に合流するよ。アルビナスたちはミサについてるんだろ?」


「ん。当然なのです」


「そーだね!」


「……ならいい。くれぐれも1人にはなるなよ」


「? うん。わかったよ」


 ジョンはジョンで何か考えがあるのかね。


「……ミサ」


「んー?」


「ゼン、殿下は……」


「え?」


「……いや、なんでもない。また放課後」


「え? あ、うん」


 ジョンは何か言いかけてたけど、途中でやめて出ていっちゃった。

 お兄ちゃん王子について何か言おうとしてたみたいだけど。


「……」


「アルちゃん? どったの?」


 その様子を見てたアルちゃんが席を立った。


「ちょっと。すぐ戻るのです」


「うん?」


 アルちゃんはそう言うと食堂のおばちゃんの方へと歩いていき、何やらおばちゃんと二言三言話したら戻ってきた。


「……」


「どったの? もうご飯なかったの?」


 アルちゃんもお腹減ったのかね?

 まだここにいっぱいあるよ?


「……ううん。ちょっと……。まあ、でも、きっと大丈夫なのです」


「そ、そう?」


 なんかあるみたいだけど、まあ大丈夫ならいっか。

 















「クレア!」


「……スケイル先輩?」


 食堂を出たスケイルはようやくクレアに追い付いた。

 クレアは廊下の隅で1人で立ち尽くしていたようだった。


「……クレア。自覚はあるか?」


「……何がでしょうか?」


 スケイルが尋ねるが、クレアは本当に何のことについて言われているのか分かっていない様子だった。


「……いや、それならいい。くれぐれも1人にはなるな」


「……? 分かりました」


 クレアは首をかしげながら了承し、自分のクラスの教室へと入っていった。


「……あの様子だと深度は深くはない、か」


「その通りだね」


「!!」


 考え込もうとしているところに後ろから声をかけられ、スケイルは慌てて後ろを振り向いた。


「……ジョン、君?」


 そこには両手を広げたジョンが立っていた。


「……」


 だが、いつものジョンとは様子が違った。

 子供っぽさはなく、余裕と自信に満ちあふれた表情。


「一瞬だけだったから刷り込めたのはほんの一言。


『俺を庇え』


 それだけだったよ」


「……あなたはっ!」


 ジョンの言葉でスケイルは悟る。


「……いつの間にジョン君に。

 ゼン殿下!」


「ふふふ。ついさっき、ね」


 スケイルに指摘され、ジョンの瞳が金に輝く。


「洗脳や魅了、ではなく、ジョン君の意識の中に自分を侵入させたのですか?」


「ま、そんなとこだね」


 ジョンが肩をすくめる。

 普段のジョンがやる仕草ではない。


「……なぜ。なんのために……」


 あれだけ警戒していたのに。


 スケイルの中には出し抜かれたという焦りが巡っていた。


「ま、警告みたいなものだよ。当然、君はこれをミカエルやシリウスに報告するだろ?

 手段はいくらでもある。

 中途半端な報告で俺を失望させるなとシリウスに伝えてくれよ」


 ジョンはそう言うと、腰から剣を抜いて自分の首に当てた。


「何をっ!?」


「……だから、手段ならいくらでもあるんだ。つまらない策で誤魔化せると思うなよ」


 ジョンはそれだけ言うと剣を鞘に戻した。


「俺が知りたいのは彼女が有用かどうかだけだ。俺が調べる価値があるかどうかを知りたいだけ。余計な小細工はいらない。おまえらが知ってる全てを提示しろ。

 どうするかは俺が判断する」


「……」


 ジョンはそれだけ言うと自分のクラスの教室に入っていった。

 クラスメートに挨拶を交わす頃にはもういつものジョンに戻っているようだった。


「……これは、いろいろ調べた方が良さそうですね」


 スケイルはそう呟くと、まずは報告しなければとミカエルの研究室へと向かったのだった。




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