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155/252

155.作戦会議はおねむだね

「……なるほど。前世の記憶。違う世界……」


「……ま、そんな感じだね」


 あたしは先生と王子に前の世界でのことを話した。

 記憶がないってことにしてたけど、そのせいで帝国のスパイとか言われちゃってるし、なんとかしようとしてくれてる2人に何も話さないのはダメな気がするからね。


「お、俺様には正直よく分からないし、にわかには信じがたいが、ミサが言うのだからそうなのだろう」


 王子の方はすぐには信じられないみたいだけど、あたしのことは信用してくれてるみたいだ。

 それはありがたい。


「……」


「先生。大丈夫そうかい?」


 先生の方はアゴに手を当てて、ずっと何かを考えてる。

 やっぱり突拍子もないことだし、信じられないかね。


「……ふむ。そのあたりをうまく誤魔化してゼン王子を納得させるのは難しいですかね」


「ん?」


「え? ああ。その前世の記憶。とりわけ、魔法の存在しない世界で発展した科学という力はゼン王子の食指を動かすには十分すぎます。そこをうやむやにしてミサさんの過去をゼン王子に伝え、スパイの容疑を晴らすにはどうしたものかと思いましてね」


「そ、そうだね。てか、あたしの話はすんなり信じてくれたんだね」


 もうその真偽は図り終えた前提で考えてたみたいだね。


「ん? べつに疑う余地はないでしょう。ミサさんにそんな嘘を考えるだけの余裕があるとも、知性があるとも思えませんし」


 いや、失礼でしょ。


「たしかに」


 おいこら、バカ王子。


「……そもそも、ゼンお兄様はどうやってミサの潔白を証明させるつもりなんでしょうか」


「クラリスさん?」


 先生たちに抗議しようとしてたら、クラリスがずいっと前に出てきた。


「ミサには過去の記憶がない、ってことになってる。でも、ミサが帝国のスパイじゃないって分かってもらうにはミサの過去を調べないといけない。でも、調べても何も出てこない。

 ……何も出てこないってことは無実の証明にはならないですよね?」


「……少し弱いですね。調べる、といっても帝国の情報はとくに出てきにくい。それこそ、帝国の高位の人間を縛り上げてミサさんなんて知らないと言わせるぐらいしないと」


 いや、それはさすがに。


「……そもそも、兄上はどうやって俺様が上げた報告の真偽を測るつもりなんだ?」


「そーだね。なんか適当にパパパって報告書でっち上げてもバレなそうだもんね」


「それも含めて、彼が納得するように、ということなのでしょう」


「そっかー」


 うーん。

 ムズいねぇ。


「……たぶん、ミサに関して何らかの隠し事があるとは思ってるのです」


「アルちゃん」


「ようは、その第一王子が納得すれば良いのだから、ミサに関して秘密にしていたことを少しだけ教えてあげるというのはどうなのです?」


「……と、言いますと?」


「ミサの秘密は大きく分けて4つなのです」


 そんなあるっけ?


「闇属性ということ。魔獣言語を理解し、魔獣を使役できるということ。ポーションの大量生産が可能ということ。そして、違う世界の前世での記憶のことなのです」


 なるほどなるほど。


「で、そのなかでまだ明かしても問題が少なそうなのは属性の話なのです」


「闇属性は他の国にも何人かいるんだったね」


「……それを、ゼン王子に話すと?」


「たぶん、第一王子はミカエルたちがミサのことを隠したがってるから突っついてきてるのです。だから、ミサの秘密を教えて上げればスパイ疑惑の証明なんてのは多少無理があっても納得すると思うのです」


「……ふむ。まあ、そうなのでしょうね」


 アルちゃんの意見に先生もこくりと頷く。

 お兄ちゃん王子は、ようは弟と先生が何やら自分に隠し事をしてるらしいのが嫌ってことだね。

 だから、それを教えてもらうためにこんなことを。

 いや、とんだワガママ兄ちゃんだね。


「わかりました。まあ、希少な闇属性だということを明かすのも些か問題はありますが、ここまできたら仕方ないでしょう。話の落としどころをそこに定めて報告書を組むとしましょうか」


「んー、それで、結局あたしのスパイじゃないよって証明? みたいのはどうしたらいいかね?」


 お兄ちゃん王子の本命はそれじゃないとしても、やっぱりそれなりの体裁は必要だよね。


「……ミカエル。サリエルは本当に少しもこちらに来られないのか?」


 王子もその進行で納得したみたいで、話に参加してきた。

 あ、ちなみにケルちゃんは難しい話に眠くなっちゃったみたいで、先生の仕事椅子で丸くなって寝てるよ。あたしもそっちに混ざっていいかい?


「……と、言いますと?」


「サリエルは人の記憶を読む固有魔法があるだろう。それでミサの潔白を証明してもらえばいいのではないか?」


「いやいや、記憶を読まれちゃ困るんだよ」


「……サリエルさんに予め言うことを吹き込んでおく、ということですか」


「へ?」


「そうだ」


 どうゆことだい?


「報告を上げて、兄上にその裏を取られたりしたらマズいのなら、裏の取りようがない方法で証明するしかない」


「たしかに、魔導天使の固有魔法で引き出したものを他者が証明するのは不可能です。ですが、それを果たしてあのゼン王子が簡単に信じるでしょうか」


 そーだねー。

 サリエルさんはミカエル先生と仲良いし、口裏合わせてるとか思われても不思議じゃないよね。


「完全に信じてもらえなくても構わない。信じられなくても、それを確かめることは出来ないのだからな。魔導天使がそうと言ったから報告した。いかにも俺様が出してきそうな報告書じゃないか?」


 おっと、まさかの自虐だよ。

 短絡的で無能な自分の上げる報告なんてこんなもんだとお兄ちゃん王子に思わせるわけね。


「ふむ。まあ、悪くはないですが、些かご都合主義でもありますね」


 そうだね。

 そんなうまくいくかなって感じがするよ。


「……たしかに楽観的かもだけど、あとは話の流れでミサの属性について話して、隠したかったのはそのことだと暗に伝えれば、第一王子の興味はそっちに向くかもなのです」


「……ふむ。会話の組み立てが難しいですが、まあ、それを中心に進め方を考えてみましょう」


 うん。あたしにはたぶん無理だけど、先生なら何とかするでしょ。


「……でも、あともうひとつ何か欲しいですね」


「クラリス?」


「ミサ。ちょっとお願いがあるんだけど」


「なんだい? 貢いで欲しいのかい?」


 クラリスのお願いなら何でも聞いちゃうけど、さすがにちょっと嫌な予感がするよ。




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