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152.宴のあとにはきっとまたトラブルが……ほーら

「あ! ハイド~!」


「ミサ。みんな」


 王様が退散したあと、再びみんなでご飯を漁りながらいろんな人たちと話してると、今回の主役でもあるハイドとヒナちゃんがいた。

 2人はいろんな人に囲まれて話しかけられてしんどそうにしてた。


「助かったよ。ヒナ以外の人と話すのも久しぶりなのに、一度にあんな人間と話すなんて、僕にはまだ無理みたいだ」


 あたしたちが来ると、周りにいた人たちは気を遣って離れてくれた。

 ハイドはそれでようやく一息つけたみたい。


「あ! そだ! ハイドにヒナちゃん。婚約おめでとっ!」


「あ、ありがと」


「ありがとうございます」


 ふふふ。2人とも照れちゃって、いいねぇ。初々しいねぇ。


「あ、そういや、ハイドの発明品はこれからどうするんだい? あんなすごいのがあれば、これからもっと漁とかもすごくなるんじゃないの?」


 リヴァイアサンを撃退するほどの力を発する機械を作れるんだから、きっとこれからこの国はすごい科学力を発揮するんじゃないかね。


「……いや、もう、あれはこれ以上の開発はしないよ」


「え!? どうしてだい!?」


 きっとみんなの暮らしが楽になるはずなのに。


「あの力は脅威だ。秘密裏に開発しようとしても他国にはきっと知られる。そうなったとき、狙われるのは民だ。民の生活を豊かにするために民を危険にさらすことになるのなら、僕はそんな技術はいらない。

 僕は、この国の王子だから」


「……そっか。それがいいかもね」


 たしかに、魔法によらないすごい力なんて、他の国からしたら怖くてしょうがないし、きっと自分たちも欲しがるよね。

 前の世界では科学はこっちの世界での魔法みたいに、みんながそれを持ってたから何とか均衡を保ってたけど、きっと前の世界でひとつの国が魔法を開発し始めたら大変なことになってただろうしね。


「まあ、でも、罠とか銛とか、工夫の範囲内でなら、みんなのためになることはやっていこうと思うよ」


「そうだね! ハイドなりに、ハイドに出来ることをやっていけばいいと思う!」


「うん……」


 ん?

 ヒナちゃんと頷きあってどったの?


 ハイドは姿勢を正すと、ばっと深く頭を下げた。


「ミサ。みんな。この度は本当にありがとう。君たちがいなければ、この国はダメだったし、僕も、ずっとあの部屋に引きこもったままだった。時期国王として、アルベルト王国との友好を永いものに出来るよう尽力することを誓うよ」


 ハイドとヒナちゃんが頭を下げると、周りにいた人たちも一斉にあたしたちに頭を下げてきた。


「い、いや、大丈夫だよ。あたしたちがやりたくてやったことだし、みんなが無事で良かった。感謝の気持ちは分かったから、頭を上げとくれよ」


 あんまそんなんされたら恐縮しちゃうよ。


「ありがとうございます。こちらも、リヴァイスシー王国との友好継続に尽力すると、アルベルト王国第一王女として約束しましょう」


「ありがとうございます」


 あ、なんかそういう口上があるのね。

 クラリスとハイドが言い終わると、みんなも頭を上げて再び談笑に戻っていった。


「ほら! 追加持ってきたぞ~!」


 アザセルさんがいつの間にか厨房に行ってたみたいで、魔法で浮かせた大量の大皿料理を持ってきてくれた。


「わーい!!」


「お肉もあるよ!」


「よし! 後半戦といくか!」


 そして、あたしたちはまたそれにがっつくのだった。


「やれやれ」


「この光景があると平和って感じよね」


「まったくなのです」


 ふがっ? なんか言っふぁ?
















「……あ、兄上。いま、なんて……」


「言葉通りだよ、シリウス。彼女のことを本格的に調べられたくないのなら、俺を納得させられるだけの報告をしろ」


 アルベルト王国。ゼンの居室。

 兄に呼ばれたシリウスはゼンの言葉に絶句した。


「……」


「ミカエルと相談でもしたらいい。ヤツはおまえのことを気にかけてるからな」


「……」


 ゼンのその言い方は皮肉めいているようだった。


「俺が一度決めたことは必ずやるってことはよく分かっているだろう?」


「……」


「それのためには、手段は選ばないということも」


「……分かってるよ。よく分かってる」


 シリウスはそれだけ言うと、くるっと踵を返す。


「3日待つ。それまでに俺が納得するだけの理屈をまとめて報告を提出しろ」


「……分かった」


 シリウスはそれには振り返らずに答えて部屋から出ていった。


「……さて、どう出るかな」


 ゼンはそう呟くと部屋のカーテンを開ける。


「残りは2つ。そっちにも眼を向けておかないとな」


 そして、ゼンは遠視を発動した。
















「食ったったー! お腹いっぱいだよー!」


「もう動けなーい!」


「満足だな!」


 お城の部屋に戻ったあたしたちはさっそくベッドに倒れ込んだ。

 いや、もー無理。もー動けないよ。


「もう。ちゃんとお風呂入ってから寝なよ!」


 はーい、クラリスママ~。


「皆さん! いますね!」


「うわひゃぁっ! 先生っ!?」


 重たい体を頑張って起こしてお風呂に行こうとしたら、突然ミカエル先生が部屋に現れた。

 この人はホントにいつも突然現れるね。


「せ、先生。他国の王城に勝手に転移してくるなんて……」


 あ、そうだね。

 それって大丈夫なのかい?


「ちゃんと許可は取ってるので大丈夫です」


 あ、さすが。

 急いでてもそこはちゃんとしてるんだね。


「それで? 緊急の用件なのです?」


「……ええ。ちょっと、いえ、かなりマズい事態です」


 なんなんだい?

 先生がそこまで言うなんてよっぽどのことなんだね。


「……ゼン王子が。アルベルト王国の第一王子が、ミサさんを婚約者として迎えると言い出しました」


「はあぁぁぁぁっ!?」





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