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151/252

151.宴はいいね!ツユちゃんは、うん、怪しいね!

「ひゃっふぉ~い! 海の幸がいっぱいで幸が幸せだね~!!」


「もうなに言ってんのか分かんないけど気持ちは分かる!」


「うまうまうまうまっ!」


「……おまえら、ホントよく食べるな」


「カーク。慣れれば日常の風景よ」


「そうなのです。毎日これだから、むしろ少食だと逆に心配なぐらいなのです」


「そ、そうなのか……」


 カクさんたちがなんか言ってるけど関係ないね!

 なんかよく分かんない赤身! なんかよく分かんない白身! 伊勢じゃないけどそれっぽい海老! ホタテっぽい貝!

 お刺身の舟盛にソテーにタタキに炙りにバター醤油!

 もう無敵艦隊だね!


「お~! 楽しんでるか~!」


「むがっ!? あ、おうふぁま!」


 口いっぱいに海鮮料理を楽しんでると、エールを片手に顔を赤くした王様がやってきた。

 いいね~。お酒。

 あたしはまだ飲んじゃダメな歳みたいだからね、残念。

 この世界にもそんな年齢制限とかあるんだねぇ。

 って言っても、前の世界でも旦那の晩酌に付き合うぐらいだったけどね。

 でも、こんな祝いの席ではやっぱりみんなと祝杯あげたくなるよね!



 あのあと、避難してた人たちもみんな戻ってきて、リヴァイスシー国はすっかりお祭りムード。

 建国以来の懸念材料だったリヴァイさんのことが片付いただけじゃなくて、大規模海難災害や不漁が緩和されることになって、国民のみんなも大喜び。みんなはむしろそっちの方が嬉しいみたい。

 まあ、リヴァイさんのことは王様たちしか知らなかったみたいだから、そりゃそうだよね。


「いや! 俺はもう嬉しくて嬉しくて! 先々代や先代からずっと言われてきていたリヴァイアサンの件がまさか俺の代で解決するとはな! おまけにハイドも少しずつ王太子としての仕事をしていくと言っていた!

 しかも、この世界の創世神からの加護まで!

 嬉しい限りだ!

 はーっはっはっはっはっ!」


 王様、完全に酔っぱらってるね。


「お役に立てて良かったです。我々も微力を尽くした甲斐があったというもの」


「いや、微力などとんでもない! 君たちには感謝してもしきれない! あとで書状を書こう! アルベルト国王にもしっかりと感謝を伝えておいてくれ!」


「もったいないお言葉。

 父には私が責任を持って書状を届けます」


「うむうむ! それに、それになぁ。あのハイドが、まさかなぁ。俺はぜんぜん気付かなかんだ。ハイドぉ……」


「そうですね。そちらも嬉しい報告となりましたね」


「うぅ。そうなんだよぉ~」


 クラリス。酔っぱらいの相手もちゃんとしてて偉いね。

 こういう偉い人の酔っぱらいってたち悪いけだ、クラリスはその辺もうまいことやるんだろうね。


 ハイドはあのあと、ヒナちゃんとの婚約の許しを王様に求めたんだ。

 王様はびっくりしてたけど、引きこもってるハイドのお世話を甲斐甲斐しくしてくれてたヒナちゃんならってことで泣きながら許してくれたらしいよ。

 家柄的な問題とかあるんじゃないかと思ったけど、ヒナちゃんはそこそこ位の高い家の子だったみたいで、周囲からも特に文句は出なかったみたい。

 ていうか、王様以外はようやくくっついたか、みたいな感じだったみたいだよ。

 ともあれ、これで次期国王と次期王妃も内定ってことで、王様も肩の荷が降りたんだろうね。


「それで、それでなぁ~。ハイドたちに早く孫の顔を見せてくれって言ったら、それはまだ早い! って言って怒られてしまってなぁ~。いいじゃないか。俺だって早く孫が見たいんだぁ。そしたらさっさと引退して孫を思いっきり甘やかすと決めてるんだ~」


 このおっさんはホントにそうしそうだから怖いよね。

 それにはまず息子であるところのハイドを一人前にしないと。

 ていうか、誰か王様をあやしてくれる人はいないの?

 なんか、みんな知らん顔して談笑してるけど、けっこうダルいよ?


「……ツユはどこだ?」


「あ、アザゼルさん」


 泣きながら国歌を歌いだした王様に辟易してると、アザゼルさんが険しい顔でキョロキョロしながら現れた。


「アザゼルさん。ちょっと王様をどうにかしてよ。クラリス笑ってるけど、あれそろそろヤバイよ」


 クラリスさんを怒らせたらあとが大変なんだから勘弁しとくれよ。


「……それは本来ツユの仕事だ。さっきから探しているんだが、俺の探知にもまったく引っ掛からん」


「あー、なるほどー」


 ツユちゃんたら、また何か悪巧みでもしてるのかい?

 人の国のことだし、アザゼルさんは分かってるみたいだから深くは突っ込まないけど。


「はいな。おまたせしました~」


「あ、ツユちゃん」


 噂をすれば、ツユちゃんが王様の影からにゅって現れた。

 相変わらず神出鬼没だね。


「……ツユ。どこに行っていた? おまえ、この国にいなかっただろ?」


 え? そなの?


「ちょっといろいろと後処理をしてました~。とりあえず王をどうにかすればいいですね~。お任せあれ~」


 ツユちゃんはそう言ってにこやかに王様に近付いていった。

 アザゼルさんが臨戦態勢なのは放っておこうかね。


「王様~。ご機嫌麗しゅ~」


「おお! ツユか! 聞いてくれ! ハイドが! ハイドがなぁ!」


「はいはい。もう3度目ですよ~。そろそろ私の拳が唸るので大人しくしましょ~ね~」


 ツユちゃんは握り拳を掲げて王様に見せた。


「……お、おお。そうか。ちょ、ちょっと水でも飲んでくるとするかな」


 ツユちゃんの拳を見たら、王様はたじたじしながら退散していった。

 クラリスがほっとしたような顔してる。


「……前に王が酔ってツユに面倒くさい絡み方をしたことがあってな。そのときにツユに思いきり殴られてから、王はツユが苦手なんだ」


「あー、そうなのね」


 王様ぶん殴るとか、さすがはツユちゃんだね。


「じゃー、邪魔者もいなくなったことですし、私はまたどろんしますね~」


 王様を邪魔者て。


「……また、悪巧みか?」


「もちろんです~」


「……ちっ」


 ツユちゃんはアザゼルさんの舌打ちを聞く前にまた影の中に消えちゃった。

 なんか、ツユちゃんはそこそこ悪い人っぽいんだけど、根っからの悪人じゃないっていうか、なんか理由があってこんなことしてる感じがするんだよね。

 ま、その辺はアザゼルさんに任せるよ。

 あんまりいろんなことに顔突っ込むと、またいろんな方面から怒られるからね。


















「ふーん。つまり、リヴァイアサンはリヴァイスシー王国に加護を授けたと。で、引きこもり王子は無事に外に出てきたわけだ」


「そうなりますね~」


 アルベルト王国に転移したツユの話を聞くのは第一王子のゼンだった。


「で、アザゼルの結界が弱まった隙に侵入させた帝国の兵はリヴァイアサンにやられてしまったと」


「あ、視てたんですか~。そうなんですよ~。残念です~」


「ハイド王子の技術を帝国に持ち込む企みは潰えたわけだ」


「ふふふ、ゼン殿下は本当に何でもお見通しですね~」


「何でもではないよ。僕は自分の眼で視たものしか視れない」


「ふふ、殿下が言うと説得力がありますね~」


「それで? 殿下はハイド王子をどうするんですか~?」


「……」


「……」


「……ふっ。どうもしないよ。帝国の手に渡らないのなら処理する必要はない。あの国なら、バカなことはしないだろう」


「ふふふ、変なところで人を信用するから殿下は分からないですね~」


「ふっ、君に言われたくはないな」


「ふふふふふ」


「ふふふふふ」





「で? これから帝国にも報告に行くのか?」


「そうですね~。残念な報告になりますが、最古の魔獣相手なら仕方ないでしょうしね~」


「……」


 そのとき、ゼンの瞳が金色に輝く。


「ふふふ、私にそれは効かないですよ~」


「……ふん。この瞳が効かないのは王族と魔導天使だけのはずなんだかな」


「ふふふ、それでは~」


 ツユはイタズラに笑うと、ふっと影のなかに消えた。


「……魔法によらない力は欲しかったが、脅威にならないならいいか。あの国の人間ならバカなものは造らないだろう。

 ……じゃあ、もうひとつに手を出してみることにするか」



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