146.もう泳ぐの疲れたよ~
「ふ~。よっし。ハイドたちが見えてきたね」
長かった水泳も終わりが見えてきたよ。
設置する機械もあと数個。
遠くにハイドたちの乗ってるボートが見える。
遠泳を続けてさすがに疲れたよ。
終わったらゆっくり休ませてもらいたいね。
「ふぅ。ここにも設置して、と」
うし。あと4個だ!
もう一息! 頑張るよ!
「……ん?」
なんか、泳ぐ先の水面がキラキラ光ってないかい?
なんか水が集まってる気もするし。
「……てか、あれって魔方陣?」
なんであんなとこに?
誰かが間違って設置しちゃったのかね?
「……え? てか、どんどん光が増えてくし、お水が集まってくんだけど」
え? ホントになにあれ? え? なんかヤバくない?
「あ、なんか膨らんで……え? ウソでしょ? ぎゃーーーーっ!」
そして、おっきく膨らんだお水の塊はでっかい音をたてて爆発したんだ。
『シャギャァッ!!』
「なんだ? ヤツが急に……」
リヴァイアサンが急に首をぐりんと動かしたことに王が気が付く。
その視線の先には……。
「ミサっ!?」
「なんでミサがあんなところにっ!」
ジョンとカークもリヴァイアサンの視線の先の海に点のように浮かぶミサの姿を視認する。
「待てっ! あの水柱はなんだっ!?」
王はミサの少し先で立ち上る水の柱に気が付く。
ミサからしたら巨大な水の爆発だが、上空から見たら小さな水柱が立っているように見えた。
「……あれは、魔法だ」
『シャアァァァーーーッ!!』
「マズいっ! ヤツがミサに気付いた!」
「な、なんで魔法があんなとこで!?」
「……」
「とりあえずヤツの注意を引くんだ! ミサの方に行かせるなっ!」
「はいっ!」
『シャアァァァーーーッ!!』
「げっ! ヤバっ! これ、バレたんじゃないかい!?」
リヴァイさんが急に爆発した水面に反応してこっち見てるよ!
「……サ! ミサ! 早くこっちへ!」
「ハイド!」
ボートの方でハイドが慌てて手招きしてる。
そうだね。とりあえず落ち着いて、逃げるにせよハイドたちと合流してボートに乗らなきゃ。
「よっし! 急いで泳ぐよ!」
あ、そだ。
ちゃんと機械は設置しなきゃね!
「はぁはぁはぁ……」
泳ぎながら、チラッと後ろを振り返ると王様たちが頑張ってリヴァイさんの注意を引き付けてくれてる。
丘の方からは火の玉が何個も飛んでってるし、リヴァイさんのいろんなとこが石化しては治ってる。
ケルちゃんたちも頑張ってくれてるみたい。
早く泳がなきゃ。
「……ぷはっ!」
疲れてるのもあって、なかなか思うように進まないね。
「……よし。とりあえず機械は全部設置したよ!」
ひとまずリヴァイさんの周りにハイドが作った機械を全部設置することに成功した。
あとはハイドたちと合流するだけだよ!
『ジャギャアァァァァーーッ!』
「わあぁぁぁーーっ!!」
「うわっ!」
「きゃあぁぁぁーーっ!!」
ハイドたちの待つボートに向かって泳ぎ出そうとしたら、リヴァイさんが撃ったビームがあたしとハイドたちの間に降ってきて、海が爆発した。
「わぷっ……!」
それで発生した波にのまれる。
向こうでヒナちゃんの悲鳴も聞こえる。
あたしは大丈夫だけど、あっちも大丈夫かね。
「ミサー! 大丈夫!?」
「あたしは平気だよー! あたしのことはいいから早くやっちゃってー!」
もう完全にリヴァイさんはこっちをロックオンしてる。
ここはあたしがハイドと合流するより先にリヴァイさんを倒しちゃった方がよさそうだよ。
「そうしたいけど! そこはまだ発動範囲内なんだ! だから、ミサがその効果範囲から出てくれないと起動できない!」
「マジかー! おけ! 頑張るよー!」
どうやらここにいちゃダメみたいだ。
とりあえずリヴァイさんから離れるように泳がないと。
『ミサ!』
『え!? アルちゃん!?』
あたしがハイドの機械の効果範囲から出るために頑張って泳いでると、アルちゃんから念話が送られてきた。
『どーしたのー?』
『ミサ! 大丈夫なのです!?』
『あ、うん。とりあえず大丈夫ー。いまハイドの……』
『待つのです!』
『え? なに?』
あたしはハイドのやろうとしてることをアルちゃんに伝えようとしたら、慌てて止められた。
『リヴァイアサンは念話を盗聴できると思うのです。だから、あんまり話したらダメなのです』
『あー、そなんだ。おけおけ。それなら、なんでいまアルちゃんはあたしに念話を?』
バレちゃいけないのにそれでも話さないといけないことでもあるのかね?
『手短かに。ハイドが何かするにはミサがそこからどかないとダメなのです?』
『うん。そーみたい』
『……わかったのです。なんとかするから、ミサはとりあえず急いで泳ぐのです』
『え? あ、うん。わかった。頑張るー』
アルちゃんは今のやり取りでいろいろ分かったんだろうかね。
まあ、あたしがやることは頑張って泳ぐことだけだね。
「よっし! いくよ!」




