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144.みんなはみんなで頑張ってるみたいだね

「……海にいるな」


『えっ!?』


『……どういうことなのです?』


 アザゼルが自身を中心に発生させた結界状の索敵魔法を徐々に広げていくと、ミサたちの存在は存外早く認知することができた。


「……言葉通りだ。ミサとハイドと、あとヒナも海にいる。海上を漂ってる? いや、停留しているのか」


 アザゼルは索敵魔法で感知したミサたちの状態を探りながら、アルビナスたちに報告する。


『だから、なぜそんなところにいるのです!

 さっきまですぐそこにいたのです!』


「おっと、攻撃の手は緩めるなよ」


 アザゼルに指摘され、アルビナスはリヴァイアサンに攻撃しながらアザゼルの話に耳を傾けた。


「……これは、ツユの仕業か」


『ツユって、たしかメイドさんだよね?』


「ああ。あいつはああ見えていろんな魔法が使えてな。たしか影を使った移動術みたいのも使えた気がする」


『な、なんでそのメイドがミサを王子たちのところに?』


 アルビナスはリヴァイアサンに第3の目を向けながらアザゼルの話に集中しているようだ。


「……これは、そういうことか」


 アザゼルはミサたちの方で起きた動きで何となく状況を察した。


「ミサの嬢ちゃんが1人だけ海に入ったな。で、リヴァイアサンの周りを回るようにゆっくりと泳ぎだした」


『なんで!?』


『……ミサは、いったいなにを』


「おそらく、ハイドの発明品とやらだろう。それの発動条件を満たすためにあの嬢ちゃんが動いたんだ」


『でも、なんでミサなのです?』


「……あ~、そりゃあな」


 アザゼルは言いにくそうに頬をかいた。


「ハイドとヒナは泳げないんだ。だからハイドのしようとしていることを察したツユは手の空きそうなミサの嬢ちゃんを連れていったんだろうな」


『……ミサ』


 アルビナスは心配そうにミサがいるであろう方向を探ったが、遠すぎて探知には引っ掛からなかった。


『あ! そだ! ていうか、ミサに念話すればいいじゃん! それで詳しく聞けば何をしようとしてるのかも分かるよ!』


『それはダメなのです!』


 ミサに念話を送ることを思い付いたケルベロスをアルビナスは焦って止める。


『え~、なんで~?』


『リヴァイアサンはたぶん現存する最古の魔獣なのです。飛ばした念話を拾うぐらいなら出来ると思うのです。だから、私たちはミサたちのしようとしてることをギリギリまで知らない方がきっといいのです』


「……なるほどな。何かヤバいことをやろうとしてるのが分かったら、ヤツはそっちを潰そうとしてくる。それも、いま1人で海を泳いでる無防備の嬢ちゃんを、ってことか」


『そうなのです』


『それはダメ~! わかった! 念話しない!』


 ケルベロスはそう言うと、頭を3つに増やして吐き出す火の玉の数を増やした。

 どうやら攻撃に専念するとともに、リヴァイアサンの注意を自分たちに向けさせる必要があることを何となく理解して実行したようだ。


「……ふむ。俺たちに出来ることはミサの嬢ちゃんの仕掛けが終わるまでの時間稼ぎってことか」


『幸い、王たちはミサの存在に気付いてないのです。このまま私たちの攻撃が頼りだと思わせておいた方がいいのです。ヤツに近い皆の方がヤツにバレる可能性が高いのです』


「そうだな」


 とりあえず現状でやるべきことは変わっていないということで、3人は再びリヴァイアサンの対応に本腰を入れた。


『……それにしても、索敵魔法なんてかける余裕はまだあるのですね』


「……ま、補助系なら多少はな。俺の魔法は、攻撃には向いてないんでな」


『……』


 アルビナスの皮肉に、アザゼルは少しだけ俯いてそう答えた。















「……ぷはっ!」


 だいぶ泳いだね~。

 何個ぐらい設置したかね。

 20か、30か。途中から数えるのやめちゃったからね。


「……はあぁぁ。先は長いねぇ」


 まだ1/3も進んでないって事実に思わずため息が出る。


「……みんな、頑張ってるみたいだね~」


 ちょっと休憩がてら水面に仰向けになってぷかぷか浮くと、遠くでデッカいリヴァイさんの周りをちょこちょこ飛び回ってる人たちが見える。

 あの豆粒みたいのが王様たちなんだろうね。


「……わぷっ!」


 リヴァイさんは周りをちょろちょろするみんなにイライラしてるのか、尻尾を振り回したりなんか吐き出したりしてる。

 そのたびにこっちにも小波が来る。


「げほげほ……」


 仰向けになってたもんだから、それが口にかかってきてむせちゃったよ。


「……いこうかね」


 休憩を邪魔されたあたしは塩辛い鼻と喉の痛みにテンションを下げられながら、再び泳ぎ始めたんだ。


「……そういや、海の魔獣さんもいるってハイドは言ってたけど、さっきからぜんぜん遭遇しないね。ま、会わないに越したことはないんだけどね」


 ……って言うと、フラグみたいになるからやめとこうかね。












「ね、ねえ。ハイド。ミサさん大丈夫かな? 魔獣とかが襲ってきたりしないかな?」


「……たぶん大丈夫だと思う。設置済みの増幅器には魔獣避けの効果もあるから、進行方向から魔獣が来たら前に設置した増幅器の方に下がれば平気だから」


「……でもそれも、ミサさんに伝えてないよね」


「……あ」










「……ま、それを私がリアルタイムで排除してるんですけどね~。

 えいっ!

 いや、でもけっこうしんどいから、ミサさん早く仕掛け終わってほしいです~。

 あ、また。たぁ~」


 海中でミサに迫ってくる魔獣たちを城の地下の入り江から遠隔魔法で仕留めるツユであった。




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