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141.愛の逃避行の邪魔をするために連行されたみたいだよ

「き、来たぞぉ~っ!」


 浜辺の方で誰かが叫んでる。

 浜辺、って言ってもみんな宙に浮かんでるから、あたしたちと高さは変わんないけど。


「……近くで見ると、相変わらずホントデケェな」


 アザゼルさんがごくりと唾を飲む音が聞こえた。

 ん? 相変わらずって、アザゼルさんは前にもリヴァイさんに会ったことあるのかね?


「……てか、ホントにでっかいねぇ」


 リヴァイさんとはまだ50メートルぐらい離れてる。

 でも、そのスケールの大きさによる圧迫感は半端ない。

 身体をうねうねさせて海から出てるのに、あたしたちと同じぐらいのとこに顔がある。

 まっすぐになったらどんだけおっきいんだろう。

 蛇、っていうか、完全に龍だね、これは。

 牙とかもすごいし、鱗も硬そうだし、ビーム吐いてくるし。


「まずは私がやるのです」


「アルちゃん」


 アルちゃんがすたすたと高台の崖の際まで歩いてく。

 カッ! ってアルちゃんが光ったと思ったら、でっかい蛇の姿に変身した。

 もうなんだかその姿も懐かしく思えちゃうね。


「……ケル。私に続くのです」


「おっけー! ほっ!」


 アルちゃんに言われて、ケルちゃんもおっきな狼の姿になる。

 7本の尻尾がふさふさと揺れる。


「ひゅ~♪」


 アザゼルさんが2人のホントの姿に口笛を吹いてみせた。


「……むっ」


 アルちゃんがこちらを見ないようにリヴァイさんだけを見据える。

 きっと第3の目を開いてるんだと思う。


「ボゴゴ……」


 で、ケルちゃんは口の中いっぱいに火を出現させた。

 ケルちゃん、その状態じゃ喋れないよ。


「……!」


 そして、アルちゃんの第3の目がリヴァイさんを完全に捉える。


「ぐぎゃっ!」


「おおー! 効いたよっ!」


 アルちゃんの第3の目を受けたリヴァイさんは身体の一部が石化した。

 突然の攻撃にリヴァイさんが声をあげる。


「……あれ? でも、なんかすぐ治ってくよ?」


 アルちゃんの第3の目は見た部分を徐々に石化させていって、やがてその全身を石化させるはずなんだけど、リヴァイさんは石化した先から元に戻ってるみたいだね。


「……やっぱり固有能力とはいえ、魔力を使ってるから効果が薄いのです。状態異常即時回復の能力もあるのです」


 そかそか。なんか魔力を吸いとっちゃうから魔法みたいな攻撃はとくに効きづらいんだっけ。


「……ケル!」


「ぼばーい! ぼっ!」


 アルちゃんに言われて、ケルちゃんは火を口の中に溜めたまま返事をして、それを一気に吐き出した。

 出された火は3個のおっきな火の玉になってリヴァイさんに飛んでった。


「……ケルの火は魔法じゃなくて体内で生成された固有能力なのです。やっぱり魔力は使ってるけど、普通の魔法よりはマシなはずなのです」


「そーなんだ」


 果たして……だね。


「……シャッ!」


「あっ!」


 ケルちゃんが撃った火の玉はリヴァイさんの尻尾のひと振りで全部消えちゃった。

 やっぱり海の中にいるし、火はあんまり効かないんじゃないかね。


「……どうする? やはりヤツは倒せないのか」


 アザゼルさんが眉間にシワを寄せてる。

 浜辺のみんなはアザゼルさんの指示があるまで待機してるみたい。


「……いや、私の石化も効いてないわけじゃないし、ケルの火も防ぐ必要があったってことなのです。だからたぶん、魔力のない攻撃なら、まだあいつにダメージを与えられる可能性はあるのです」


「……なるほど。ではやはり、下の皆にもやってもらうしかないか」


「それがいいのです。私とケルはここで援護するのです。クラリスは引き続き不可視結界と、あとはあいつの攻撃に合わせて障壁を張れたら嬉しいのです」


「が、頑張るわ」


「俺はここで皆にかけた飛行魔法の維持に努めながら指示を出す。他はあまり期待しないでくれ。正直、これだけでいっぱいいっぱいだ」


「分かってるのです」



「シャーーーッ!!」



「来るぞっ!」


「おおっ!」





「……えーと、あたしは?」


 盛り上がってるとこすいませんが、みなさんあたしのこと忘れてません?


「……あなたはこっちですよ~」


「え!? わっ!」


 みんなの後ろでボーッとしてたあたしは、あたしの影から出てきた手に足を掴まれて、その影の中に引きずり込まれちゃったんだ。
















「着いた!」


「な、なにあれ……」


 城の地下の入り江に着いたハイドとヒナ。

 ヒナは波打ち際に置かれた謎の機械に目をパチクリさせた。

 それはジェットスキーのような形をした大型の水上移動機だった。


「駆動部分には魔法を使ってるけど、水を急激に吸い上げて後方に排出することで推進力を得る水上を走る機械だ。その構造は……」


「あー! まってまって! 今は時間ないから説明はあとでね!」


「あ、そっか。とりあえず乗って!」


「う、うん!」


 ハイドの扱いを理解しているヒナは話が長くなる前にハイドの講釈を止めていた。


「しっかりつかまってて!」


「わ、わかった」


 ハイドに言われて、ヒナはハイドの腰にしっかりつかまった。

 そして、2人がいざ大海原へ出発しようというとき、



「ぎゃふんっ!」


「はい、到着です~」


「「!!」」



 2人の横にミサが落ちてきたのだった。














「いたたたた……。え? なに? 急に何がどうしたの?」


 なんか、地面から出てきた手に引っ張られて引きずり込まれるホラーかと思ったら、え? ここどこ?


「……ミ、ミサ?」


「え? あ、ハイド! と、ヒナちゃん!?」


 よく見たら、ここは前に行ったお城の地下の入り江だね。

 え? 2人で水上バイクに乗って愛の逃避行かい?


「いや~、間に合って良かったです~。けっこうギリギリでしたね~」


「え? あ、ツユちゃん!」


 後ろから声が聞こえて振り向いたらツユちゃんがにこにこしてた。

 ギリギリだったとは思えないぐらいにのんびりしてるね。


「ツ、ツユがミサを? というか、いまどうやって……」


「まあまあ、今は細かいことはいいじゃないですか~」


「え? わ、ちょっ!」


 ツユちゃんはハイドの質問を適当に流すと、あたしをひょいと持ち上げてヒナちゃんの後ろに乗せた。

 え? あたしも乗るの? あたしも逃避行すんの? 邪魔じゃない?

 てか、ツユちゃん力持ちだね。


「ツ、ツユ。いったいどういうつもりで……」


「どうもなにも、たぶんこれからハイド殿下がなさろうとしていることにミサさんは必要かと思いまして~」


 戸惑うハイドに対してツユちゃんはにこにこした顔を崩さない。

 なんか、その笑顔が逆に怖いんだけど。


「……」


「さ、時間もないでしょうから、もう行ってくださいね~」


「……いこう」


 ハイドはまだ何か言いたそうだったけど、たしかに時間もないからってことで水上バイクを発進させた。


「わぁっ! け、けっこうスピード出るんだね!」


「……急ぐよ」


「ひゃあぁぁぁーー!」


 そうして、あたしたちは海へと飛び出していったんだ。









「この国が滅びてしまったら私も困るんですよ~。だから、皆さん頑張ってくださいね~」


 にこにこした笑顔のまま3人を見送るツユだった。




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