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135.おいで! アルちゃん!

「まあ、とりあえずミサ、といったか。ハイドの様子を見るだけでも助かるからよろしく頼む」


「うむ! まっかせんしゃい!」


 なんだか適当にあしらわれた気もするけど、まあいいでしょう。

 実際、学生時代の理科さえ怪しいレベルのあたしが役に立つかは分からないしね。


「……あとは、リヴァイアサンについてもう少し詳しい情報があればいいんだが」


「国の方ではあまり情報を持っていないのですか? 前に退治したことがあるのでしょう?」


 そうだね、クラリス。

 過去にも倒したことがあるなら何かしらのヒントを残しておいてくれてもいいよね。


「……それが、かつて長を鎮めたのはずいぶん昔のことでな。そのあと、一度この国は大火に見舞われて資料の類いの多くを焼失してしまったんだ。だから、その大火以前の資料が国には極端に少ないんだ」


「そっか~。それは大変だったね~」


 燃えちゃったんならしょうがないよね……ん? そだ。


「てか、アザゼルさんは? 当時、そのリヴァイさんを倒した時にいたんじゃないの?」


 たしか魔導天使もいたって言ってたよね。それに長生きらしいし。


「……」


 えーと、聞いてます?


「……いや、さすがに魔導天使と言ってもそこまで長生きじゃねえよ。俺が代替わりする前のヤツのことだから、俺も詳しいことは分からないんだ。悪いな」


「そっか~。じゃあ、仕方ないね~」


 ん~。あと他に詳しそうなのは……。


「あ! 先生は? ミカエル先生ならなんか何でも知ってそうじゃん!」


「あ、たしかに!」


 ジョンも同意してくれた。

 やっぱり困ったときのミカエル先生だよね!


「いや、魔導天使同士は情報をある程度共有してる。この国のことであいつが俺以上に詳しいことはないだろうな」


「あ、そなんだね~」


 残念。あとは~。

 あ、そだ。


「ねーねー。クラリス」


「ん? なぁに?」


 あたしは横にいるクラリスにこっそり耳打ちした。ふって息を吹き掛けたくなる衝動を抑えるのに必死だよ。


「アルちゃんならどうかな? 魔獣さん同士、何か知ってないかな?」


 さっきケルちゃんとルーちゃんに聞いたけど、2人ともあんまり他の国のことには興味ないみたいで、知らないって言ってた。

 アルちゃんならしっかり者さんだから何か知ってそうだよね。


「あ、そうだね。あとで聞いてみよ」


「ん? 何かあるのか?」


「いえ、少し心当たりがあるので、あとで問い合わせてみます」


「……そうか。何か分かればすぐに教えてくれ」


「はいっ!」


 この場ですぐに聞かなかったのは、一応、遠く離れた場所にいる人と会話する能力はあんまりないみたいだからなんだ。

 ミカエル先生とかは普通にやってるから慣れちゃったけど、アルベルト王国の王族が持ってるっていう通信魔導具も先生が造ったらしいし。

 さっきクラリスがお父さんに避難民の受け入れをって言ってたのも、それを使うみたい。

 あたしはアルちゃんたちと契約? 状態にあるから心で念じると声が届くけど、普通はそんなこと出来ないから表立ってはやっちゃダメなんだって。

 だから、今回のもクラリスがあとでその魔導具を使うってことにしたみたいだね。

 一応、その魔導具も簡単に人前には出さないようにしてるらしいよ。

 王様はそれを理解してるから、あとでってのにすぐ同意してくれたんだ。




「よし。では、我々は引き続き避難民の誘導と武器の調達。兵の徴収に、海の監視を行う。

 君たちはアルベルト王国への連絡が終わったら、手の空いている者はこちらを手伝ってほしい」




「俺たちは王を手伝いますね」


 カクさんとジョンはそう言って海に向かっていった。

 戦う人たちと合流するみたい。




 あたしとクラリスとケルちゃんルーちゃんはハイドのところに行く前にアルちゃんに連絡することにしたんだ。


『アルちゃ~んっ!』


『ミサ? どうしたのです?』


 あたしが心のなかでアルちゃんを思い浮かべながら呼び掛けると、アルちゃんの声が頭に響いてきた。

 どうやら無事に繋がったみたいだね。


『じつは、かくかくしかじかで~』


『かくかくしかじかってなんなのです?』


『あ、ううん。1回やってみたかっただけ』


『……冷やかしなら切るのです』


『わ~! 待って待って! 違うの! ちゃんと用はあるのよ!』


『……なにです?』


 うう、会えてないからってアルちゃん塩対応だよぅ。


『えっとね……』


 あたしは今度こそ、この国のいろいろを説明して、長さんのことについて聞いてみた。


『……なるほどなのです。また厄介なのに巻き込まれたのです』


『……返す言葉もございやせん』


『……その国の長が討伐されたのは私が生まれる前だから詳しいことは知らないですが、その国の古い魔獣に話なら聞いたことがあるのです。気休め程度かもですが、それなりに対抗はできるかもなのです』


『そーなの!? さっすがアルちゃん!』


『へへへなのです』


 褒めてあげると、アルちゃんは嬉しそうにしてくれた。やっぱり笑ってるアルちゃんは声だけでもかわいいね。


『それなら、アルちゃんも来てよ。皆でやれば何とかなるんじゃない?』


『う~ん。それなら、そっちの2人のうちのどちらかにこっちに戻ってきてもらわないとなのです。誰か1人はこっちにいないと他の魔獣に示しがつかないのです』


『あ、そっかー。ちょっと待ってて~』


 あたしはそこで一旦念話をやめて、ケルちゃんたちに顔を向けた。


「アルちゃんにもこっちに来てもらおうと思ったんだけどさ、なんかケルちゃんかルーちゃんに向こうに戻ってもらわないといけないみたいなんだけど」


「私が戻るわ!」


「おおぅ、ルーちゃん」


 てっきり2人ともヤダヤダって駄々こねるかと思ったんだけど、すんなり立候補したね。


「ルーシアは泳げないもんねー」


「うっさいわね!」


「あ、そゆこと」


 海を見たときに微妙なリアクションだったのはそのためなのね。

 そういや、犬とか蛇は水にも入るイメージあるけど、蜘蛛ってミズグモとかでもないと水が苦手なイメージだよね。


「じゃー、ルーちゃんに戻ってもらうね」


「……ごめんね、ミサ。役に立てなくて」


 ルーちゃん! そんな上目遣いでうるうるさせないで! あたしも一緒に帰りたくなる!




『アルちゃん。ルーちゃんが戻るって~』


『わかったのです』


 ルーちゃんが戻ることを伝えると、アルちゃんは向こうで何やらごそごそとやり始めた。


『準備できたのです。ミサ、まずは私を目標にルーシアを送るのです』


『おっけー』


 アルちゃんが言う送るっていうのは、契約した魔獣を召喚できる能力のことなんだ。

 本来は魔獣をあたしの元に喚ぶものなんだけど、遠くにいる魔獣のとこに、あたしのとこにいる魔獣を送ることもできるみたい。


「えっとー、こうしてこうして、こうしてっと」


 あたしはアルちゃんに前に教えてもらったやり方を思い出しながら、床に魔方陣を描いた。


「よっし。できた。ルーちゃん。この上にどーぞー」


「はーい」


 出来上がった魔方陣の上にルーちゃんが乗ると、魔方陣がぴかーって光りだした。


「よっし! 転送召喚!」


「またね、ミサ~」


「うん、またね~」


 魔方陣が発動すると、手を振ってたルーちゃんがフッと消えた。

 どうやら無事にアルベルト王国に行けたみたいだね。


『じゃあ、次は私をそっちに喚ぶのです』


『ほーい』


 向こうでもルーちゃんが着いたことを確認したみたいで、アルちゃんがそう言ってきた。


「ほいっ」


 あたしは再び魔方陣を起動させた。

 魔方陣はまたパァッて光りを放ち始めた。


『よし。いくよ~』


『どーぞなのです』


「召喚! アルちゃん!」


 あたしがそう言うと、魔方陣はさらにピカッて光って、光が収まるとそこにはおっきなリュックを背負ったアルちゃんが立ってた。

 真っ白な振り袖におっきなリュックってギャップが逆にいい!


「ミサ~!」


「きゃー!」


 そして、着くやいなやアルちゃんに抱きつかれる。

 いや、嬉しいけどリュック重っ!


「会いたかったのです~」


「うんうん、あたしもだよ~」


 アルちゃんがぎゅ~ってしてくるから、あたしもぎゅ~ってし返す。


「あ、そうだ。ミサ。言っとくけど、リヴァイアサンには勝てないからね」


「……え?」


 来て早々そんなご無体な。





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