13.なんだかすごい属性らしいよ
そして、選択科目の時間。
次は実践魔法の授業だね。
戦術学?
なんのことだい?
寝てたから覚えとらんよ?
クレアは何度もあたしを起こそうとしてくれたみたいだけど、途中で諦めたんだって。
そうそう。知ってたかい?
ミカエル先生のデコピンはケガをさせずに、あたしを教室の後ろまで吹き飛ばすことができるみたいだよ。
「では、今日はみなさんの属性を調べてみましょう。
その後、各属性ごとの課題魔法を教えていきます。
今後はそれの発動を目標に、各自練習してもらいます」
どうやら、魔法には属性ってのがあるらしい。
火とか水とか土とか、風とか雷とか、なんかいっぱいだね。
光と闇は珍しいみたいだよ。
で、ひとりひとり得意な属性があるらしい。
たいていはその得意な属性の魔法を練習して成長するんだって。
「では、ひとりずつこの石板に魔力を流してください。
魔力に応じて、石板の上に簡易魔法が発動します。
それがその人の属性になります」
なるほどねえ。
姪っ子に貸してもらったらいとのべる?に似たようなのがあったね。
みんなが順番に石板に魔力を流していく。
石板からは火だったり、電気だったりが生まれる。
「えいっ!」
「おおーっ!」
クラリスが魔力を流すと、石板からはまばゆい光が生まれ、みんながその眩しさに目を細めた。
「さすがは王女様!」
「光属性はこの国でも10人もいないはず!」
「ふむ。
さすがですね」
どうやら、光属性のクラリスはなかなか貴重な存在らしい。
たしかに、あの子は普段からキラキラしてるから納得だね。
「さて、次は、ミサ君」
「あ、はいはい」
ミカエル先生に呼ばれて、慌てて先生に駆け寄る。
「さ、どうぞ」
先生が差し出した石板に手をかざし、スケさんに教わった通りに魔力を流す。
すると、
「え?あれって」
「まさか」
「う、嘘だろ……」
なんだいこれ?
石板が黒いモヤみたいなのに覆われちまったよ。
先生、これ壊れちまったのかい?
「ああ。
これは闇属性ですね」
先生は事も無げに言ってるけど、周りのみんなの反応が何でもないんだけど……
「ミ、ミサ。
闇属性って、光属性よりもレアで、この国では他に1人しかいないの……」
え?
クラリスさん。
それマジですか?
「で、その1人っていうのが……」
「え?」
あたしが顔を上げると、ミカエル先生が見たこともないような笑みを浮かべていた。
え?なに?
怖いんですけど。
「私とお揃いですね。
やはり、貴女は見込みがあると思ったんですよ」
あんたか~~い!!
てか、ミカエルなのに闇属性って、なんかもう堕天使じゃないかい!
こりゃあ、ホントにミカエル(悪魔)先生だね。
「……ミサさん?」
あ、すいませんね。
そのあとは寄ってたかって質問してくる生徒たちの相手が大変だったよ。
でも何の訓練もしてないし、答えられることがなさすぎるあたしに、みんなも次第に聞くことがなくなったみたいだ。
「では、貴方は《スクエアフレイム》で。
貴女は、《アクアウェーブ》ですね」
ミカエル先生が実演しながら、生徒たちにそれぞれの課題魔法を与えていく。
どうやら、ひとりひとり技量に応じて魔法のレベルを変えているようだね。
「先生って、闇属性なのに他の属性の魔法もいろいろ使えるんだねえ」
あたしがクラリスにこそっと耳打ちすると、クラリスはものすごく驚いた顔をしていた。
え?あたしなんか変なこと言ったかね。
「ミサってば知らないの!?
ミカエル先生はこの国唯一の闇属性の持ち主で、かつ全属性の強力な魔法を使えて、世界で5人しかいない魔導天使の称号を持つ、とってもすごい人なんだよ!」
なんだい、そのずいぶん大層な称号は。
人間国宝みたいなものかね。
だとしたら、それはずいぶんすごいことだね。
「ん?
でも、なんでそんなすごい人が学院で先生なんてやってるんだい?」
そんなすごい人なら、戦場で大活躍するか、お城で重要な役職に就いてそうなもんだけどね。
「うーん、それが謎なのよねー。
戦争期には、それはそれは大活躍してたらしいんだけど、停戦協定が結ばれてからは、戦果による陞爵も断って、学院での教職を希望したらしいの」
「そうなんだ」
先生が昔っからの夢とかだったのかね。
「……おふたりは、本当に私の話を聞かないことが得意なんですね」
「「ハッ!」」
話に夢中になっていたあたしたちの背後に、ミカエル先生がゆらりと現れた。
「では、そんな優秀なおふたりには、特別ハードな課題魔法を与えてあげましょう」
出た!
氷の冷笑!
「おふたりとも、このあと私の研究室まで来るように。
そこで課題魔法を与えます」
「「ひいぃぃ~~」」
あたしとクラリスの悲鳴がむなしく響いたのだった。




