127.あ、そういうオチね
「……彼女たちはそろそろあの国の王に会った頃か。あそこの王子には有用性がある。頑張って表舞台に出てきてもらわないとね。ふふふ……」
「お~じ~! メイド王子~!」
「ひっ!」
ハイドが再び研究を進めていると、突然、すさまじい勢いでドアがノックされた。
「ミサ、ハイドだよ。ハイド殿下」
「あ、そか。ねーねー! ハイド王子~! いつまでも引き込もってないで出てきなよ~!」
「な、なんだ……?」
ハイドは椅子から飛び降りて、椅子に隠れながら部屋の入口であるドアを眺める。
「ハ~イドくん! あ~そびましょ~!!」
「ひゃあっ!」
再びダンダンダン! と叩かれたドアの音にハイドは飛び上がる。
「お、女の子? でも、ヒナでもツユでもない……ここに他に女の子はいないはず。また父上やアザゼルが何かしたのか?」
ハイドは様子を見ながらも、机の横にある道具入れに手を伸ばした。
「……う~ん。ダメそだね」
王様に頼まれて、そのヒッキー王子の部屋に来てみたはいいけど呼び掛けても応答なし。
さて、どうやって出てきてもらおうかね。
「……ミサ、さすがにいきなりそんなガンガンいったら怖がられるよ」
「え? そんな勢いあった?」
クラリスにそんな引かれるとは思わなかったよ。
あたし的にはけっこう控えめにやったつもりだったんだけど。
イメージ的には子供の頃に近所のお友達の家に遊びに誘いに行ったときだったんだけど。
「けっこうな。なんか、俺の近所に住んでる悪ガキを思い出したわ」
……ジョン、良い線いってるよ。
「よし、選手交代クラ……」
「僕やりたい!」
「おおう! ケルちゃん!」
クラリスのかわゆさパワーに任せようとしたら、ケルちゃんが果敢にも立候補してきた。
よし、ここはケルちゃんのかわゆさに任せてみよ!
「よーっし!」
あたしがオッケーすると、ケルちゃんは意気揚々とドアの前に進んだ。
ケルちゃんがす~っと大きく息を吸う。
「あ~! こんなところに美味しいお肉が落ちてるぞぉ~っ!!」
がたたんっ!
「……はは」
おおう。そうきたか。
ドアの向こうでずっこけてる音がする。
「良い匂いだぁ~! おいしそ~! 食べちゃおっかな~!」
「……」
もう無理なことは分かってるけど、頑張って演技してるケルちゃんがかわいいからもうちょい見とこうかね。
「なによそれ! そんなんじゃダメよ! 変わりなさい!」
おおう。と、思ったらここでルーちゃん参上。
ケルちゃんを見かねたルーちゃんが鼻息荒くドアの前に。
「ごほん……。
うっふん。あー。 胸が苦しいわー。 誰か私のことを介抱してくれないかしらー」
「……」
「お、おおう」
まさかのお色気。そして棒読み。
ルーちゃん。それ、あたしがイノスにやったのより酷いよ。
「ミ、ミサがスノーフォレストの王子にやったっていうのといい勝負だな」
「そ、そうね」
え? マジかい?
てか、ジョンもクラリスもどこでその情報を……。
で、ドアの向こうではノーリアクション。
そりゃそーよね。
リアクションに困るよね。
「……よし。俺がいこう」
「おお! カクさん!」
満を持して登場だね。
スケさん、はいないけど、カクさん、やっておしまい!
すぅ~っと息を吸うカクさん。
「火事だぁ~っ!
ハイド殿下の部屋の前が燃えてるぞぉ~!
早く逃げろぉ~っ!」
おおっ! ナイスアイデア!
ひったくりとかでも火事って言った方がみんな家から出てくるっていうもんね。
「……」
「……」
「……」
「……」
出てこないね。
「……」
「……」
「……」
「……よし、本当に燃やそう」
「わぁ~! カクさんストップ~!」
しびれを切らしたカクさんが手に火をボッてし始めたから、みんなで慌てて止めることに。
「……よぉ~し。こうなったら……」
「ちょ、ちょっとミサ! いきなり何するの!?」
「!」
「ふふふ、いいじゃないかいクラリス。減るもんじゃないだろ?」
「ちょ、ちょっと~!」
ハイドがドアの外からのよくわからない声に怯えていると、今度は何とも妖しい声が聞こえてきた。
「ほうほう。クラリス。前に見たときよりも成長してるじゃないかい」
「も、もう。恥ずかしいよぉ~」
「……」
ハイドはドアに近付き、そっと耳をそばだてた。
「そんなミサだって、私なんかよりよっぽどすごいじゃない!」
「わ! ちょっ! 攻められるのはダメなんだよ~!」
(何やら衣服をがさごそとする音)
「お、おまえら、こんなとこでなんてことを」
「そ、そうだぞ。小さい子もいるのに」
「……(ご、ごくり)」
そして、ハイドはゆっくりとドアを開けるのだった。
「はい確保~っ!」
「わぁ~!!」
確保されたハイドが見たのは、上半身を脱がされたジョンとカークのムキムキポーズだった。




