私の1ページ_10
「僕たち、もう会わないほうが良いと思うんだ」
よく行く喫茶店で彼に切り出されても驚きはなかった。
うすうす気が付いていて、気が付かないふりをしていた。
彼は俯いたままこちらを見ようとしない。
窓を見ると街路樹の紫色の木蓮が満開になっていた。
「木蓮が綺麗ね」
目線は窓に向けたまま、視界の端に彼が同じように窓の方向に顔を向けたのを捉えた。
きっと、あなたは私を忘れようと努力するのでしょう。
そしてすぐに、あなたの人生から私はいなくなるのでしょう。
それならせめて、あの紫色の花を見るたびに私のことを思い出してほしい。