第7話:お好み焼きは、出ません。
風呂上がりに、溜池と赤羽は自販機で飲み物を買おうとしていた。
風呂上がりに飲み物を買おうとしていた俺と赤羽に、蔵前が声を掛けてきた。
(ガチャコン)
溜池:
「あれ、女子達はもう入ったんじゃねぇの?」
(カシャ…グビッ)
蔵前:
「入ったよ。 私も、喉が渇いちゃってさ。」
赤羽:
「確か蔵前さんって、亀戸が居る1班だよね?」
(ガチャコン)
蔵前:
「そうだよ。 あと、紫と深鈴、山川君と延岡君、あとその出来損ないリーゼント野郎。 アハハッ!」
溜池の心の声:
「女子にまでそう言われるとは哀れだな、亀戸。」
赤羽:
「へぇー、そうなんだ。」
蔵前:
「赤羽君達の班は、かりんちゃん(辰巳)と、汐ちゃん(汐留)と、鶯谷さんと、お好み焼き中毒野郎。 そして、溜池君と赤羽君の6人でしょ?」
溜池・赤羽の心の声:
「あぁ、籠原が亀戸と同じ様な扱いをされている。」
赤羽:
「よく覚えてるね、すごい。」
蔵前:
「アハハッ! 誉めたって、何も出ないよ。」
溜池:
「はは…。」
蔵前 亜栖花。 6月生まれ(本人談)。 髪型はポニーテール。 身長163cm。 明るく、社交的な性格で、1年生ながら東京テレポート学院高校の弱小野球部マネージャーを務めている。 自宅は、千葉県 市川市という越境通学者。裏表が全く無い所は良いのだが、たまに絡んできてうざったく感じる事は彼女には秘密。
溜池:
「そういや、1班の班長は誰だっけ?」
蔵前:
「紫だよ。 夕食終了後、各クラスで班長会議が開かれるから顔合わせると思うけど。」
溜池:
「あいつ、物静かだけど大丈夫か?」
蔵前:
「…溜池君、紫をナメてたら恐いよ。」
溜池の心の声:
「いや、全くナメてないけど。」
蔵前:
「ああ見えて紫は、結構な毒舌だから…。」
溜池・赤羽:
「………。」
蔵前:
「気をつけた方が良いよ…って、二人ともどうしたの? ん?」
???:
「あんたね…、飲み物を買いに行って、なかなか戻ってこないと思って様子を見にきたら…。 あーすーかぁ?」
蔵前:
「ひぃっ!?」
(グイッ)
???:
「ゴメンね、二人共。 わざわざ、このバカと絡んでくれて。」
蔵前:
「ゆ、紫、ゴメンって。 本当にゴメンって、ねぇ。 許して…。」
???:
「それじゃ、私はこの子を連れて帰るから。 また後でね。 (小声で蔵前に)このメス豚が。」
蔵前:
「ひぃっ!?」
俺達と会話していた彼女は、落ち着いた口調で終始笑顔だったがオーラがおぞましく、とても恐ろしかった。
蓮根 紫。 1月生まれ(本人談)。 身長154cm。 髪型は、蔵前と同じくショート。 眼鏡を掛けていて、虚弱体質。読書好きで、高校入学後は毎日のように区立図書館や学校の図書室、書店等に居るらしい。そのため、辰巳とは仲が非常に良い。 蔵前とは小学校の時から幼なじみで、親友。 千葉県 浦安市出身・在住。
赤羽:
「こ…、恐かったな。 蓮根って、こんな奴だったっけ?」
溜池:
「…俺も、まさかこんな奴だったとは知らなかった。」
冷や汗を掻きつつ、俺と赤羽は部屋に戻った。
[5階 504号室]
赤羽:
「あぁ、疲れた。 そういや、もうすぐ夕食だな。」
溜池:
「今日は、本当に色々あったから腹が減ったよ。」
(コンコン)
籠原:
「入るでぇ。」
(ガチャ)
籠原:
「いやぁー、良い湯やったな。 ホンマ、腹減ったな二人共。」
溜池・赤羽:
「それは、一体誰の所為なんだ?」
籠原:
「(涙目で)二人して、怖いでぇ…。」
俺達は、夕食までテレビを観ながら待つ事にした。
(コンコン)
溜池:
「ん、誰だ? (ドアに向かいながら)どちら様ですか?」
???:
「俺だ、舞鶴だ。 開けてくれ。」
溜池:
「おうマイケン、今開けるから待ってくれ。」
(ガチャ)
舞鶴:
「いやぁ、部屋に居ても夕食までやる事ねぇから退屈なんだよ。 成田は仮眠するって寝ちまうし、八頭はまだ風呂から帰ってこないから暇で来ちまった。」
舞鶴 絹瑚。 通称マイケン。 2班の班長。 10月生まれ(本人談)。 身長170cm。 学校では、剣道部に所属している。短髪で精悍な顔立ちをしていて、性格も良く女子に人気がある。 頼りになる男。 家は、足立区 千住にある舞鶴会館(剣道場)。
勉強もそこそこ出来、家事全般も出来るというまさに絵に描いたようなスーパーマン。 しかし、そんな彼にも弱点がある。
溜池:
「そういや、今日一日女子と一緒に行動したけど…大丈夫だったか?」
舞鶴:
「あ、あぁ…。 女子を単なる石ころだと思えば何とも無いさ、は、はは…。」
溜池の心の声:
「そう言いながらマイケン、冷や汗掻きすぎだろ。」
そう、彼はかなりの異性恐怖症。 つまり奥手なのだ。 彼は中学までエスカレーター式の男子校に在籍していた為、同い年ぐらいの女子に対して免疫がついていない。 女子と少しでも話す事が困難で、触られでもしたら鼻血を出して卒倒するぐらい。 そんな彼が何故、共学校を選んだのか。
籠原:
「ハハハッ! ホンマ、こいつはアホやねん。 東テレ(東京テレポート学院高校の略)を受験する際、男子校か共学校か確認せずに受験してしもうたらしいで。」
舞鶴:
「違う! 俺としては、東京学院高校(男子校)を受験したつもりが、誤って東京テレポート学院を受験してしまったんだよ。」
溜池:
「ど…ドンマイ。」
籠原:
「ダハハハハッ! 受ける高校も間違えちゃうとは、ホンマアホや!」
(コンコン)
溜池:
「ん、また客か?」
???:
「溜池、成田だ。 入って良いか? もう直ぐ夕食だから、そっちにいる舞鶴を連れ戻しに来た。」
溜池:
「良いぞ、入れよ。」
(ガチャ)
成田:
「失礼するぞ。 …おい、マイケン。 部屋に戻るぞ。 夕食まで部屋で待機してろって、中野に言われただろ?」
舞鶴:
「解ってるけど、つまんなかったんだよ。 お前は寝ちまうし、八頭は風呂から戻ってこねぇしさ。」
成田:
「はぁ…。 八頭なら、とっくに戻ってきてるし。 第一、班長であるお前が勝手に行動しちゃマズいだろ。 全く、かったるいんだよな。」
舞鶴:
「解ったよ、戻るから先に行っててくれ。」
成田:
「頼むぜ。 お前の所為で、仮眠が中途半端になっちまったよ。 あーあ…。」
そう言って、成田は部屋に戻っていった。
舞鶴:
「そういう訳で、俺は戻るぞ。 すまんな、わざわざ相手してもらって。」
赤羽:
「良いって。 それより早く戻らないと、また成田が悪態つきながら来そうだ。」
舞鶴:
「ハハッ、そうかもな。 それじゃ。」
(ガチャ…バタン)
舞鶴も、部屋に戻っていった。
溜池:
「しっかし、成田はここに舞鶴がいるとよく解ったよな。」
赤羽:
「ああ見えて、やれば出来るキレ者タイプなんだよな。」
成田 亮佑。 4月生まれ(本人談)。 身長170cm。大人びた風貌、常に冷静に物事を観る性格。 容姿も第三者から見て文句無しであり、いかにも女子から人気がありそうだが、性格に難がある。 一匹狼みたいなタイプで、あまり人とつるまず常に自分自身の事を優先する。 悪く言えばジコチュー。 常に眠そうで、暇さえあれば仮眠(惰眠)をとっている。 実家は、文京区駒込にある定食屋「水仙」。 彼の姉が、ティーンズ向け雑誌のモデルをやっている。
溜池:
「おっと、そろそろ俺達も出ようぜ。 夕食だ。」
籠原:
「ヤッター! 飯や、飯! はよ、行こうや!」
赤羽:
「何が出んだろうな、一体。」
苦手な物が出ないよう祈りつつ、俺達は一階の食事会場へ向かった。