表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/17

八.連なる孤独。

 もったいぶりたくて言葉を切ったわけではなかった。

 鴉が視てきたのは、地上の一部も一部に過ぎない。地下もまた然り。

 にもかかわらず、双方を較べる不遜を考えてのことだった。

 鴉が口を閉ざしたことで、土の壁にこだましていた声もまた、消える。

 地下の、道とも言いがたい土のトンネルに、一匹と一羽の足音だけが残った。不思議なことに、ヒミズが何かを言う様子もない。

 シャリシャリと土をかく、かすかな音に遅れぬよう、鴉はただ足を進める。

 闇の中の沈黙は重く、逡巡は長く続かなかった。


「あの黒は」

 

 息をすうと吸い込んで、鴉は一息に言葉を紡ぐ。


「何も受け入れず、働きかけもしない。ただそこにあるだけのものだ。その潔さ故に美しいが…絶望的に哀しい」


 意味を十分に理解した上で語った、とは到底言えない言葉だった。 

 分からないという返事を予測して、首をすくめる。

 だが、ヒミズのいらへは鴉の予想とはかけはなれていた。


「色、とはどんな音がするものかね」


 呆気にとられて鴉は首を傾げ、またしても土の壁に頭をぶつける。

 どう控えめに見積もっても泥だらけの体だ、構うことはなかろう。

 開き直った鴉は、続いて届いた言葉に不可解さをつのらせることとなった。


「それからどんな臭いがするものかね?

 触り心地はいいかね?」


 音、とはどういうことだろう。

 鴉はただただ混乱した。

 そもそも色は、見るものであって聴くものではない。ましてや、臭いをかいだり、触ったりできるものであろうはずがない。

 そこまで考えて、ハタと気づく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ