表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

七.あり、ない。

「ときに、白と黒とはどんなものかね」


 先ほどよりも遠く響く声が、足を止めて考え込んでいた鴉を地の底の現実へと引き戻した。ヒミズが先へ進もうとして立てる物音は、鴉のそれより万倍も小さい。この闇の中に1羽きりで取り残される恐怖にせっつかれ、鴉はあわてて3本の足を動かしはじめた。

 そうして、ヒミズに前と同じ程度の距離まで近づいたことを確信してから、改めて問いかけを反芻する。


 どんなもの、とは、どういうことだろう。


 意図が理解できなかった。

 これもまた、ヒミズ一流の話術なのだろうか。

 だとするならば、どの様に答えようが戻ってくるのは揶揄でしかないようにも思われた。しかし、尋ねられたことに適当な答えを返すことができるほど低い自尊心を持ち合わせているわけでもなかったので、鴉はさんざん頭を捻ったあげく、結局は直感的に導き出した説明らしきものをくちばしの先にのせることになった。


「白も黒も、ご存知の通り色の名前だ。白は…すべてを突き放してなお冷たく、それ故に美しい。確かにそこにあるが、どこにもないように見える」


 そこまで一気に喋って、鴉は前方を気にするように見やる。もちろんヒミズの姿は見えず、闇が広がるばかりだった。地下に引き摺り下ろされてから屈めつづけている腰が少し痛んで、鴉はため息を一つつく。あとどれほど歩けばよいのだろう。

 憂鬱な気分を追い払う意味も込めて、ままよ、と鴉は続けた。


「黒は…、この世界に満ちる闇に似て…いや、違う。この世界の闇は、いろんなものが混ざって動いてゆく感じがする。だが、あの黒は…」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ