転生
僕は今、アスファルトの地面に寝転がっている
体から血液をダバダバと流しながら
誰かの焦ったような声が聞こえる
多分僕を轢いたトラックの運転手だろう
居眠り運転なんてしやがって、僕じゃなかったら怒ってるところだ
何処からかサイレンの音が聞こえる
警察を誰かが呼んだのだろうか
救急車の音かもしれない
多分手遅れだろうけど
僕の体はもう直視したくないくらいぐちゃぐちゃだ
グロすぎて吐きそう
もっとも、吐く物ももう無さそうだが
まぁ、こいつを守れたことだし良しとしよう
僕の手の中には、血塗れだが恐らく傷のない初回限定版の「愛してお兄ちゃん!~兄妹の禁断のエルフ愛~」がある
こいつを買うのに今日は何時間待ったことか
せめてこいつをやってから死にたかった
それだったら悔いはなかったのにな
血液を流しすぎたせいかもう目も霞んできたし音が何も聞こえなくなってきた
死ぬのは別に怖くはない
でも、生まれ変わりってものがあって、次も生も糞みたいな人間とかは嫌だな
生まれ変わりがあるのかすらわからないけど
そうだな、生まれ変わりがあるなら
エルフになりたいな
●○●○●○●○●○
「ん?あれ、ここどこ」
気付くと白い、何処までも白い部屋にいた
周りをぐるぐる見渡していると部屋の真ん中に人間とは思えない美貌をもつ女の人が現れた
整った顔立ち、透き通るような綺麗な金髪の髪
白い服の上から押し上げる大きな胸
そして、エルフ耳!
「初めまして、私は「結婚してください」え?」
「結婚してください」
気付けばそう言っていた
「え、えっと、ごめんなさい!人間との恋愛は禁止されていて、えと、その、気持ちは嬉しいのですが、そ、その、なんと言うか」
顔を真っ赤にしながらワタワタしている
可愛い
でも結婚できないのか
「いえ、ダメ元で言ったので大丈夫です、本当に大丈夫です」
テンションが一気に下がっていった
「あ、あの!貴方が神になれば大丈夫なので頑張ってください!」
「はい!頑張ります!」
テンションが一気に上がった
「ごほん、それでは話を戻しますね。私はここらの世界を管理している神で、イシュタルと言います」
まだ少し顔を赤くしながらそう言った
「えっと、僕は
あれ?誰だっけ、名前が思い出せないやまぁいっか」
「えっ、いいんですか?名前思い出せなくて」
「はい、まぁ。僕は思い出せないことはどうでもいいことだったんだと思ってますので」
「へ、へぇー、今までで初めてですよそんな方。
ふぅ、よし、では説明しますね。貴方がどうして名前を思い出せないのか、どうして死んだのにここにいるのか、ということを」
そういえば僕死んだんだったな
「まずなぜ名前が思い出せないのかというと、貴方の記憶は全て知識だけだからです。まだ覚えていることもあると思いますがもうすぐ忘れてしまいます。
そして二つ目の話に繋がるのですが、貴方には転生をしてもらいます」
「わかりました、ではエルフでお願いします」
「は、はやいです!もうちょっと話を聞いてください」
えー、でもそれ以外に要求することないし
「何故転生するのかとか聞かないのですか?」
「はい、大丈夫です。僕はどうせ死んでるんだし未練も、無いと言ったら嘘ですがエルフになれるなら大丈夫です」
「は、はぁ。そうですか、じゃあエルフにしますね。
あ!でもエルフにするとポイントが全部なくなっちゃいますよ?」
ポイント?それでステータスとか種族を決めるのかな?
「うーむ、そのポイントがないと日常生活に不便はありますか?」
「いえ、あくまでポイントは追加のものですので何にも振らなくても平均にはなります。
貴方の場合エルフではなく、人間になって余ったポイントを全部使うなら英雄にでもなれるくらいポイントがあるのですが」
「じゃあエルフでお願いします」
「そうですか、これは貴方が決めることなのでもう何も言いません。
では転生を始めます」
僕は今からエルフになれる
そう思っただけで口角が自然と上がってしまう
夢にまで見たエルフだ
これで目が覚めたら病院のベット、なんてことはないと思いたいな
「あ、そういえばポイントとは関係なく家族構成と家の位を要望できるのですが、それも平均でいいですか?」
「親はちゃんといて、どっちも美形で、二年歳の離れた妹がいてご近所に女の幼馴染みがいて家は少し贅沢ができるくらい裕福でお願いします」
「こ、細かい。えーっと、美形で妹がいて幼馴染みもいて少し裕福、と。
わかりました、では次の人生をお楽しみください」
そう言われると足元に魔方陣が出てきて光始める
「神になったら、また会いましょう」
そう言って光に包まれた